■日銀総裁候補の報道で円安材料出尽くしか?
みなさん、こんにちは。
今週(2月25日~)の米ドル/円は、前コラムと変わらず調整局面となっています。
【参考記事】
●円の次は英ポンドがターゲットか!?英ポンド/米ドルは長いレンジを下抜け!(2月21日、西原宏一)
日銀総裁候補にアジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁、副総裁候補には岩田規久男学習院大教授との報道が円安材料となりました。
特に岩田教授は日銀批判で知られており、浜田イェール大学名誉教授の推薦が入っていることをうかがわせる人事報道です。
この報道を受け、一時米ドル/円は94.77円まで急騰。
ただ、この報道が逆に円安材料出尽くしとなり、buy the rumor, sell the fact(噂で買って、事実で売る)の展開になりました。
95円目前まで急騰していた局面で、この日銀人事の発表を待ち構えていたヘッジファンド勢から利益確定の米ドル売りが大量に持ち込まれ、米ドル/円は暴落。
後述するイタリア政局の混乱もあり、一時90.91円まで急落する局面もありましたが、その後のドル円は方向感なく、乱高下し、結局、91~93円のレンジでの推移に収まっています。
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
ひと相場終わった米ドル/円は、当面、調整局面入りとなるでしょう。
■英ポンド/米ドルもひと相場終了
このコラムで何度かご紹介した英ポンド/米ドルも、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが英国債の格付けを最上位から1段階引き下げたことを受け、2月25日(月)に大きく窓をあけ、1.5079ドルまで急落したことで、こちらもひと相場が終了しました。
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
■イタリア政局の混乱でユーロが急落!
2013年、年初から米ドル/円を中心にボラティリティの高い動きを繰り広げていた為替相場はいったん、落ち着きを見せるのかと思われましたが、欧州から新たな懸念材料が噴出し、突如ユーロが不安定な動きになりました。
以下のニュースのとおり、イタリアの選挙結果が大接戦となり、安定した政権が樹立できるか不透明になってきたのです。
伊総選挙に関しては、改革を推進する中道左派が、下院で過半数を確保したと同国内務省が発表している。ただ、上院に関しては緊縮財政の見直しや減税を掲げたベルルスコーニ氏率いる中道右派の躍進が目立っており、ベルサニ氏の中道左派がモンティ首相の中道連合と連立を組んでも過半数の議席を獲得できない見込みとも伝わっている。政治的に不透明な状況が続くとの見通しや、暫定政権の樹立後に再選挙が実施される可能性が浮上するなど、ユーロの上値を抑える状況が続いた。
(出所:ザイFX!:為替の取れたてニュース!)
今回のイタリアに対する懸念は、単にイタリア政局の混乱が心理的なユーロのネガティブ要因になるというだけではありません。
イタリア総選挙までは、仮にイタリア国債が急落しても、OMT(国債買い入れプログラム)が発動され、歯止めになるというセーフティネットがありました。
そして、そのため、2012年後半からユーロは堅調に推移していました。
ユーロ/米ドルは2013年2月1日(金)には一時1.3711ドルまで上昇しています。

(リアルタイムチャートはこちら →FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
■イタリアは緊縮財政を約束できるのか?
OMTの発動には緊縮財政を約束することが必要となるのですが、イタリアの選挙結果を受けて、「イタリアは緊縮財政を約束できるのか?」という懸念が拡大しているのです。
そのため、選挙結果を受け、ユーロ/米ドルは1.3018ドルまで急落。
2月27日(水)に、イタリア国債の入札を無事に終えたことに加え、米国株が底堅い動きを維持しているため、本稿執筆時点では1.3150ドルまで反発しています。

(出所:CQG)

(リアルタイムチャートはこちら →FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)
しかし、マーケットに芽生えたユーロに対する下値不安が、ユーロ/米ドル、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の上値を重くしています。
上昇を続けていたユーロ/英ポンドも選挙結果を受け、いきなり0.8816ポンドから0.8576ポンドまで暴落しました。

(リアルタイムチャートはこちら →FXチャート&レート:ユーロ/英ポンド 1時間足)
このイタリアに対する懸念が単なる杞憂に終わるのか。もしくは問題が長期化してユーロの下落がトレンドとなるのかは、今後のイタリアの政局動向にかかっています。
当面、イタリアの動向に注目です。
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