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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

ユーロ/円がクロス円の主役へ! テーマは「キャリー」から「欧州ソブリンリスク」に変化。フランス国債急落にスペイン総選挙、米ドル/円も戻り売り

2026年10月08日(木)12:23公開 (2026年10月08日(木)12:23更新)
西原宏一

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クロス円の主役はスイスフラン/円からユーロ/円へ

 みなさん、こんにちは。

 前回のコラムでは「SNBのスイスフラン安容認」と「日米首脳レベルの円安けん制」という2つの追い風を受けて、スイスフラン/円の戻り売りをメインのポジションとご紹介しました。

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米ドル/円は152~160円がコアレンジも、「首脳」レベルの円安けん制が効きそう。SNBの事実上「フラン安容認」でスイスフラン/円売りに2つの追い風!(10月1日、西原宏一)

 実際、スイスフラン/円は年初来高値の204.42円から、9月末には187.60円まで16.82円も急落し、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下落をけん引してきました。

 ところが、10月1日(木)を境に、為替市場の主役は別のところへ移りました。ユーロです。

 フランス政府が議会に2027年予算案を提出すると、仏独10年債利回りのスプレッドが急拡大し、ユーロは対米ドルよりもむしろ、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)を中心に売られました。

 そこに今週(10月5日~)はスペインの解散総選挙が加わり、欧州の政治リスクが一気に表に出てきています。

 今週はこの流れを整理し、私たちの戦略にどう影響するかを考えます。

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フランス発の債券ショック、欧州ソブリンリスクが拡大

 きっかけは、10月1日(木)にルコルニュ内閣が議会に提出した2027年予算案です。

 財政赤字をGDP比5.4%から5.0%へ縮める計画ですが、計画どおり進んでも債務はGDP比122%まで増え続けます。しかも、少数与党の議会で予算案がそのまま通るかは分かりません。

 これを嫌気してフランス国債が売られ、仏独10年債利回りのスプレッドは2日(金)に152bpと、2011年以来の水準まで拡大しました。

 フランス国債売りが加速した背景には、ヘッジファンドが夏から積み上げてきた「フランス国債買い・ドイツ国債売り」のポジションがあります。

 独仏の金利差が縮むことに賭けた取引ですが、ルペン氏の支持率上昇、不評の予算案、そして世界的な国債安が重なり、金利差は逆に広がりました。損失が売りを呼び、売りがさらに損失を呼ぶ展開です。

 ポジションを手じまうには、フランス国債を売ると同時に、売っていたドイツ国債を買い戻す必要があります。そこに、安全資産としてのドイツ国債への逃避も加わり、フランス国債の利回り上昇とドイツ国債の利回り低下が同時に起きて、スプレッドは両側から広がりました。

 象徴的だったのが、日本の運用会社の動きです。

 Bloomberg(ブルームバーグ)によると、三井住友DSアセットマネジメントのグローバル債券部門を率いるクニベ・シンジ氏は2日(金)、同部門のファンドがフランス国債を全額売却したと明らかにしました。売却代金の大半はドイツ国債へ、一部は短期の日本国債へ振り向けたようです。

 日本の投資家が持つフランス国債は、7月時点で推計約23兆円あります。世界の債券指数の構成比と比べると、日本の投資家はユーロ圏の国債の中でもフランス国債を特に多く保有している状態です。

 日本の大手運用会社のファンドが、遅ればせながらフランス国債を全額売却したことは、他の日本の投資家の動きを占ううえでも見過ごせません。

新たな火種はスペイン。ユーロ売りはどこまで続く?

 週明けには、スペインのサンチェス首相が11月29日(日)に総選挙を行うと発表しました。看板政策の住宅法案が否決されたことを受けての判断です。

 これで欧州の政治リスクは、フランス一国の話ではなくなりました。

 ユーロ/米ドルは一時1.1161ドルと1年5カ月ぶりの安値、ユーロ/円も176.22円と2025年以来の安値を付けています。伊独10年債利回りのスプレッドも、9月初めの80bp台前半から114bpまで拡大しました。

 こうした欧州の政治・財政リスクをめぐる市場関係者の見方は、次のとおりです。


INGグループ「ユーロに財政リスクのプレミアムが上乗せされ始めた。ユーロ/米ドルは1.10ドルまで下げるリスク」
ドイツ銀行「新たなユーロ危機の始まりか、売りの行き過ぎか。自分は行き過ぎ寄り」
コメルツ銀行「ドイツ国債が混乱の影響を受けていない限り、ユーロの下落余地は限られる」
ゴールドマン・サックス「ユーロと英ポンドは投機筋の売りが極端に偏った状態。この後8週間で約2%上昇する傾向」
ブルームバーグ・インテリジェンス「スイスフラン強気派が復活。ユーロ/スイスフランは0.93スイスフラン割れ、0.9250スイスフランまでを想定」
(出所:Bloomberg、FT(フィナンシャルタイムズ))


 ユーロの下値リスクを指摘する声と、「行き過ぎ」を指摘する声が、はっきり分かれています。

 10月6日(火)には、来年(2027年)の大統領選で有力とされるRN(国民連合)のマリーヌ・ルペン氏が、2027年の財政赤字をGDP比3.7%まで縮め、遅くとも2032年までに3%未満にする計画を発表しました。

 これまで「財政規律派ではない」と見られてきたルペン氏が、財政赤字削減という現実路線を示したことを受けて、ユーロは大きく値を戻し、ユーロ/円も一時178円台を回復しています。

 ただ、ルペン氏は同時にECB(欧州中央銀行)への介入も求めました。ここが難しいところです。

 ECBには国債買い入れ策「TPI」がありますが、「無秩序で正当化されない市場動向」への対応を想定したものです。財政悪化や予算の行き詰まりという理由がある今回の売りには、使いにくいのが実情です。

 しかも、ユーロ圏のインフレ率は3.8%と3年ぶりの高さで、6月と9月に利上げしたばかりのECBが国債を買い支えれば、利上げと逆の効果になります。

 ECBが動くかどうかの決め手は、フランスの問題がイタリアなど他の国へ広がるかどうかです。

 ルペン氏の計画はあくまで案にすぎず、フランス国債の混乱がこれで収まるわけではありません。ユーロの戻りは限定的と見ています。

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テーマは「キャリー」から「欧州ソブリンリスク」へ

 ここで、マーケットのメインシナリオへの影響を確認しておきます。

 先週(9月28日~)まで追ってきたのは、「キャリーの調達通貨は円からスイスフランへ」という流れでした。

 ところが10月1日(木)、フランス国債の急落をきっかけに、テーマは「キャリー」から「欧州ソブリンリスク」へと一変しました。スイスフランは、欧州の安全通貨として逆に買われています。

 その結果、作戦会議コラムでも書いたように、スイスフラン/円のショートにユーロ/スイスフランのショートを加え、主役はユーロ/円のショートへ移っています。スイスフランの売り買いが相殺され、実質的にユーロ/円のショートになるからです。

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ユーロ/円は戻り売り! フランス国債急落で市場の焦点がスイスフランからユーロへ。円安けん制で円買い、米ドル/円も160円を上限に戻り売り(10月5日、西原宏一&叶内文子)

ユーロ/円、米ドル/円の戻り売りを継続

 一方、米ドル/円は157.50~158.50円前後で膠着が続いています。先週半ばまではスイスフラン/円、先週末からはユーロ/円の乱高下に振り回され、動きにくい展開です。

 米10年債利回りは5.3%台で高止まりし、ブルームバーグ・ドル指数は6月下旬以来の高値を付けました。それでも米ドル/円では米ドル高が進みません。日米当局が上値を抑えると想定されているからです。

 もう1つ気になるのが、米ドルの「買われすぎ」です。FTのケイティ・マーティン氏は、AI投資が世界中の資金を吸い寄せた結果、世界は米ドルを持ちすぎていると指摘しています。

 しかも、海外投資家は米ドルの為替ヘッジをほとんどかけていません。AI関連株や米国株がつまずけば、海外投資家による株式の売却が米ドル売りにつながる可能性があります。

 すぐに起きる話ではありませんが、AI投資の名の下で米ドルがじわじわと買われすぎになっているのであれば、米ドル/円の上値はますます重くなるはずです。

 マーケットの焦点は、欧州のソブリンリスクに移っています。

 欧州では、フランス議会の予算審議に加え、11月29日(日)にスペイン総選挙が控えています。来年4月18日(日)にはフランス大統領選の第1回投票もあり、欧州の政治リスクは長いテーマになりそうです。

 中央銀行では、10月28日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)、29日(木)のECB理事会、30日(金)の日銀会合(日銀金融政策決定会合)と、月末に重要な会合が続きます。特にECBが、フランス国債の混乱にどう触れるかに注目です。

 基本戦略は、欧州のソブリンリスクを横目にユーロ/円の戻り売り。

ユーロ/円 日足
ユーロ/円 日足チャート

(出所:TradingView(トレーディングビュー))

 日米当局が上値を抑え、米ドルの買われすぎも意識される米ドル/円の戻り売りも継続です。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView)


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