■上海株は重要サポート・200日移動平均線決壊で急落
みなさん、こんにちは。
上海株の下落は先週(8月17日~)から始まったわけではありませんが、中国当局のたび重なる株価対策が短期以外は効果を見せず、徐々に上値が下がっていました。
【参考記事】
●上海株暴落、商品市況悪化でも豪ドル下落が緩慢だった理由判明! 豪ドル下落再開か(8月20日、西原宏一)
ただ、上海株は、200日移動平均線が長期に渡って下値をサポートしていました。それが先週(8月17日~)、ついに決壊すると、上海株は支えを失って急落。

(出所:CQG)
それが、本丸であるNYダウの急落を誘引しました。
【参考記事】
●NYダウが一時、1000ドル以上の大暴落!セリングクライマックスはいつなのか?(8月25日、西原宏一&松崎美子)

(出所:CQG)
■NYダウはマジノ線の1万7000ドル割れ
2015年に入ってからのNYダウは、米国経済の好調さを背景に底堅いながらも、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ予測を背景に徐々に上値を切り下げていました。
【参考記事】
●ついにマイナス金利の住宅ローンが登場!? 金利正常化に向かう米ドルは一人勝ち!(3月5日、西原宏一)
それが、上海株の急落をきっかけに、8月20日(木)のNY市場で1万7000ドルを割り込んでしまいます。
NYダウのマジノ線(※)である1万7000ドルが決壊すると、米国株の下落トレンドが明確に。
(※編集部注:「マジノ線」とは第二次世界大戦前にフランスがドイツとの国境に築いた難攻不落と言われた要塞のこと)
週明けの8月24日(月)には、市場参加者の投げ売りを誘い、NYダウは、一気に1万5370ドルまで暴落しました。

(出所:CQG)
■米ドル/円は、116.15円まで暴落
上海株のような新興国の株が急落しても、主要市場に激震が走るわけではありませんが、金融市場の本丸であるNYダウが急落すると世界は一変。
日経平均も暴落。連れて、米ドル/円も118.00円のサポートが崩されると、あっという間に、116.15円まで暴落しました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
リスクアセットである豪ドル/円も総崩れし、一気に82.08円まで急落。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
一方、株が急落すると、円に替わって、ファンディング通貨(=キャリートレードをするときに調達される通貨)の代表となったユーロは逆に急騰。
【参考記事】
●中国発のリスク回避強まり世界同時株安! 南アランド/円は乱高下、一時10%超暴落!
ユーロ/米ドルは、1.1712ドルの高値まで反発するといったようにマーケットは大混乱。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
NYダウという本丸が崩されると、金融市場が色めきたち、8月24日(月)の急落はリーマンショックを彷彿とさせる暴落相場となりました。
ただ、今週、8月25日(火)に公開した「FXほっとLINEで作戦会議」でもご紹介しましたが、24日(月)のように、短時間で一気に暴落する相場は、いったんセリングクライマックスになる傾向があります。
【参考記事】
●NYダウが一時、1000ドル以上の大暴落!セリングクライマックスはいつなのか?(8月25日、西原宏一&松崎美子)
8月24日(月)の暴落翌日から、本稿執筆時点(8月27日)までのマーケットは、暴落からの反動で、いったん沈静化しています。
一時、116.15円まで暴落していた米ドル/円は、120円台前半で推移。日経平均も本稿執筆時点で1万8720円と回復しています。
■キーナンバーは「200」、NYダウは暴落再来のリスクあり?
今回の、各市場のドミノのような急落の連鎖には似たようなポイントがあります。
前述の上海株の急落のきっかけは、200日移動平均線を割り込んだこと。

(出所:CQG)
そして、日経平均は、200日移動平均線が位置していた1万9011円を割り込むと決壊。

(出所:株マップ.com)
米ドル/円は、200日移動平均線(=120.70円)を割り込むと下落が加速。

(出所:米国FXCM)
さらに、豪ドル/円は200週移動平均線(=90.68円)を先週末(8月21日)終値ベースで割り込むと、あれだけ89円台で下げ渋っていたにもかかわらず、あっという間に、一時、82.08円まで大暴落しました。

(出所:米国FXCM)
今回の各市場の重要ポイントは、200日や200週移動平均線という重要なサポートを軒並み突破したこと。それが下落幅を大きくしたわけです。
逆にいうと、先週末(8月21日)、これらの基本的なポイントをチェックしておけば、週明け(8月24日)からの急落に備えることができたということになります。
【参考記事】
●世界同時株安も、大荒れ為替相場も「西原メルマガ」を読めば乗り切れたはず!
■暴落再来になると考えられるNYダウの最重要レベルとは?
さて、現在、マーケット参加者の注目を集めているのは、経済指標でもなく、為替でもなく、株式です。
そして、もっとも重要な市場は米国株、さらにいえばNYダウ。
NYダウが、再び下げ幅を拡大すれば、日経平均も追随。そして、日本株の下落が、米ドル/円、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の急落を誘引(ファンディング通貨であるユーロは上昇するので、ユーロ/円は除く)。
そのため、NYダウの動向にマーケットの注目が集まっています。
そのNYダウですが、次なるサポートは1万5289ドル。このポイントは他の市場同様、「200」というマジックナンバーに該当します。
他の市場同様、NYダウの最重要レベルは、200週移動平均線が位置している、1万5289ドル。

(出所:CQG)
これを週の終値で割り込むと、NYダウの下落基調が鮮明となり、8月24日(月)の暴落の再来になると考えられるため、市場参加者の注目がこのレベルに集中しているのです。
■日本株の反騰がNYダウの暴落を阻止できるか
8月24日(月)のセリングクライマックス以降、相場がじり高に推移してなんとか小康状態を保っているいる理由は、東京市場での米ドル/円と日経平均が堅調に推移していること。
この米ドル/円と日経平均の反発は、東京市場のある参加者の買い支えにあるといわれています。
8月25日(火)と26日(水)には、本邦公的機関とウワサされる、米ドル/円と日本株のまとまった買いがマーケットに持ち込まれ反発。
8月25日(火)には、前場しか持ち込まれなかったためなのか、後場の日本株が急反落してしまったため、26日(水)は終日、断続的に日本株と米ドル買いを持ち込むという念の入れよう。
その効果もあって、8月26日(水)のNYダウは前営業日比619.07ドル(4%)高い、1万6285.51ドルと反発。

(出所:CQG)
この公的機関の買い支えがなければ、今週(8月24日~)の米ドル/円と日本株は続落していた可能性が濃厚。
ただ、NYダウは1万7000ドルというレベルを回復できなければ、再び1万5000ドルに急接近するリスクを抱えています。
■日本株の再上昇のカギを握る、本邦当局の次の一手は?
今回の日本株の急落は日本経済に何か問題があったわけではありません。
多くのファンドマネージャーは、上海株といった新興国市場や米国株などが不安定に推移するなか、パフォーマンスが悪化。
そのため、収益をバランスさせるために、唯一、利益が乗っていた日本株を利益確定させなければいけないという背景があります。
【参考記事】
●NYダウが一時、1000ドル以上の大暴落!セリングクライマックスはいつなのか?(8月25日、西原宏一&松崎美子)
そうした利益確定売りが集中したことも日本株急落の要因です。
現在、1万7000ドルを割り込んだNYダウは下落基調を鮮明にしています。
NYダウが再び急落すると日本株にも前述のように大きな影響が出ます。
安倍内閣の支持率も低下しているため、日本政府としても株価は高く推移させておきたいところ。
この日本株を再び上昇基調に乗せるための、本邦当局による次の一手に注目が集まっています。それは公的機関からの断続的な株価対策なのか、補正予算という手も…。
ただ、仮にNYダウが1万5000ドルを決壊してしまうと、可能性はほとんどないと言われている日銀の追加緩和という手段が話題となるはず…。
同様に日経平均は昨年(2014年)末のダブルバズーカ時の1万6500円レベルがサポートで、このレベルが決壊してもアベノミクスは大きな転換を迫られます。
【参考記事】
●日銀とGPIFのダブルバズーカ炸裂で、ドル/円は120円へ向け上昇の可能性濃厚(2014年11月6日、西原宏一)
NYダウの下落が鮮明となるなか、日本株、米ドル/円が堅調さを取り戻せるかどうかに注目です。
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