■実は、対米ドルで中国人民元安が進んでいる
まさかのトランプ氏勝利で終えた米大統領選があったせいで、いろんなことが吹っ飛んでしまった感じがしますが、2016年11月冒頭に、当コーナーで大手ネット証券の一角、楽天証券[楽天FX]が中国人民元/円の取り扱いがスタートしたという話題をお届けしました。覚えているでしょうか?
【参考記事】
●楽天証券が中国人民元/円を新たに追加。中国人民元相場でも注目は米大統領選!
その際、「中国人民元は、2016年10月24日(月)に、対米ドルで2015年8月のチャイナショック時や2016年1月の中国株暴落時の安値を更新するなど急速な中国人民元安が進んでいる」という点に触れ、この話題については別の機会にお伝えするとしていました。
当記事が、その別の機会です。ここでは、昨今進んでいる対米ドルでの中国人民元安について、あれこれ掘り下げてみたいと思います。
■チャイナショックや中国株暴落時の安値も更新! なぜ?
まずは、米ドル/中国人民元の月足チャートを見てみましょう。
お伝えした2015年8月のチャイナショックや2016年1月の中国株暴落時の安値を飛び越えて、中国人民元安が進んでいるのがおわかりいただけると思います。中国人民元安は、2016年11月現在も進行形です。
いったいどうして、ここまで中国人民元安が進んでいるのでしょうか?

(出所:CQG)
■2016年11月の上昇は、トランプ勝利の余波によるもの
まず、米大統領選を終えた2016年11月9日(水)以降は、トランプ氏がまさかの勝利を収めたことで、マーケットでは米長期金利が上昇し、米ドル全面高の様相となっていますので、中国人民元が対米ドルで下落幅を広げているのも、このことが大きく影響しているのだと考えられます。
【参考記事】
●トランプ勝利で狼狽は禁物! イエレンはお払い箱! バラマキ政策で景気は良くなる

(出所:CQG)
米長期金利上昇(=米10年物国債価格の下落)の理由が、トランプ次期大統領の経済政策による景気回復を期待したポジティブな反応によるものなのか? 逆にトランプ氏の経済政策によって米国財政が悪化し、米国債のリスクが増すとみるネガティブな反応によるものなのか? 定かではありませんが、どっちにしろ、米長期金利の上昇は単純に米ドル高要因になります。
中国人民元も全体的な米ドル高の流れに乗って、対米ドルでの下落が進んだと考えるのが自然ではないでしょうか?
■中国との間に、最大45%の高い関税の壁を築く!?
また、あれこれ物議を醸しまくってきたトランプ発言ですが、その中には中国に影響を与えるものもあります。まさか中国と米国の間に物理的な壁をブチ建てることはできませんが(トランプ次期大統領は、メキシコとの国境に壁を作ると主張している)、対中国では、貿易において最大45%という高い関税の壁を築くと主張しているのです。
【参考記事】
●4.75%の高金利!カギはトランプ氏が握る!? 今、メキシコペソが注目されるのはなぜ?

大統領選挙中は、過激な発言で物議を醸してきたトランプ次期大統領。「メキシコに壁を作るゾ!」発言も衝撃的でしたが、中国に最大45%の関税を課すという考え方も、ある意味、貿易の壁を作るってことですよね…?(C)Win McNamee/Getty Images
これは、中国を為替操作国に認定し、そのペナルティとして高い関税を課そうというもの…。もし、そんなに高い関税がかけられたら中国は貿易黒字を減らすことになりますし、コストパフォーマンスを求めて中国に進出している各国の企業も撤退することになりかねません。
これは、中国経済にとってはマイナス材料となり、ひいては中国人民元安要因となります。
■中国人民元安の根本原因は、国外への資金流出か
このように、米大統領選以降の中国人民元安は、トランプ氏勝利の余波による影響が色濃いと考えられるのですが、冒頭でお伝えしたとおり、中国人民元の対米ドルでの下落が特に顕著になったのは、米大統領選の少し前、2016年10月頃のこと。いったい何がありましたっけ…?

(出所:CQG)
2016年12月の米国利上げ期待の背景に、マーケットは相対的な米ドル高が進みやすい環境下にあったとか、10月1日(土)付で行われた中国人民元のSDR(特別引出権)構成通貨入りが影響しているとか、それっぽい理由はいくつか挙げられますが、それより何より、もっとも根本的な原因となっているのは、「中国からの資金流出」ではないかと言われています。
2016年の中国のGDP成長率を見ると6.7%と、あるかないかわからないような先進国のGDP成長率に比べると、うんと高い経済成長率を誇っていますが、10%を超えていたような時期にくらべると鈍化しているのはたしか。
2015年8月には、チャイナショックなんてトンデモ事件も起こり、「中国経済はヤバイ!」とか「バブル崩壊!?」とか、過度に騒ぎ立てられた感もありますが、事実、鈍化しているとお伝えしたGDP成長率をはじめ、今の中国経済を見ると、右肩上がり一色というワケではないようです。
【参考記事】
●中国発のリスク回避強まり世界同時株安! 南アランド/円は乱高下、一時10%超暴落!
●田代尚機氏に聞く中国経済(1)上海株の暴落は中国経済減速が原因ではない!
株価もチャイナショック以降、ぱっとしない状況が続いていますしね…。

(出所:CQG)
経済が減速…株価も戻りが弱い…
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