米国中間選挙のポイント
・下院は民主党勝利がほぼ確実、ポイントは上院
・上院の情勢は拮抗。賭けサイトでは民主党有利。
・民主党勝利は、トランプ時代の終焉を示唆。
・トランプ大統領は選挙後にイラン攻撃を示唆している。
米中間選挙でマーケットが大きく動いたというケースをあまり覚えていません。マーケット的にはあまり材料にはならなかったのだと思います。
過去の米中間選挙直後、1日の米ドル/円の動きを追ってみました。火曜日投票なので、結果は水曜日の日本時間の午後にはっきりしてきます。
水曜日のオープンと木曜日のクローズの米ドル/円レートを比較することで、純粋に米中間選挙だけのインパクトがどうだったかを調べてみました。

(※筆者提供)
米国中間選挙後に米ドル/円が大きく動いたのは1998年と2022年。1998年は日本の金融危機で円安が進みましたが、10月に20円を超える大きな調整があり、その反発相場の中でした。
2022年はウクライナ戦争の勃発で円安が極端に進み、11月はその調整局面でした。いずれも、中間選挙の結果というより、相場の流れがそうだった、としか言いようがない結果となっています。
過去の中間選挙はマーケットに大きなインパクトはありませんでしたが、今回は違うと思います。
上下両院どちらでも落とせば、トランプ氏の政策推進能力に疑問符が付きます。トランプ時代の終わりの始まりとみなされるでしょう。
そして悪いことに、トランプ大統領の支持率は、就任以来最低水準です。

(出所:Real Clear Politics)
●下院の情勢
下院では、民主党が勝利すると見られています。賭けサイトのポリマーケットでは、民主党勝利の確率が95%、Kalshiでも94%となっています。民主党勝利はほぼ間違いないでしょう。
下院の議席数は435なので、過半数を取るには218議席必要ですが、Real Clear Politicsによると民主党は227議席を固めています。
接戦している選挙区が28ありますが、そのすべてを共和党が勝ったとしても208にしかなりません。

(出典:Real Clear Politics)
●上院の情勢
上院の情勢は拮抗しています。

(出典:Real Clear Politics)
今回改選されるのは35議席、非改選の議席は民主党34、共和党31。
民主党はマサチューセッツ、ロードアイランド、ニュージャージー、デラウェア、バーモント、イリノイ、コロラド、オレゴンの8州がほぼ確実とされています。非改選と合わせ42議席。
ジョージア、ニューメキシコ、ノースカロライナの3州はおそらく民主党(Likely DEM)、そしてミネソタ、ニューハンプシャーの2州がたぶん民主党(Lean DEM)、合計47州ぐらいを固めています。
共和党はウエストバージニア、ケンタッキー、テネシー、アーカンサス、アラバマ、ルイジアナ、オクラホマ、サウスダコタ、ワイオミング、アイダホの10州を確実に抑え、ミシシッピ、ワイオミングの2州がおそらく共和党(Likely Rep)、フロリダもおそらく共和党(Lean Rep)と44州を抑えています。
そして、接戦州とされているのが9州。

(※筆者提供)
この状況のまま進めば、上下両院を民主党が支配する可能性が高く見えてきます。ポリマーケットでは、今年(2026年)の始めは共和党優位と見られていましたが、イラン戦争をきっかけに共和党への支持が激減、9月後半から民主党の優位がはっきりとしてきました。中間選挙なので、政権への批判をはっきりと打ち出そうという、有権者の考えが感じられます。

(出所:Polymarket)
民主党勝利がマーケットに及ぼす影響
仮に共和党が下院を失うとどうなるか。予算や調査の主導権が民主党側に移ります。また、トランプ氏、あるいはその周辺が、調査される可能性が出てきます。さらに上院を失うと、閣僚や連邦判事等の人事承認が難しくなります。
また、当然のことながら、法案は上下院両方で過半数以上の賛成が必要になるため、多くの法案が通らないということになります。軍事支出等も議会の承認がなければ続けることができません。
トランプ政権はデータセンター投資を積極的にサポートしてきましたが、多くの地域で問題となっています。
環境を重視する民主党の権限が強まれば、データセンター投資にも一定の制約が働き、過大な建設計画の一部がストップすることになるでしょう。
AIへの過剰投資が問題になり、一部の株価が急落していますが、その傾向に拍車がかかる可能性があります。民主党の勝利は短期的に株価に対しマイナスとなります。
よって、民主党勝利→株価下落、米金利低下、米ドル安、という動きが推測されます。
イラン戦争は再開するのか?
しかし、11月3日(火)の投票日以降、イランを再攻撃する意向をトランプ大統領は再三示唆しています。
新しい議会が始まるのが来年(2027年)1月3日(日曜日なので少し伸びる可能性あります)です。それまでは選挙前の議会が続きます。
11月3日以降、1月3日まで、共和党が上下両院で多数を握っているので、その短期間のうちに軍事行動を起こす可能性は極めて高いように見えます。一部の識者は確率7割以上と見込んでいます。
民主党が中間選挙で勝利すると、米ドル/円にはおそらく円買い・米ドル売りの圧力が当初かかるかもしれませんが、イランでの戦争が再開すると、原油価格が急騰するため、円は一転売られるということになりかねません。選挙直後の反応に飛びつくのは危険となります。
民主党政権は短期的に株価にはマイナスですが、戦争が始まれば今年(2026年)の3~4月のように株価には売り圧力がかかるでしょう。原油価格上昇からインフレ率上昇という連想が働くので、米金利には上昇圧力がかかります。
議会のコントロールを失うトランプ大統領は、議会の力が及ばないところ、外交に今後力を入れ、自らのレガシーを作ることに専念することになります。
キューバ攻撃なのか、北朝鮮との和平交渉なのかわかりませんが、気まぐれな大統領は今後もマーケットの最大のリスクです。

気まぐれな大統領は今後もマーケットの最大のリスク(C) Chip Somodevilla/Getty Images News
米中間選挙の結果に飛びついてトレードしては危険です。そして、長い目で見ると今回の中間選挙が「トランプ時代の終焉」を告げることになるでしょう。
米国の左傾化がはっきりするかもしれません。経済成長ではなく、より公平な分配を目指す方向に米国が舵を切ることになると、中長期的に米ドルには売り圧力がかかる可能性あります。
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