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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

市場は「通貨戦争」における米ドルの優位を
確信している。日本は負ける可能性が高い

2010年10月08日(金)17:46公開 (2010年10月08日(金)17:46更新)
陳満咲杜

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■「ドルキャリートレード」は予想以上のスピードに

 米ドル全面安の状況が続いている。スイスフランは史上最高値を更新し、豪ドルも1983年以来、自由取引相場に移行してからの史上最高値を更新した。

 円の15年ぶりの高値更新と相まって、足元のマーケットには2つのキーワードが定着しているようだ。それは「通貨戦争」「ドルキャリートレード」である。
豪ドル/米ドル 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足

 「ドルキャリートレード」に関しては、このコラムではかなり前から言及してきた。だが、そのスピードは筆者の予想をはるかに超えるものだ「量的緩和再開で『ドルキャリー』が起こる!その時、米ドル/円相場はどうなる?」を参照)

 そのため、筆者の「米ドル全体いったん切り返し」といったシナリオは消滅した。読者のみなさまには、このことをお詫びしなければならない「ドル全体の底打ちを示すシグナルが点灯!ドル/円の底割れはいったん回避されるか」を参照)

 シナリオを再点検したところ、「ドルキャリートレード」は形式としては再認識されているが、本質的にはその後ろにある「通貨戦争」のぼっ発と米ドルの優位性に対するマーケットの確信が大きな推進力となったことがわかった。これにより、短期スパンにおけるサイクルがゆがみ、結果として米ドル安のスピードが早まったのである。

■日本は「通貨戦争」でも米国に負ける可能性が高い!?

前回のコラムにも書いたように、各国は通貨政策をめぐって対立を深めている。米国は中国に人民元の切り上げを迫り、貿易格差と景気の問題を通貨政策を通じて解決しようとしている「『通貨戦争』で、人民元以外に基軸通貨のドルに勝てる通貨はない。そのワケとは?」を参照)

 さらに重要なのは、「米ドル紙幣の刷りまき」という大規模な量的緩和を実施しようとしている米国が米ドル安を強く志向し、結果として、基軸通貨としての地位を悪用した形で「通貨戦争」を諸外国に押しつけていることだ。

 なにしろ、米ドルの高安は市場取引で決められるものの、米国政府の思惑とFRB(米連邦準備制度理事会)の政策誘導はマーケットのコンセンサスを大きく左右する。

 米ドルが基軸通貨であることの恩恵は、米国政府自身がよく知っている。

 したがって、10月5日(火)に決定した日銀の金利引き下げなどの政策は、為替相場への影響という面では失敗に終っている。米ドル/円が再び83円割れとなったことが象徴するように、マーケットは「通貨戦争」における米ドルの優位性を確信しているようなのだ。
米ドル/円 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 問題の核心が米ドル安である以上、日本政府の努力は実らないし、沖縄の米軍基地の移転問題と同様に、日本は「通貨戦争」でも米国に負ける可能性が高いとマーケットに見透かされているに違いない。

■日銀利下げ決定はかえって市場に恐怖感を与えている

 また、FRBに先手を打とうとしている日銀の行動は、かえって、マーケットに疑心暗鬼をもたらしているのではないだろうか?

 米国の思惑どおりに米ドル安が進むのではないかというコンセンサスが市場に渦巻いているため、日銀が珍しく思い切った政策を打ち出しても、それがマーケットに安心感を与えるどころか、逆に恐怖感を与えていると思っている。

 そして、その「恐怖」とは、11月に大規模な米国の量的緩和が行われることを日銀が予見しているからこそ、先に動いているのではないかといったものだ。

 いつも行動が鈍い日銀が利下げを行うのは怪しいから、米ドル売りにさらに傾く。

 ましてや、週末にG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)を控えているだけに、日本政府は安易な介入をできないのではないかといった観測が、投機筋の勢いを助長している。
 こういった視点から考えれば、ユーロのソブリンリスク(国家に対する信用リスク)が無視されていることも納得できる。

 最近は民間ではなく、機関投資家や国レベルにおいても同様の行動が行われているようだ。消息筋によると、米国の銀行は大量にユーロを買いつけ、アジア諸国は中国にならってユーロ資産を増やしているもようだ。

■皆が同じキーワードを口にする時こそ、警戒が必要!

 もっとも、ユーロのソブリンリスクは「金融マフィア」と呼ばれるヘッジファンドを代表とする国際投機筋によって過大に宣伝され、利用された疑いが濃厚である。今になって、それが徐々にわかってきた。

 同じロジックで推測していくと、最近の「通貨戦争」の存在と進行は事実であるものの、必要以上に大げさに宣伝されている可能性に注意しなければならない

 ある意味で、過度な米ドル安はある程度そういった事態を織り込んでいる。米ドルはこれまで過激に反応してきた。
ユーロ/米ドル 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

巷で皆が同じキーワードを口にしている時こそ、警戒が必要だ

■一方通行の米ドル安にはなりにくいのでは?

 為替相場との関連では、特に、連日にわたって歴史的高値を更新し続けている金と銀に健全な警戒心を持つべきではないかと思う「金とドルインデックス、どちらが『ニセモノ』?金が『偽り』ならドルはいったん切り返す!」を参照)

 金と銀がいつアタマ打ちとなるかは神のみぞ知るだろうが、こういった雰囲気が漂い始めたら、バブルの最終局面を迎えようとしている兆しでもある。

 米国の著名投資家であるジョージ・ソロス氏は、金のバブルに重ねて警鐘を鳴らしながらも、自身のファンドは金を大量に買い続けていた。彼に言わせると、バブルだからこそ買いで、人々を狂わせるまでバブルが続くとのことだ。

 最近の金と銀の相場は、NY原油が147ドルまで上昇した2008年前半の原油相場のような熱気に包まれている。だからこそ、賢明な投資家は手を引く準備をしているのだろう。

金・銀相場にリンクするように、米ドルの全面安は少なくとも短期スパンでは行き過ぎている

 テクニカル的な要素以外では、人民元の切り上げに圧力をかける一方で、自らの政策誘導で米ドル安を放任する米国政府の姿勢に、ユーロ圏の国々が黙っていないであろうことも注意が必要だろう。

 「通貨戦争」はこれからさらに激しくなるが、一方通行の米ドル安といった局面にはなりにくいのではないだろうか?

■米ドル/円の史上最安値更新は時間の問題

 日本政府・日銀の介入リスクがあるにもかかわらず、米ドル/円の安値更新から、もう1つの事実が浮かびあがってくる。

 つまり、投機筋のほとんどが「市場原理者」と化し、日本当局の介入が成功しないと見ていることだ。

 大規模な介入を行ってもスイスフラン高を止められなかったスイス当局のように、日本当局もあきらめるのではないかといったコンセンサスが、ここから読み取れる
米ドル/スイスフラン 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/スイスフラン 日足

 そうであれば、米ドル/スイスフランが史上最安値を更新していることは、米ドル/円の史上最安値更新の蓋然性を示唆するサインとなろう。残る問題はただ1つ、タイミングのみだ。

 8月下旬にロイターから取材を受けた際、豪ドルは来年の早い段階でパリティ(1豪ドル=1米ドル)になると話した。当時は、豪ドルのパリティの予測さえほとんど聞こえなかったときだ。

 だが、そのターゲットは、早くも今週中に達成してもおかしくない勢いだ。

 その教訓として、タイミングに関する推測は往々にして失敗に終わることが多いと言わせていただこう。

 豪ドルのパリティ達成が想定以上に早ければ、円の史上最高値更新は想定より遅れる可能性もあるだろう。この辺の話はまた次回に。

(2010年10月8日 13:00執筆)
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