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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

IMFが円安容認? GPIFやM&A支えに
ドル/円は103円乗せなら上昇に弾みも…

2014年06月05日(木)17:41公開 (2014年06月05日(木)17:41更新)
西原宏一

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■NZドル続落、対豪ドルの動向に注目

 みなさん、こんにちは。

当コラムで何度かご紹介しているNZドル/米ドルは今週(6月2日~)も続落。一時0.8402ドルまで下落しています。

【参考記事】
NZ中銀利上げ予測もNZドルはなぜ下落? ヘッジファンド来日のウワサで6月は…?(5月29日、西原宏一)
連続利上げが予想され、ポジティブ材料が多くても上値が重いNZドルの反落警戒!(4月3日、西原宏一)

NZドル/米ドル 2時間足

(出所:米国FXCM

 長期にわたってNZドル/米ドルを押し上げていた豪ドル/NZドルも反発に転じ、ついに1.10ドル台を回復。

豪ドル/NZドル 週足

(出所:米国FXCM

 NZドルは対米ドルであるNZドル/米ドルでは目標値の0.83ドル台に到達しつつありますが、対豪ドルである豪ドル/NZドルはパリティ(1.0000ドル)割れに失敗。もう一段の上値がありそうなのでこちらに注目です。

■米ドル/円は102円台、NISAやGPIF関連の報道が支えに

先週のコラムで、今月、2014年6月は米ドル/円と日経平均にマーケットの視点が移るというご紹介をしましたが、どちらも好発進。

【参考記事】
NZ中銀利上げ予測もNZドルはなぜ下落?ヘッジファンド来日のウワサで6月は…?(5月29日、西原宏一)

 今月、2014年6月に入ってから日経平均は続伸しており、節目の1万5000円台を回復。

 2013年12月30日高値1万6320.22円から2014年4月11日安値1万3885.11円の50%(半値)戻しである1万5100円まで一時、急騰しています。

日経平均 日足

(出所:株マップ.com

 先月、2014年5月まで102.00円のオプションのガンマ(※)に上値を抑えられていた米ドル/円ですが、6月に入るとそうしたオプションも満期日を迎えて呪縛が解けたという展開。

(※編集部注:「ガンマ」とは、オプション取引で使われる用語の1つ)

 6月2日(月)にはあっさり102円台を回復。6月4日(水)には一時、102.81円と節目の103.00円をうかがう勢い。

米ドル/円 4時間足

(出所:米国FXCM

 こうした流れの背景には、マーケットが期待していたとおり、6月に入って安倍政権の成長戦略に関連した報道が連日のように新聞紙面を賑わしていることがあります。

 まず6月2日(月)には下記の報道で、いきなり米ドル/円は102円台を回復。

NISA非課税枠拡大 政府、年200万円以上軸に検討

政府は今年1月から始まった個人向けの投資優遇策である少額投資非課税制度(NISA)を拡充する方針だ。現在年100万円にとどまる非課税枠を200万円以上に拡大したり、税金がかからない期間を延長したりする案が浮上している。2016年にも実施する。

(出所:日経新聞)

 今年、2014年に始まったばかりのNISA枠をもう一段拡大するという点が個人的にもサプライズでした。

 マーケットで事前に予想されていたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)関連の報道も出ています。

株運用8月に方針 GPIF委員長、20%「高すぎない」

公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用委員長に就いた米沢康博早大教授は2日、129兆円の資産運用の見直しについて「政府から要請があれば、8月に発表する可能性もある」と述べた。現在12%としている日本株の基本比率は、「20%というのも高すぎるハードルではないかもしれない」とし、大幅な引き上げを検討する意向を示した。

(出所:日経新聞)

■IMFが円安容認!? 米ドル/円は103円乗せで一段高も

 米ドル/円を押し上げたもう一つの要因が第一生命のM&Aの話題。

第一生命が米保険買収で最終交渉、約5000億円=関係筋

第一生命保険が米保険会社プロテクティブライフの買収に向け最終交渉していることが分かった。関係筋がロイターに述べた。人口減少と少子高齢化で縮小する日本市場以外の商圏を拡大し、収益源を多様化するのが狙い。

プロテクティブライフは米中堅の保険会社で、買収を繰り返し拡大してきた。時価総額は約41.2億ドルのため、約2割のプレミアムを上乗せした場合、買収金額は約50億ドル(約5040億円)になるとみられる。

(出所:ロイター)

 久々の大型買収案件で、米ドル/円再上昇の要因の1つに。

 加えて、6月2日(月)にはIMF(国際通貨基金)からも円安容認ともとれる内容の報道がありました。

IMF、円の評価「おおむねバランス」 対日審査

国際通貨基金(IMF)は30日、対日審査を終えて声明を発表した。声明は円の評価について「アベノミクスの『3本の矢』が順調に推移するとの前提で、おおむねバランスがとれている」とした。一方、製造業の海外移転や競争力低下を例に挙げ、「輸出が為替の変動に以前ほど反応しなくなっている」と指摘。日本の対外収支については「経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)や成長、財政改革の遂行と整合する水準を超えて改善することはない」との見方を示した。

(出所:日経新聞)

 昨年、2013年6月のIMFのコメントは「円相場は、過小評価されている」でした。

 ところが2014年5月30日(金)のコメントは「おおむねバランスがとれている」となっています。

 1年前と2014年6月現在の米ドル/円レートに大きな違いはないため、ある意味、円安容認ともとれる意見です。

 安倍政権の成長戦略発表に向け、立て続けに出された報道により、アベノミクスは再始動。

 米ドル/円は先月、2014年5月の米雇用統計時に高値となった103.02円を目前にもみ合っていますが、100.75円近辺でダブルボトムを形成したあとは堅調に推移しています。

米ドル/円 日足

(出所:米国FXCM

 今週、6月5日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会と6月6日(金)の米雇用統計をうまく乗り切って103円台に乗せると、米ドル/円は上昇に弾みがつく可能性も。

米ドル/円 4時間足

(出所:米国FXCM

 安倍政権の成長戦略発表に向け、引き続き、日経平均と米ドル/円の動向に注目です。


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