■市場は、全面的な「米ドル安」相場に変わってきた
今週(10月12日~)は、週明けの12日(月)が体育の日の祝日で東京市場が休場となったほか、NY市場もコロンブスデーとあって米債券市場が休場。市場は、かなり流動性の薄いマーケット環境を余儀なくされました。
そんな中、先週(10月5日~)1週間を通して展開された「リスクオン」の動きも一服。14日(水)のNY市場では、全面的な「米ドル安」相場へと、市場の雰囲気が変わってきた様がうかがえます。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)
■弱い米経済指標結果が、追い打ちをかける格好に…
前回のコラムで、私は、「米国の年内利上げの可能性は、ほぼなくなったのではないかと考えている」とお伝えしましたが、14日(水)は、市場がその認識をさらに強める展開となりました。
【参考記事】
●追加緩和に応じない黒田総裁の本音とは?ポイントは昨年秋から急落した原油価格!(10月8日、今井雅人)
このところ、毎回、市場参加者を落胆させることが多く、一部からは、「鬼門」とまで呼ばれている米小売売上高が発表されましたが、その数字は、前月比0.1%と、市場予想の0.2%を下回る弱いものとなりました。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)
そして、さらに追い討ちをかけるように、同時に発表された9月米PPI(生産者物価指数)が、前月比マイナス0.5%と、市場予想のマイナス0.2%を大幅に下回る弱い結果となりました。
コアの数字は、0.1%の予想だったにもかかわらず、なんとマイナス0.3%とかなりひどい数字。
■さらに、米利上げ時期の先延ばし観測が高まっている
その後に公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、「賃金上昇は、ほとんどの地域で抑制された」との見解が示されたほか、「米ドル高が製造業や観光業を打撃、と多くの連銀が指摘している」ことが判明すると、米長期金利の大幅な低下とともに、米ドル/円は、一時118.61円まで売り込まれました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
米10年債利回りは、一時1.9718%まで低下しています。

(出所:CQG)
市場では、さらに米利上げ時期の先延ばし観測が高まる結果となっています。
FFレート先物(※)価格から算出される予想織込み度ですが、昨日10月14日(水)に発表された一連の米経済指標を受けて、10月の利上げ確率が前日13日(火)の10.0%から6.0%、12月の利上げ確率が37.0%から28.5%にまで急低下していることからも、その様子を感じることができます。
(※編集部注:FFレートはフェデラルファンド金利のことで、米国の政策金利。「FFレート先物」はそれを対象とした先物)
■8月米雇用統計発表時の安値118.60円を意識か
ただ、本日10月15日(木)のアジア市場では、ゴトー日(米ドル決済需要が高いと言われる「5」と「10」がつく日)とあって、朝方から本邦実需の買いが観測されているほか、本邦長期資金の買いが断続的に持ち込まれています。
9月4日(金)の8月米雇用統計時の安値である118.60円を意識してか、下押しを拾いたい向きも多く、日経平均の買い戻しとともに、米ドル/円は、一時119円台を回復しました。

(出所:株マップ.com)
市場では、10月に入ってから第3四半期が始まったことで、新たに長期資金の買いが観測されているほか、本邦実需勢の買い意欲も強いようです。
■年内利上げについてFOMCメンバー間でも意見が分かれる
しかしながら、黒田日銀総裁が追加の「量的・質的金融緩和」に極めて消極的なうえ、米国が金融政策正常化という「大義名分」があるにもかかわらず、その決断すべき時期を逸してしまった感が強まっている中では、前述のような買いが下支えにはなっても、なかなか上値を追って米ドルを買い上げていく地合いまでにはなりません。
【参考記事】
●追加緩和に応じない黒田総裁の本音とは?ポイントは昨年秋から急落した原油価格!(10月8日、今井雅人)
10月のFOMC(米連邦公開市場委員会)が、月末の27日(火)~28日(水)に控えていますが、FOMC内部では、中核メンバーの中でも「年内利上げ派」と「年内利上げ見送り派」とで完全に見解が分かれてしまっています。
だからこそ、今後、発表される米指標には、長期金利を中心に敏感に反応するでしょう。
■10月最終週に米ドル/円のブレイク材料が集中!
本日10月15日(木)に予定されている9月米消費者物価指数や、2日(金)の米雇用統計以降、2度に渡って「10月利上げの可能性」を示唆しているダドリーNY連銀総裁の発言内容の変化などは、市場参加者の認識に大きく影響を与えることになります。
いずれにしても、10月最終週に集中する、中国の新5カ年計画やFOMC、そして日銀金融政策決定会合が、いまだにレンジをどちらにも抜け切れない米ドル/円相場のブレイク材料となる可能性が高いでしょう。
それまでは、これまでの120円を挟んだもみ合いから、若干下サイドに取引レンジを引き下げた弱含みのレンジ相場と考えた上で、トレードを続けるしかなさそうです(※)。
(※編集部注:2015年10月15日(木)15時ごろに本記事が寄稿されたあと、編集部で編集作業中だった16時台に米ドル/円は急落。2015年9月以降の安値を下抜け、一時118.10円付近まで下落した)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
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