■NDDの懸念は約定率の低下
「NDDならばスキャピングだろうがFX会社側は歓迎しますが、しかし、約定拒否は増えるかもしれません」(尾関さん)
これはNDD口座の弱点と言われる部分。NDD口座はそのしくみ上、約定不成立が起こりやすい。原則固定型では、FX会社が約定を判断するから、多少のリスクを負っても約定させてくれることが多い。
でも、NDDでは約定を判断するのはあくまでもカバー先の金融機関だ。
「一般的に2~3%程度の約定拒否が起きると言われています」(尾関さん)
セントラル短資FXの[ウルトラFX]では約定率のデータも公表されている。データを見ると、おおむね98~99%となっており、原則固定型よりも若干劣る程度といった印象だ。
NDD口座の主流となっているカレネックス系(※)のNDD口座では約定率を公開している会社が少ない。やや古いデータになるが、外為ファイネストの[EVO]では98.51%(2012年9月実績)となっており、やはり原則固定型よりやや低めな程度で収まっている。
(※編集部注:「カレネックス系」とはNDDでよく利用されているシステムの名称。カレネックスはCURRENEXと書く。カリネックスとも呼ばれる)

NDDはカバー先の金融機関が約定するかどうかを判断する。そのため、「約定拒否が増える可能性がある」と尾関さんは話す。
■「スベりやすさ」、スリッページは?
もうひとつ、NDD口座のメリットに「スリッページ」がある。
スリッページといえば、これまでの常識は「思ったよりも悪い価格で約定してしまうもの」だったから、「スリッページがメリット」というとおかしく聞こえるかもしれないが、NDDでは基本的に「思ったよりも良い価格」でのスリッページも普通に発生する。
金融庁によるFX会社に対する監督指針でも、「ユーザーにとって不利なスリッページだけでなく、有利なスリッページも同じように発生するようにすべき」という項目が2013年8月に新たに盛り込まれたのだが、多くのNDD口座はそれを比較的無理なく実現できるのではないかと思われる。
ちなみに、スリッページの詳しい状況を公表しているFX会社は数少ないが、セントラル短資FX[ウルトラFX]ではこれを公表しており、その数字は以下のとおり。

※セントラル短資FXが公表している「ウルトラFXにおけるスリッページの発生状況」(2014年1月1日~2014年1月31日)より
上表を見ると、残念ながらユーザーにとって不利なスリッページ(ネガティブスリッページ)とユーザーにとって有利なスリッページ(ポジティブスリッページ)が同程度発生しているわけではないものの、有利なスリッページも確かに発生していることがわかる。
また、ユーザーにとって不利なスリッページの方が多くなりがちな要因については、疑心暗鬼になってしまう読者もいるかもしれないが、尾関さんはこれについて次のように解説してくれた。
「一般的にネガティブスリッページがポジティブスリッページより多くなる理由は、強制ロスカットになってしまうなど、相場が予想と逆方向に動いたときに発生する取引がどうしても多くなることが要因として考えられます。
決して、ネガティブスリッページよりもポジティブスリッページの方が少なくなるような操作をしているわけではないと私は思います」(尾関さん)

■NDDと原則固定型、特徴の違いのまとめ
これまでに見てきたように、NDD口座と原則固定型の口座はどちらがいい、悪いではなく、しくみや特徴が異なる。それぞれの違いについて、以下にまとめたので参考にしてほしい。

※NDD、原則固定型ともに一般的な傾向をまとめたものであり、「NDD」と銘打ちながらもスプレッドを一定幅で固定させている会社もあるなど、詳細は各社異なる。
(「【徹底解剖】2014年大注目のNDD(3) NDD口座比較の隠れたポイントとは?」へつづく)
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/和田佳久)
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