■市場の基調が転換、リスクオンムードに
週明け(4月24日)から、市場の基調が大きく変わった。米ドル全体の一段安が見られる一方、円安の基調がより鮮明になり、結果としてユーロ/円をはじめ、多くのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が「ギャップ」を形成してから大きく上昇した。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
円安への基調転換は、過度なリスクオフに対する修正という視点でみれば、米ドル/円の上昇も当然の成り行きだが、その背景には、前回のコラムで指摘した「公式」が効いていると思う。
【参考記事】
●仏大統領選・ルペン候補の支持率が市場を翻弄!? 勝てばユーロ/米ドルはパリティへ!?(2017年4月21日、陳満咲杜)
前回のコラムでは、「これから市場の基調を決定する要素は、フランス選挙の行方>米国経済政策>地政学リスク」と指摘させていただいたが、週明け(4月24日)からの円安進行は、まさにそのとおりだった。
フランス大統領選の第1回投票が、想定どおりの結果となったことを好感したマーケットは、再びリスクを取り始め、また米経済政策に敏感に反応するようになった。
朝鮮有事など地政学リスクは、どちらかというとやや蚊帳の外という感じだ。もちろん、北朝鮮が核実験に踏み切れなかったところも大きいが、それも一応想定範囲だった。
なにしろ、前回のコラムでも強調したように、巷の論調と違って、北朝鮮問題は今そこにある危機という性質のものではない。北朝鮮が核開発を取りやめるとは思わないが、厳重な警告を受け、追いつめられる中、あえて自ら危機の引き金を引くわけにはいかない。独裁者ほど自らの延命ばかりを考えるものだし、また、中露との駆け引きで勝手なことはできず、身動きが取れない。
【参考記事】
●仏大統領選・ルペン候補の支持率が市場を翻弄!? 勝てばユーロ/米ドルはパリティへ!?(2017年4月21日、陳満咲杜)
一方、米国が北朝鮮に安易な軍事行動を取れないのも明らかだ。韓国滞在の米国軍民(25万人ほど)の安全確保、また世界4番目の規模をもつ北朝鮮軍を一気に制圧できるかどうかなど、トランプ政権といえども、やはり安易に解決できる問題ではない。
あえて言うなら、米国がイラク戦争を仕掛けられたのは、イラクは北朝鮮と違って、口先と裏腹に大量破壊兵器も核兵器を持っていないとわかっていたからだ。だからこそ、北朝鮮には安易な手出しができないことも明白だ。
■リスクオフが過度に行きすぎていた、とも言える
この意味では、シリア攻撃から朝鮮有事云々と大げさに語られた4月半ばの時点で、リスクオフの動きがすでに行きすぎていた。地政学リスクに加え、フランス大統領選に関する心配や憶測も行きすぎていたと思われ、米国経済政策の可能性は見向きもされなかったといった感じが強い。
2016年年末の時点で、猫も杓子もトランプ・ラリーばかりを口にしたのと同じく、巷はフランスのEU(欧州連合)離脱やら、第二次朝鮮戦争やらともっぱら大げさな話に夢中で、そのことがセンチメントの行きすぎを物語っていた。
行きすぎたトランプ・ラリーが大きく修正されてきたのと同じく、今週(4月24日~)に入ってから過度なリスクオフが急激な値動きをもって修正されてきた。この意味では、週明け(4月24日)からの値動きは、別にサプライズではなく、可能性の高かった成り行きと思われる。
さらに、トランプ政権は「史上最大規模」とされる税収改革プランを提示したが、あまり現実味がないとみられ、マーケットはそれほど反応しなかった。しかし、これから法案の中身が修正されたり、また、本国投資法の策定による米ドルの本国還流が予想されたりといった流れになれば、一段と米ドル高基調につながりやすいのではないだろうか。
言い換えれば、足元は行きすぎたリスクオフに対する修正という「初歩段階」にすぎず、米ドル全体の回復は米経済政策の進行次第だから、むしろこれからだ。
■市場はマクロン氏の勝利を織り込みつつある
もっとも、ユーロ/米ドルが週明け(4月24日)から「ギャップ」を形成して急騰してきたから、米ドル全体の続落は当然の結果である。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
これからの仏大統領選の最終選挙は、なお油断できないが、仮にマクロン氏の勝利であっても、ユーロ/米ドルがあのGS(ゴールドマン・サックス)が予測していたように、1.3ドルの節目を打診していくとは限らない。巷ではすでにマクロン氏の勝利を織り込みつつあるから、ユーロ高が維持されても上値余地は限定される公算が高い。
■米ドル/円は早晩3月高値を更新か
米ドル/円に関して、4月14日(金)の本コラムが指摘した米ドルの底打ちの可能性について、なお4つの視点での条件を満たしているので、見通しは維持し、また、早晩3月高値の更新をもって、一段と強気構造を強化していくとみる。
【参考記事】
●トランプ氏の米ドル高牽制発言で、米ドル安終焉!? 米ドル/円は200日線の攻防に注目!(2017年4月14日、陳満咲杜)
ただし、GMMAチャートで見ると、まだ完全にベア(下落)トレンドから離脱しきれていないから、さらなる底練りを経てから、底打ちのサインが出る可能性はある。
(出所:FXブロードネット)
クロス円では、ユーロ/円、英ポンド/円はともに大幅な上昇を果たしているが、GMMA+一目均衡表の視点では、英ポンド/円の方がより堅調な内部構造を示している。
比較してみるとわかるように、GMMAが示す「トビウオ」(短期線グループと長期線グループのゴールデンクロス)のサインの強さ、そして、一目均衡表が示す「三役好転(※)」の度合いの両方で英ポンド/円に軍配が上がる。
(※編集部注:三役好転とは、一目均衡表の買いシグナルとなるパターンのこと。転換線が基準線を上抜け+ローソク足が雲を上抜け+遅行線がローソク足を上抜けた状態)
(出所:FXブロードネット)
(出所:FXブロードネット)
だから、前回のコラムでは英ポンド/円の強気サインに注意しろと喚起していた。先週末時点で(4月21日)、すでに大きく上昇してきていたから、4月14日(金)、4月17日(月)の安値打診が、結果的に「フォールス・ブレイク」のサインと化していることを証左していた。
【参考記事】
●仏大統領選・ルペン候補の支持率が市場を翻弄!? 勝てばユーロ/米ドルはパリティへ!?(2017年4月21日、陳満咲杜)
(出所:FXブロードネット)
要するに、1月安値の更新は一時的なものに留まり、そのあと大きく反騰してきたから、この安値打診は「ダマシ」であったと認定され、かえって切り返しの土台を作ったわけだ。
週明け(4月24日)から、その土台の構築もあって一段高となり、重要なレジスタンスゾーンをブレイクし、ブル(上昇)基調の再確認ができたから、目先の高値トライはむしろ当然の成り行きだとみる。
このあたりのポイントは、4月24日(月)に配信したレポートをもって説明したい。原文は以下のとおり。
(出所:FXトレード・フィナンシャル)
今朝のリスクオンムードでポンド/円は大きく上昇、ギャップを付けてから
142関門手前をトライした。一気にメインレジスタンスゾーンを突破しただけに、1月27日高値144.78へ全幅戻しの可能性に注目しておきたい。
144.78を起点とした下落、2月7日安値138.54を割り込む前に、140.74(1)や140.61(2)にて「ダブル・トップ」に近い形でメインレジスタンスを示し、また下放れが果たした後の切り返しが140.09(3)に制限されたことでメインレジスタンスを強化、その後の安値更新につながった。従って、140.09~140.75といった抵抗ゾーンが突破されない限り、ポンド/円の上昇波が制限される可能性が大きかった。
しかし、フランス選挙に進展につれ、今朝同メインレジスタンスゾーンを一気に上回り、足許では寧ろサポートゾーンとして化しているように見える。「ギャップ」自体がサポートゾーンと合致しているだけに、これから完全に埋められず、また再上昇してトレンドの強さを示唆しよう。この場合、144.78までの上昇、一直線に行かなくても、基本的には大した抵抗が存在しないため、同高値はロング筋の視野に入ってこよう。
GMMAとの整合性から見ても、140.09~140.74といった抵抗ゾーンが強かったが、一気に上放れした以上、日足における「トビウオ」、すなわちゴールデンクロスのサインを点灯する蓋然性が高まる。
英ポンド/円はユーロ/円ほど重要なクロス円ではないが、英ポンド/米ドルの堅調もあって、英ポンド/円は当面高値トライしやすいとみる。
また、ユーロ/円、英ポンド/円の大幅な切り返しが、米ドル/円の底打ちと相俟って、円高傾向の終焉を示唆するサインとみるなら、下記の筆者の一句にうなずいていただけるのではないだろうか。

※窓風は「ギャップ」とかけたもの。また、「堤」は4月25日の大陽線が4月24日のローソク足を包んだことを示す。
市況は如何に。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)