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エミン・ユルマズの「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」

トルコリラは、総選挙に向けて下落の可能性大! 世論
調査は政権交代を示唆、テロ事件が今後も継続して発生
し、選挙前にトルコ国内の政治不安が高まることも

2022年11月16日(水)09:19公開 (2022年11月16日(水)09:19更新)
エミン・ユルマズ

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イスタンブールの繁華街で爆発テロ発生。トルコ当局は、犯人はクルド人武装組織PKKと発表

 トルコ最大都市であるイスタンブールの繁華街で11月13日(日)に爆弾テロが起き、6名の死亡者と80名以上の負傷者が出ました。

 爆発が起きたのはタクシム広場に近いイスティクラル通りですが、私も学生の時によく遊びに行っていた、毎日たくさんの人であふれる場所です。

 容疑者とされる女性は事件の翌日に逮捕されましたが、トルコ当局の発表によるとテロはクルド人の武装組織PKK(クルド労働者党)の犯行だということです。一方でPKKは犯行声明を出しておらず、容疑を否認しています。

 今回のテロはPKKの今までの犯行に似ておらず、スタイルとしてはIS(イスラム国)やアルカイダのようなテロ組織の犯行に似ています。

犯人はPKKではない?エルドアン政府がまともに確認もしないで決めつけている理由とは?

前回のコラムでエルドアン大統領は直近でクルド系政党へアプローチしていることについて書きました。来年(2023年)の6月18日(日)までに行われる予定の総選挙では、クルド人のスタンスが選挙の勝敗を決めます。

 その意味でもこのタイミングでPKKが民間人を狙ったテロを起こすとは考えにくいと国内の専門家も指摘しています。

【※関連記事はこちら!】
【トルコリラ見通し】トルコの実質金利はマイナス75%!総選挙の選挙キャンペーンがスタート、トルコリラの長期見通しは、政権交代が起きるかどうかにかかっている(11月9日、エミン・ユルマズ)

 容疑者の女性はシリア国籍とされていますが、トルコでは政府がシリア難民を大量に受け入れたことに対する国民の不満が高く、そして犯人がPKKではなくイスラム過激主義組織のメンバーである場合に、イスラム主義政党である与党AKP(公正発展党)にとってかなり都合が悪くなります。

 エルドアン政府がまともに確認もしないでPKKの犯行だと決めつけている背景には、このような政治的な動機もあると予想されます。

犯人がPKKではなくイスラム過激主義組織だと与党AKPにとって都合が悪い。エルドアン政府がまともに確認もしないで発表したのは、そうした背景があると予想 (C)Anadolu Agency/Getty Images

犯人がPKKではなくイスラム過激主義組織だと与党AKPにとって都合が悪い。エルドアン政府がまともに確認もしないで発表したのは、そうした背景があると予想 (C)Anadolu Agency/Getty Images

トルコリラは対米ドルでは動かず。対円は円高進行を受けて大きく下落

 今週(11月15日~)のトルコリラは対米ドルで大きく動かず、米ドル/トルコリラは18.60リラ前後で推移していますが、円高の進行を受け対円では大きく下がっています。トルコリラ/円は7.50円を割りました。

 テロ事件は今後も継続して発生し、選挙前にトルコ国内の政治不安が高まる可能性があります。

米ドル/トルコリラ 日足
米ドル/トルコリラ 日足

(出所:TradingView

トルコリラ/円 日足
トルコリラ/円 日足

(出所:TradingView

世論調査は政権交代を示唆、総選挙に向けてトルコは混乱する可能性が高いと懸念。トルコリラは下落加速か

 2015年の6月に行われた総選挙でエルドアン率いるAKPは過半数に達しませんでした。クルド系政党のHDP(国民民主主義党)は躍進し13.1%の票と80議席を獲得しました。

 どの政党も単独過半数を取れなかったので連立政権樹立に向けた交渉に移ったのですが、交渉は決裂し、11月に総選挙のやり直しが決まりました。しかし、6月から11月までの5カ月でテロ事件が多発し、国内の混乱が高まりました。

 これはエルドアンにとって追い風となり、11月の選挙でAKPは再び過半数を獲得することができました。国内混乱はエルドアン支持を固めたわけです。今回も各社の世論調査では、次の選挙で政権交代が起きる可能性が高いことを示しています。

個人的にはトルコが選挙に向けて混乱する可能性が高いと懸念していて、トルコリラの下落も加速すると予想しています。

米ドル/トルコリラ 週足
米ドル/トルコリラ 週足

(出所:TradingView

エブリシング・バブルの崩壊(エミン・ユルマズ著)
エブリシング・バブルの崩壊
エミン・ユルマズ

<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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