■トランプ発言で米ドル/円下落!
今年(2019年)も残りわずかですが、今週(12月9日~)は、重要イベントが多くあります。
まず、先週(12月2日~)の動きですが、2日(月)にトランプ大統領が、「ブラジルとアルゼンチンは通貨を大幅に切り下げている。鉄鋼とアルミニウムの関税を復活させる」と発言しました。
さらに3日(火)には、「フランスのワインなどに課税する」と発言し、中国だけでなく、他の国からの輸入品に対する関税も、引き上げる可能性があることを示唆しています。
これらはリスク回避の内容になり、さらに中国との合意に関して、「2020年11月の米大統領選挙が終わるまで、待った方が良いのかもしれない」とも発言したことで、米ドル/円は108.40円台まで下落しました。
【参考記事】
●米中の第1段階合意はかなり近い!? 豪ドル/米ドルは上昇が期待できる形に!(12月3日、バカラ村)
●トランプ大統領の要求は、さらに過激に!? 米ドル/円は110円台へ。押し目買い継続(12月5日、今井雅人)
(出所:TradingView)
市場参加者は、12月15日(日)の追加関税発動は延期されるものだと考えていたこともあって、米国株なども調整する動きとなりました。
(出所:Bloomberg)
■交渉の駆け引きだった…!?
米中の交渉は難航しており、関税第4弾の残りの部分も発動される可能性があるのではないかと思われましたが、その後にトランプ大統領は、「中国との協議は順調」と発言しました。
悲観的な発言から楽観的な発言に変化していることから、先週(12月2日~)前半の発言は、交渉の駆け引きだったと思われ、第1段階の合意へ向けた交渉も進んでいるように思います。
米ドル/円は一時、108.42円まで下がりましたが、12月6日(金)には米雇用統計の良い結果もあって、108.91円まで上昇しました。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●米雇用統計は、FXトレーダーなら知らない人はいない、月に一度のお祭り的イベント
(出所:TradingView)
■FOMCとECB理事会にも注目
今週(12月9日~)は、10日(火)~11日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)があり、12日(木)はECB(欧州中央銀行)理事会があります。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FOMCとは? 米国の政策金利FFレートやイベントのスケジュールを徹底解説!
FOMCは、今年(2019年)、これまでに3回の利下げを行ったこともあり、しばらくは現状維持になるものと思います。
基本的には、無風通過だと考えていますが、短期金融市場に月額600億ドルの資金供給を行う政策に関して、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言が注目されるところです。
今年最後のFOMCは政策の変更が予想されていないこともあり、イベント的には無風で通過しそう。しかし、10月から始まった月額600億ドルの財務省証券買い入れに関するパウエルFRB議長の発言は注目されそうだとバカラ村氏は指摘している (C)Bloomberg/Getty Images News
12日(木)のECB理事会は、ラガルド総裁になってから初の理事会となります。
加盟各国の財政出動期待があり、そうであれば、ユーロ/米ドルは1年半続いている緩やかな下降トレンドも終わることになります。
(出所:TradingView)
■英総選挙の注目ポイントは?
今年(2019年)のテーマとされた、米中の通商交渉とブレグジット(英国のEU(欧州連合)離脱)問題ですが、これがともに、終盤戦に入っています。
まず、ブレグジット問題ですが、総選挙の投票が日本時間13日(金)7時に締め切られ、早ければ午前中にも大勢が判明することになります。
市場では、保守党が過半数を超える議席を獲得すると予想されており、どの程度の議席数となるかに注目が集まります。
【参考記事】
●どうなる? 12月12日英総選挙。6つの予想シナリオから英ポンドの動きを大予測!(12月6日、松崎美子)
離脱に向けてボリス・ジョンソン首相が仕掛けた総選挙では、保守党議員が議会の過半数を占めるとの見方がコンセンサス。どの程度の議席数になるかに注目が集まる (C)Justin Sullivan/Getty Images
英ポンドは、保守党が過半数を占めるとの予想で上昇していることもあって、もし、過半数を下回ると下落することになります。
(出所:TradingView)
■英ポンド/米ドルは1.33ドル台がターゲット
英ポンド/米ドルは、エリオット波動的には現在、5波動目の推移となり、教科書的なターゲットは1.33ドル台になります。
(出所:TradingView)
総選挙の結果次第といったところもあり、ターゲットに届かない可能性やオーバーシュートする可能性もあります。
エリオット波動的には、その後は修正波となり、1.28ドル台までの下げが予想されます。
総選挙次第のところはありますが、英ポンド/米ドルは5波動目の途中と考えており、目先はまだ、上昇が期待できるのではないかと考えています。
【参考記事】
●ポンド/ドルはエリオット波動の4波動目。教科書的には1.33ドル台へ上昇しそう(11月19日、バカラ村)
●英ポンド/米ドルは次の上昇がエリオット波動の5波動目!? ユーロは戻り売りで!(11月26日、バカラ村)
■米中通商問題3つのシナリオと米ドル/円の動きは?
米中の通商問題では、12月15日(日)に追加関税第4弾の残りが発動される予定ですが、それまでに、第1段階の合意があるのかが、注目されています。
12月15日(日)に追加関税第4弾の残りが発動される予定。それまでに米中で第1段階の合意がなされるのか、市場は固唾を呑んで見守っている (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
中国は関税の撤廃を求めており、もし、関税が撤廃されるようであれば、米ドル/円は110円をトライする動きが期待できます。
関税の発動が延期されれば108円台を中心とした推移、もし、関税が発動されるようであれば105円台への下げになると考えています。
(出所:TradingView)
可能性として高いと考えているのは関税の延期で、米ドル/円は、108円台を中心とした推移になるのではないかと考えています。
株式市場に関しては、そのときは、安心感からリスク選好になりやすいのではないかと考えています。
■2大テーマは終盤へ!
今週(12月9日~)は、英総選挙で保守党が過半数の議席を獲得することができれば、EUからやっと離脱することができ、米中の通商協議も、関税合戦となっていたものが、撤廃となる可能性があります。
これまでのテーマとされていたものが、終盤に向かっているような大事な場面です。
長期的には、英国はまだ、EUとの交渉も残っており、米中も覇権争いであれば、まだまだ続くことになりますが、英総選挙で保守党が勝利し、米中が第1段階の合意に至れば、リスク選好の動きが期待できると考えています。
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