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今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

ジョンソン英首相が窮地!? 英ポンド急騰!
しかし、英ポンドはいずれまた売られる

2019年09月06日(金)13:45公開 (2019年09月06日(金)13:45更新)
今井雅人

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■合意なき離脱懸念から、英ポンドは下落

 先週(8月26日~)から今週(9月2日~)にかけては、最近にない激しい相場展開となりました。

政治要因で相場が動いているときは、本当に恐ろしいと改めて思い知らされた1週間でした。

 まず、一番のきっかけは英国のEU(欧州連合)離脱、いわゆるブレグジット(BREXIT)に関して。

 当初、いよいよ政局が混乱してきて、10月末の合意なき離脱が現実化してきたのではないかということで、英ポンドが売られ、英ポンド/米ドルは最近の安値を更新。英ポンド/円も、最近の安値に迫る展開となりました。

【参考記事】
市場を膠着させている4つの「摩擦」とは? 英ポンドはブレグジット後の最安値更新も!?(8月22日、今井雅人)
円高になりやすいのは自明の理。ドル/円の106円台半ばあたりは、良い売りレベルか(8月29日、今井雅人)
合意なき離脱の可能性が徐々に高まる! 英ポンド/米ドルは1.15ドル目指す動きに!?(9月3日、バカラ村)

英ポンド/米ドル 日足
英ポンド/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView

英ポンド/円 日足
英ポンド/円 日足チャート

(出所:TradingView

■議会の反撃でジョンソン首相が窮地。英ポンドは急騰

 このまま続くかと思われていましたが、ここから英議会の反撃が始まります。

 まず、EU離脱に関して、「EUとの合意が期限までに得られない場合、期限を3カ月延長することをEUに要請しなければならない」という法案を野党側が提出してきました。

 この審議についての動議に対して、与党の一部が造反して賛成に回り、法案の審議に入ることが決まりました。これで市場は動揺します。

 審議に入れば、可決される可能性が高く、そうなると10月末の合意なき離脱の可能性がかなり低くなるからです。

 これに対して、ジョンソン英首相は、議会を解散して10月15日(火)に総選挙を実施しようとしましたが、解散に必要な議会の3分の2の賛成を得られず、総選挙を実施することができなくなりました

 これで、ますますジョンソン英首相は窮地に陥り、EUに離脱期限延長を要請しなければならない可能性が高くなってきました。

 EU離脱に対して強気の姿勢を見せていたジョンソン英首相にとっては、大きな打撃です。

ジョンソン英首相写真

ジョンソン英首相は議会を解散して10月15日(火)に総選挙を実施しようとしたが、議会の3分の2の賛成を得られず、実施できなくなった。EUに離脱期限延長を要請しなければならない可能性が高くなり、ジョンソン英首相にとって大きな打撃 (C)Justin Sullivan/Getty Images

 こうした状況を受けて、英ポンドは急騰。英ポンド/米ドルは1.23ドル台、英ポンド/円は132円台まで一気に跳ね上がりました。

英ポンド/米ドル 日足
英ポンド/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView

英ポンド/円 日足
英ポンド/円 日足チャート

(出所:TradingView

「逃亡犯条例改正案」の正式撤回が株高、円安を演出

 次に、香港の行政長官が、中国への強制送還が盛り込まれていることで混乱の元となっていた「逃亡犯条例改正案」を、正式に撤回すると発表しました。

 これもリスクオンの動きを誘発することとなり、株高、円安が進行しました。

【参考記事】
香港デモは逃亡犯条例案撤回で一時収束! 今、ユーロ/米ドルに注目するワケとは?(9月5日、西原宏一)

 さらに、中国政府が10月初旬にワシントンで米中閣僚級貿易交渉を再開すると発表したことが市場の安心感を呼び、さらなる株高、円安を演出することになりました。

世界の通貨VS円 1時間足
世界の通貨VS円 1時間足チャート

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 1時間足

■円ロングが溜まっていたところにリスクオン材料が続いた

 正直言って、ここまで激しい動きになるとは、まったく予想をしていませんでした。

 ブレグジットに関しては、確かに10月末の合意なき離脱の可能性が極めて低くなったということで、買い戻されるのはある意味、当たり前のことだとは思います。

 しかし、ここまでの動きとなったのは、結局、その前に下に突っ込んでしまって、マーケットがかなりショートになってしまっていたということでしょう。

 香港の話も、元々混乱を受けて株が売られていたという様子は今までなかったのに、逆には反応するのは少し違和感を覚えます。

 また、中国が10月から貿易交渉を再開すると言っていますが、これまで何度も交渉を開始しては、また不調に終わる、の繰り返しであったことを考えると、この程度の話にこれほどの反応をするのも不自然。

 結局、こちらも円ロングポジションがかなり溜まっているところに、リスクオンになるような材料が立て続けに出てきたことに反応したということだと思います。

■いずれまた英ポンドは売られてくる

 英ポンドの売り材料は当面なくなったので、すぐに英ポンドが反落するのは難しくなってきました。

 しかし、これほどの混乱を続ける国の通貨を買いたいと思うでしょうか? 私はいずれまた英ポンドは売られてくると思っています

英ポンド/米ドル 日足
英ポンド/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView

 また、円相場に関しても、今回はポジション調整に過ぎず、それが終われば、またジリジリと円高に戻ると考えていますが、ポジション調整の勢いが非常に強いので、どこまで続くのか見極めたいと思います。


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