■「コップの中の嵐」にプロのトレーダーも苦戦している
「コップの中の嵐」といった市況が続いている。主要通貨ペアは「行って来い」を繰り返しており、トレーダー泣かせと言われるほどのランダムな値動きだ(「『コップの中の嵐』と米ドル全面安の傾向はまだ続くのか?」参照)。
実際、6月以降、為替相場におけるモメンタムと方向性のなさによって、為替取引に特化したヘッジファンドの多くが苦戦を強いられているそうだ。
為替ファンドのパフォーマンスを定期的に調査しているパーカー・グローバル・ストラテジーズ社のパーカー エフエックス インデックスによると、FXヘッジファンドの成績は、6月に続いて、7月もマイナスを記録していた。
8月の成績はまだ発表されていないが、引き続きマイナスになったのではないかと推測されている。
■相場の世界も「貧乏暇なし」?
この統計データから、われわれ個人投資家は、少なくとも2つの教訓が得られるだろう。
1つ目は、腕の良し悪しとは関係なく、トレンドレスの状況では、トレーダーは損失を被る可能性が高いということ。
そして2つ目は、東洋の常識と違って、相場の世界では、勤勉さゆえに損が膨んでしまう場合もあるということだ。
後者の教訓をよく心得ているためか、「相場の大物」と呼ばれる人々は、往々にして夏のバカンスをたっぷり享受していたようだ。彼らが2カ月間も休みを取ったことで、「主力筋が休んでいる」状況となり、相場の流動性は低下した。
「主力筋が休んでいる」ことで方向感の乏しい相場が続いたのか、それとも、方向感の乏しい市況になると見越していたから「相場の大物」が安心して休めたのか、この因果関係は実に複雑で、一言で言い切れないところがおもしろい。
いずれにせよ、日本のことわざ「貧乏暇なし」についての解釈は、少なくとも相場の世界においては、バリエーションを増やしたに違いない。
■米雇用統計を機に、ようやく相場に動きが出てくる!?
ところで、前回も指摘したように、為替市場は足元の混とんとした状況から、そろそろ脱出する時期が来ている。おそらく、9月4日(金)に発表となる米国雇用統計の結果が引き金となるだろう(「『コップの中の嵐』と米ドル全面安の傾向はまだ続くのか?」参照)。
ただし、くれぐれも注意していただきたいのは、数字自体の良し悪しや評論家の解説(解釈)ではなく、相場自身の解釈に耳を傾けることが何よりも大事ということだ。
というのは、天気で、嵐が来る前の静けさが不気味であるように、最近の為替相場におけるランダムな値動きに対しては、十分に警戒すべきところと考えるからだ。
米ドルの今後の方向性についての予測が数多く出ており、「米ドル安派」と「米ドル高派」が、ともに正しそうな根拠を並べている。それだけに、多くのトレーダーが、自分自身のポジションに合わせて、一段とバイアスがかかった見方に陥りやすい時期でもある。
足元の局面こそ、伝説の相場師であるジェシー・リバモアの言葉を思い出してほしい。
「値動きが狭いレンジにとどまり、大した変化を見せない時、次の方向を予測しようという試み——上昇にしても下落にしても——は、まったく意味のないことだ」
■取引ではレジスタンスとサポートのチェックが不可欠!
そうなると、相場観よりも相場の方向に素直についていくしかない。
相場におけるメインのレジスタンスラインとサポートラインを引き、自分なりにブレイクポイントをあらかじめ定めておき、ブレイクの有無とモメンタムの強弱を観察するのが何よりも重要であろう。
以下のチャートは私なりに引いたもので、ご参考まで。赤線はレジスタンスライン、黒線はサポートラインで、RSIも同様になっている。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
ちなみに、ユーロ/円、英ポンド/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)を取引する場合は、経験上、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルなど、米ドルストレート通貨ペアのサポートラインやレジスタンスラインを観察したほうが、より確度が高い。
たとえば、英ポンド/円の場合では、英ポンド/米ドルのレジスタンスのブレイクが確認されたと同時に、米ドル/円のサポートも確認されれば、英ポンド/円の上昇は間違いない。
あるいは、英ポンド/米ドルのレジスタンスの突破があったと同時に、米ドル/円もレジスタンスをブレイクしていることがあれば、英ポンド/円の暴騰は必至といった感じだ。
もっとも、これらの通貨ペアはほぼ連動して動く。だから、クロス円相場の値動きを観察することで、米ドルストレート通貨ペアの値動きをより把握できるといった側面もあり、相場全体を見ることが重要だ。
■どうしても自分の相場観に自信があるならば…
ここまで、足元の局面において、相場観よりも相場についていくことが重要であると強調してきた。
だが、それでも、どうしても自分の相場観に自信を持っており、相場の波に大きく乗りたいというのであれば、もう1つ方法がある。すなわち、ポートフォリオに、意識的に相違したポジションを作り、リスクをヘッジしておくことだ。
たとえば、米ドル全面安と信じてやまないなら、経済指標が発表される前にユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルのロングポジションを作り、同時に英ポンド/米ドルのショートポジションも作っておく。
そうすれば、仮に予想どおりに米ドルが全面安となれば、ユーロや豪ドルの上昇分が英ポンドの下落分をカバーし、トータルで利益を得られる計算だ。
半面、米ドル高に転じれば、ユーロや豪ドルの損失を英ポンドのショートポジションの利益で相殺させたり、限定させたりすることができる。ただし、もちろん、ロングポジションとショートポジションの比率によって結果が違ってくることも十分理解していただきたい。
■すべての取引手法に確実なものはない!
ところで、上の例で、ショートするものとして英ポンドを挙げたのは、足元の英ポンドがユーロと豪ドルに対して相対的に、弱気相場にあるためだ。そうでなければ、米ドルの高安とは関係なく、このようなポートフォリオは組めないだろう。
当然のように、ユーロ/英ポンドと豪ドル/英ポンドにおける足元のトレンドが反転すれば、このやり方がリスクヘッジになるのではなく、逆にリスクを拡大させる可能性もある。
この取引手法もすべての取引手法と同様に、確実なものではない。そのことをあらかじめ心得ていただきたい。
「唯一の黄金律とは、いかなる黄金律も存在しないということである」——ジョージ・バーナード・ショー(※)
(2009年9月4日 東京時間15:00記述)
(※編集部注:ジョージ・バーナード・ショーは、おもに19世紀のイギリスで活躍した劇作家)
ちなみに、ユーロ/円、英ポンド/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)を取引する場合は、経験上、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルなど、米ドルストレート通貨ペアのサポートラインやレジスタンスラインを観察したほうが、より確度が高い。
たとえば、英ポンド/円の場合では、英ポンド/米ドルのレジスタンスのブレイクが確認されたと同時に、米ドル/円のサポートも確認されれば、英ポンド/円の上昇は間違いない。
あるいは、英ポンド/米ドルのレジスタンスの突破があったと同時に、米ドル/円もレジスタンスをブレイクしていることがあれば、英ポンド/円の暴騰は必至といった感じだ。
もっとも、これらの通貨ペアはほぼ連動して動く。だから、クロス円相場の値動きを観察することで、米ドルストレート通貨ペアの値動きをより把握できるといった側面もあり、相場全体を見ることが重要だ。
■どうしても自分の相場観に自信があるならば…
ここまで、足元の局面において、相場観よりも相場についていくことが重要であると強調してきた。
だが、それでも、どうしても自分の相場観に自信を持っており、相場の波に大きく乗りたいというのであれば、もう1つ方法がある。すなわち、ポートフォリオに、意識的に相違したポジションを作り、リスクをヘッジしておくことだ。
たとえば、米ドル全面安と信じてやまないなら、経済指標が発表される前にユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルのロングポジションを作り、同時に英ポンド/米ドルのショートポジションも作っておく。
そうすれば、仮に予想どおりに米ドルが全面安となれば、ユーロや豪ドルの上昇分が英ポンドの下落分をカバーし、トータルで利益を得られる計算だ。
半面、米ドル高に転じれば、ユーロや豪ドルの損失を英ポンドのショートポジションの利益で相殺させたり、限定させたりすることができる。ただし、もちろん、ロングポジションとショートポジションの比率によって結果が違ってくることも十分理解していただきたい。
■すべての取引手法に確実なものはない!
ところで、上の例で、ショートするものとして英ポンドを挙げたのは、足元の英ポンドがユーロと豪ドルに対して相対的に、弱気相場にあるためだ。そうでなければ、米ドルの高安とは関係なく、このようなポートフォリオは組めないだろう。
当然のように、ユーロ/英ポンドと豪ドル/英ポンドにおける足元のトレンドが反転すれば、このやり方がリスクヘッジになるのではなく、逆にリスクを拡大させる可能性もある。
この取引手法もすべての取引手法と同様に、確実なものではない。そのことをあらかじめ心得ていただきたい。
「唯一の黄金律とは、いかなる黄金律も存在しないということである」——ジョージ・バーナード・ショー(※)
(2009年9月4日 東京時間15:00記述)
(※編集部注:ジョージ・バーナード・ショーは、おもに19世紀のイギリスで活躍した劇作家)
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