■FOMCは来年、政策金利を据え置きへ
今年(2019年)も、残り半月となりましたが、市場のテーマとなっていた米中とブレグジット(英国のEU(欧州連合)離脱)問題が、いったん収束となりました。
まず、12月10日(火)~11日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)があり、政策金利は据え置きでした。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FOMCとは? 米国の政策金利FFレートやイベントのスケジュールを徹底解説!
2020年末時点のFF(フェデラル・ファンド)金利の見通しは、13人が据え置きで、4人が1回の利上げを予想しています。
(出所:FRB)
これは、来年(2020年)末までは、金利は現状維持になることを示しています。
米長期金利も、長期的にはトレンドが出にくいと考えられるため、相関性がある米ドル/円も、動きが出にくいということになります。
【参考記事】
●米中協議、3つのシナリオから米ドル/円相場を予測! ポンド/ドルは1.33ドル台へ(12月10日、バカラ村)
●いよいよ英総選挙。13日のアジア市場が主戦場に! 米ドル/円は110円台へ!?(12月12日、今井雅人)
■米ドル/円は105~112円ぐらいのレンジか
米ドル/円は、株式市場とも相関性があります。その株式市場については後述しますが、リスク選好になりやすいと考えていることもあって、この点からは、米ドル/円は上がる可能性が出てきます。
ただ、今は、円キャリートレード(※)が流行りではないこともあって、上昇も続かないと思いますので、数カ月ぐらいで見ると、米ドル/円は105~112円ぐらいのレンジ内での推移が続くのではないかと思います。
(※編集部注:「円キャリートレード」とは、一般的に金利が非常に低い円で資金を調達し、それを相対的に金利の高い外貨に替えて運用する手法のことをいう)
(出所:TradingView)
■英ポンドは1.28ドル付近へ修正
日本時間12月13日(金)の7時に、英総選挙の投票が締め切られました。
保守党が圧勝したことで、2020年1月末までにEUから離脱することがほぼ確実となり、英ポンドは急騰しました。
【参考記事】
●英総選挙の出口調査で保守党が圧勝! 対中関税も見送りへ…ポンド急騰&円下落
(出所:TradingView)
ここからは、EU側と合意した離脱案の協議に入ることになり、英ポンドの上昇も続かない動きとなっています。
テクニカル的には、エリオット波動論で考えると、5波動目が終わり、ここからは修正波動になるのではないかと思います。
修正波動は、5波動目のスタートまで下がることも多いため、1.28ドル付近までの下げが予想されます。
(出所:TradingView)
あくまでも、エリオット波動面からだけの根拠となるため、あとは売り材料が欲しいところです。
【参考記事】
●米中協議、3つのシナリオから米ドル/円相場を予測! ポンド/ドルは1.33ドル台へ(12月10日、バカラ村)
●英ポンド/米ドルは次の上昇がエリオット波動の5波動目!? ユーロは戻り売りで!(11月26日、バカラ村)
●ポンド/ドルはエリオット波動の4波動目。教科書的には1.33ドル台へ上昇しそう(11月19日、バカラ村)
■米中がようやく第1段階の合意!
米中の通商協議に関しては、12月15日(日)に、第4弾のうち、関税発動が先送りされた製品に追加関税が発動される予定でしたが、その直前の13日(金)の夜に、第1段階の合意が成立しました。
【参考記事】
●米中協議、3つのシナリオから米ドル/円相場を予測! ポンド/ドルは1.33ドル台へ(12月10日、バカラ村)
関税面では、先送りされた製品への第4弾の追加関税が延期され、すでに9月に発動された1200億ドル相当の製品への関税率は、15%から7.5%へ引き下げられました。一部報道では、さらなる関税の引き下げがあるとの内容もありましたが、第1~3弾の2500億ドル相当への製品に対する25%の関税率は、そのままとなりました。
12月13日(金)に、米中は第1段階の貿易取引で合意。先送りされた製品への第4弾の追加関税が延期され、すでに9月に発動された1200億ドル相当の製品への関税率は、15%から7.5%へ引き下げられた (C)Visual China Group/Getty Images
中国の米国産農作物の購入に関しては、米国側は400~500億ドル規模としていますが、中国側は購入規模を後日、発表するとしており、いまだに詳細は決まっていないということだと思います。
合意文書の署名の日程も未定で、合意の詰めが、まだ終わっていないような状況です。
■米国株はリスク選好になりやすい
10月の時点で、トランプ大統領は「第1段階の合意をした」と発言していました。あれから2カ月が経ちましたが、あまり進展したとも思えない状況です。
これから、第2段階の交渉が行われることになりますが、第1段階でもかなり難航したため、さらなる合意は難しいように思います。
ただし、楽観的な内容としては、これまでトランプ大統領は、良い合意ができなければ先送りされた製品への追加関税第4弾が発動されても良い、と発言していましたが、中国と農作物の購入規模などの詳細が決まっていないような状況でも、「合意をした」としています。
これは、先送りされた製品への第4弾の追加関税が「発動される前に合意を急いだ」と考えるべきではないかと思います。
強気の姿勢を崩さなかったトランプ大統領が、詳細が決まっていないような状況で合意を発表したのは、先送りされた製品への第4弾の追加関税が発動される前に合意を急いだと考えるべきではないかと、バカラ村氏は指摘している (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
先送りされた製品への関税第4弾が発動されるようであれば、米国株は急落することが予想されていましたが、合意が曖昧でも、それを行ったということは、大統領選を控えて米国株を下げたくなかったと考えるべきではないかと思います。
とすれば、大統領選を控えて、まだ米国株はリスク選好になりやすいのではないかと思います。
(出所:Bloomberg)
米中の対立はいったん収まり、ブレグジットも終盤戦。さらに、金融政策が緩和的だとすれば、株式市場はリスク選好になりやすいと思います。
■オセアニア通貨の押し目買いが良さそう
リスク選好のときに買われやすい豪ドル/米ドルは、1年半以上、上値を止められていた200日移動平均線を超えてきました。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●移動平均線は、テクニカル指標の超基本。SMA・WMA・EMAの違いは…?
ただ、米中の合意が正式に決まったわけではないため、楽観的にもなりきれず、12月13日(金)の日足は押し戻されて終わっています。
(出所:TradingView)
12月13日(金)の日足は、積極的に買えるような形ではありませんが、米中の対立はこれ以上、酷い状態にもならないと思いますので、リスク選好ということでオセアニア通貨も押し目買いで良いのではないかと考えています。
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