昨日の海外市場では、ドル円は米国とイランの紛争終結期待が後退する中、原油先物相場が急騰すると、「有事のドル買い」が先行し一時159.74円と日通し高値を付けた。ユーロドルは1.1509ドルまで弱含んだ。
本日も為替市場はイラン情勢に翻弄される展開が続く。ただし短期的には、原油高を背景にドルは底堅さを維持する公算が大きい。なお、本日は聖金曜日(グッドフライデー)に伴い、アジアでは豪州・ニュージーランド・シンガポール・香港などが休場。欧州も全面休場となり、米国は株式・商品市場が休場、債券市場は短縮取引となる。流動性低下の中で、値動きが増幅されやすい点には警戒が必要だ。
昨日のトランプ米大統領の演説は、「戦争はほぼ終結」との認識を示しつつも、自画自賛と過去政権批判に加え、「中東原油は不要」「ホルムズ海峡も不要」といった強硬なメッセージが前面に出た。さらに、今後2-3週間でイランに決定的打撃を与える可能性にも言及している。この発言を受け、原油市場では5月限が11%超上昇し111.54ドルで引け、6月限の98.04ドルとのスプレッドは1983年以降で最大に拡大した。演説前は停戦観測を背景に売りポジションが積み上がっていたが、想定以上にタカ派的な内容を受けてショートカバーが一気に進んだ格好だ。
今週は早期停戦期待を材料にドル買いの巻き戻しが優勢だったが、今回の発言により中東情勢は再び混迷を深める可能性が高い。原油価格の高止まりはドルの下支え要因として意識されやすい。
また、イラン側の反応を踏まえれば、短期的な停戦シナリオの現実味は乏しい。指導層や一般市民の被害が拡大する中で、トランプ演説を受けて態度が軟化するとは考えにくく、むしろ強硬姿勢が強まる可能性が高い。戦線の長期化が意識される局面では、「原油高、インフレ高進、株安、ドル買い」という構図が継続しやすい。加えて、これまでのパターンを踏まえれば、週末にかけて軍事行動がエスカレートするリスクも意識され、本日も下値を試す展開にはなりにくい。
もっとも、このドル高も盤石ではない。トランプ政権はなお2年以上の任期を残すが、各国の対米スタンスには明確な変化が見られる。今回のイラン対応を巡っても、支持を表明する国は限定的で、多くの同盟国は距離を取り始めている。第一次トランプ政権時に見られた協調姿勢は後退し、第二次政権の強い自国優先路線への反発は着実に蓄積している。
対外政策に加え、内政面の不安定さも無視できない。トランプ大統領は昨日、ボンディ司法長官の解任を決定。ノーム国土安全保障長官に続く更迭であり、わずか1カ月足らずでの2閣僚の人事刷新は、政権内部の不安定さを示唆するものだ。
関税政策に続き、原油高を招いた中での一貫性を欠く発言は、国際的な信認の低下を招きかねない。さらに、資質に疑問符が付く閣僚を強引に登用してきた経緯もあり、政権は内外両面で圧力に晒されている。短期的にはドルを支える要因が残る一方で、中長期では「米国離れ=ドル売り」という構造リスクが徐々に意識される局面に入りつつある。市場はすでに、その転換点を探り始めている。
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