ザイFX! - 初心者必見のFX総合情報サイト

西原スーパーバナー
----年--月--日(-)日本時間--時--分--秒
西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米ドル/円は159~160円で上値警戒! 米中間選挙で株価急反発も、データセンター建設への反発がAI関連株の新たなリスクに。ゴールド急反発は米ドル安を示唆

2026年11月05日(木)15:11公開 (2026年11月05日(木)15:11更新)
西原宏一

【GMOクリック証券】圧倒的人気で100万口座達成!最短即日で取引可能!

米中間選挙は民主党が圧勝! 「最悪のシナリオ」回避で株価は急反発

 みなさん、こんにちは。

 今週(11月2日~)の最大のテーマは、米中間選挙での民主党の圧勝です。

 民主党は上下両院を制し、知事選でもテキサス、ジョージア、オハイオなど少なくとも5州で共和党から議席を奪いました。民主党が知事の過半数を握るのは2010年以来です。

 敗因について、バンス副大統領は「負けた理由は戦争だ」と投稿しています。

 2月末に始まったイラン戦争は9カ月目に入りました。ガソリン価格の高騰で生活費への不満が一気に高まり、それが選挙結果にはっきり表れた形です。

 民主党の大勝を受け、11月4日(水)の東京市場では日経平均の下げ幅が一時3000円を超えました。上下両院を制した民主党がAI関連の規制強化に動く可能性が意識され、半導体関連株に売りが先行しました。

 ただ、その後トランプ大統領が選挙結果を受け入れ、民主党と協力する意向を示しました。これで、選挙結果の正当性をめぐって争う「最悪のシナリオ」は回避されています。

 さらに「buy the fact(事実で買う)」の動きも加わり、日経平均は下げ幅を大きく縮めました。

 そしてNY市場では、原油安と株高が進行。米国債利回りが低下し、米ドル安とゴールド高となりました。各市場の動向をまとめると、以下のとおりです。


(1)原油:有権者のイラン戦争への不満が鮮明になり、戦争終結への期待からブレントは9%近く急落しました。1カ月以上ぶりに100ドルを割り込み、94ドル台で引けています。
(2)株:NYダウは3%超上昇し、上げ幅は2025年4月以来の大きさとなりました。S&P500も8月上旬以来の大幅高です。議会と政権のねじれによって政策が膠着し、トランプ大統領の財政拡大や関税政策に歯止めがかかるとの見方が好感されました。
(3)債券:米国債の利回りは全年限で低下し、米10年債利回りは4.8%台後半まで下がりました。米財務省が中長期国債の発行ガイダンスから「少なくとも」の文言を削除したことで、市場では早ければ2027年前半にも20年債や30年債の発行が減らされるとの見方が広がり、長期金利の低下を後押ししています。
(4)米ドル:ドル指数は一時0.6%下落し、この2カ月で最大の下げ幅となりました。
(5)ゴールド:一時3.1%高と8月以来の大幅高となり、4000ドルの大台を回復しました。


 金融政策の面でも、今回の選挙結果は大きな意味を持ちます。

 民主党が上院を奪還したことで、FRB(米連邦準備制度理事会)の人事を通じたトランプ政権の影響力拡大には歯止めがかかりそうです。

 また、生活費の高騰を争点に勝利した民主党が、インフレ抑制を強く求める可能性もあります。FRBが政権からの圧力を受けにくくなれば、物価動向に応じて金融政策を判断しやすくなると考えられます。

 これは本来、米ドルの支えになる材料です。今後の米金利見通しには注意が必要だと考えています。

本当の焦点はデータセンター! 住民投票41件中40件で建設反対派が勝利

 ただ、個人的には株の調整はまだ終わっていないと想定しています。注目しているのは、データセンター建設の行方です。

 今回の選挙では、データセンター建設への反発が大きな争点になりました。

 CNBCによると、今回の米中間選挙では10州でデータセンター関連の住民投票が41件実施されました。11月4日(水)時点で判明した結果では、ノースダコタ州ハーウッドを除き、データセンター開発に反対する側が勝利したと報じています。

 なかでも影響が大きいのがテキサス州です。知事選では民主党のヒノホサ氏が現職の共和党知事アボット氏を破りました。ヒノホサ氏は、州内での新規データセンター建設の即時停止(モラトリアム)を公約に掲げています。

 ウェルズ・ファーゴによると、計画中の米データセンター容量の27%がテキサス州に集中しています。データセンター建設の許認可には州も大きく関わるため、民主党の知事が建設に反対するリスクは、今後も意識され続けそうです。

 実際、すでに影響は出始めています。

 オハイオ州ピクアでは、メタが計画していたAIデータセンターの先行きが不透明になりました。住民投票でデータセンターの建設を禁止する憲章改正が67%の賛成で可決され、計画を承認した市の委員3人もリコールで解職されています。

 データセンター建設は、選挙前から遅れが目立っていました。

 マイクロソフトは10月28日(水)の決算発表で、2026年の設備投資見通しを1750億ドルから1700億ドルに50億ドル引き下げています。

 背景には外部のクラウド事業者によるデータセンターの稼働遅延があり、イレン(※)がテキサス州で建設中の施設も影響していると報じられています。

 選挙後の規制強化が加われば、建設の遅れはさらに広がる可能性があります。

(※イレンは、旧社名をアイリス・エナジー(Iris Energy)というオーストラリアの企業。ナスダックに上場し、ビットコインのマイニング事業からAI向けクラウド事業へと事業領域を広げている)

AI関連株は「持てる者」と「これから建てる者」で明暗

 こうしたなか、11月4日(水)の米国株市場では、AI関連銘柄の間でも株価の明暗が大きく分かれました。


(1)上昇:すでにデータセンターを持つマイクロソフト(+6.7%)やアマゾン(+6.1%)。アップルも、データセンター建設が鈍ればメモリ価格が落ち着き、利益率の改善につながるとの見方から買われ、時価総額で世界首位に返り咲きました。

(2)下落:これから建設資金を調達する必要があるコアウィーブ(-9.9%)などのネオクラウド。一方、データセンター向けに半導体を供給するマイクロン(-7.0%)やエヌビディア(-3.2%)も、需要の鈍化が懸念されて売られました。電源・冷却設備を手がけるバーティブ(-12.9%)など建設関連も軒並み急落しています。

また、マスク氏が支援した候補の敗北も嫌気されたとみられ、テスラ株も下落しました。


 FT(フィナンシャルタイムズ)の取材に応じた米国の投資家は、すでにデータセンターを持ち、投資も済ませている企業は問題なく、困るのはこれから許可を取らなければならない企業だという趣旨の発言をしています。

 全体の株高とは裏腹に、AIブームを支えてきた銘柄ほど売られているのが実情です。東京市場で半導体関連株が売られたのと同じ構図といえます。

 象徴的なのはコアウィーブです。株価が2025年5月以来の安値まで下げただけでなく、2031年満期の社債は額面1ドルあたり79.5セントまで売られました。

コアウィーブ 週足
コアウィーブ 週足チャート

(出所:TradingView(トレーディングビュー))

 2030年満期や2032年満期の社債も利回りが15%を超えており、債務の返済能力に対する懸念が強まる「ディストレス(※)」の水準にあります。

(※ディストレスとは、債券市場で企業の信用リスクが高まり、債券価格の大幅な下落や利回りの急上昇が起きている状態のこと)

 先週のコラムでも触れたように、マーケットの関心は「AIがバブルかどうか」から「AI関連企業に返済能力があるかどうか」に移っています。そこに、建設そのものが止まるかもしれないという新たなリスクが加わったわけです。

【※関連記事はこちら!】
⇒
米ドル/円は156〜159円のレンジ相場、ユーロ/円が狙い目! AI関連株の調整で円高、フランス発の混乱でユーロ安も!? 175円割れなら170円が視野に(10月29日、西原宏一)

 この点について、FTのマーティン・ウルフ氏は「AIの崩壊に備えはできているか(Are we ready for an AI bust?)」と題したコラムで警鐘を鳴らしています。

 ウルフ氏は、投資ブームとそれを支える金融の仕組みが長く続くほど、終わったときの経済への悪影響は大きくなると指摘しています。

 データセンター建設が州レベルで止まれば、まさにこの「これから建てる」側の資金繰りが真っ先に圧迫されます。

 僕も、1日の大幅高だけで流れが変わったと判断するのは早いと考えています。

ゴールド急反発が示すのは米ドル安。米ドル/円は戻り売り

 では、為替市場はどう見ればよいでしょうか。

 選挙後、米ドル/円は157円台半ばから158円台半ばまで値を戻しています。

 ただ、僕が重視しているのはゴールドの動きです。

 ゴールドは2月末のイラン戦争の勃発以降、エネルギー高による金融引き締めへの警戒から約25%下落し、先週(10月26日~)には1年ぶりの安値をつけていました。そこから一気に4000ドルの大台を回復したのは、明確な反発といえます。

NY金先物 日足
NY金先物 日足チャート

(出所:TradingView)

 ブルームバーグによれば、民主党が両院を制したことで政府の借り入れや支出が抑えられるとの見方が広がり、米国債利回りの低下と米ドル安がゴールドを押し上げたとのことです。

 ただ、議会と政権のねじれにより財政見通しが改善すれば、財政悪化へのヘッジとしてのゴールドの買い材料は長期的に薄れるとの指摘もあります。現時点では、米国債利回りの低下と米ドル安の効果が上回っている形です。

 ゴールドがここまで反発したことからも、基本は米ドル安の流れと見ています。

 米ドル/円の反発は、株の下げ渋りによるリスクオンの円売りが中心と考えています。

 FRBの独立性が保たれることで利下げ観測が後退すれば、米ドルが買い戻される可能性もあります。

 ただ、データセンター問題でAI関連株が再び調整すれば、円売りの流れは逆回転しやすくなります。

 米ドル/円は159~160円が当局の介入警戒ゾーンとも言われており、戻りの上値も限られやすいと考えています。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView)

 この後は、イラン停戦交渉の行方、各州のデータセンター規制の動き、そして2週間後のAPEC(アジア太平洋経済協力)に合わせて開催される可能性がある米中首脳会談に注目です。

 以上から、今週の戦略はゴールドを横目に米ドル/円の戻り売り継続とします。


【ザイFX!編集部からのお知らせ】

 ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。

西原宏一投資戦略メルマガ「トレード戦略指令!」

 「トレード戦略指令!」は10日間の無料体験期間がありますので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。

人気のザイFX!限定タイアップキャンペーンをPickUp!
FX初心者のための基礎知識入門
キャンペーンおすすめ10 MT4比較 スワップポイント比較
キャンペーンおすすめ10 MT4比較 スワップポイント比較
『羊飼いのFXブログ』はこちら
↑ページの先頭へ戻る
トルコリラ比較