■これからのキーワードは「成長格差」か
こういった「異変」を総合的に分析すると、米国株安/米ドル全面安の同時進行は、今までの相場環境の終焉を示唆するサインとして読み取れる。
言い換えれば、リーマンショック以降、リスクオン/オフが相場の基調を主導してきたが、FRBの政策転換に伴い、このような局面の終焉が近づいていると言える。
米ドルに関して、リスク回避先としての役割が薄れてきたことで、マーケットは通貨ごと、あるいは資産ごとのファンダメンタルズをより敏感に反映することになった。
ゆえに、法人税引き下げの有無に連動する米ドル/円、予想より強い経済指標に押し上げられる英ポンドの値動きも当然の成り行きである。
つまり、これからは「成長格差」がキーワードとなりそうで、昨日(8月15日)の米国株の反落と米ドル全面安の連動は、こういった転換局面における前兆と読み取れる。
■米ドル全面安は続かず、ユーロ/米ドルはトップアウトか
この見方が正しければ、これからは米ドル全面安の基調、やはり続かない公算が高い。何しろ、リスクオン/オフから成長格差にマーケットのキーワードがチェンジしていけば、もっとも強い回復基調を示す米ドルのほうがより選好される気運にあるからだ。
FRBが、QE縮小により自信を示せば、経済回復のシグナルと解釈される公算も高いから、米ドルを押し上げる要因となろう。言い換えれば、米ドル全面安の局面は一時的なものに過ぎない可能性が大きい。
この意味では、前述のように、ドルインデックスがメインサポートラインをこれから割り込み、米ドル全面安が続くというよりも、これがサポートされ、米ドル安局面が修正される確率が大きいとみる。
対照的に、繰り返し指摘してきたように、ユーロ/米ドルは、やはりすでにトップアウトしたか、これからトップアウトする公算が大きい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
目先、ユーロ/米ドルの切り返しはなお強いと見られるが、先週高値を更新できなければ、「最後のユーロ高」といった位置づけは不変だ。
■米ドル/円は振れ幅が縮小していきそう
米ドル/円に関しては目先、振れ幅が縮小していく可能性に注目したい。従来のトライアングルのレンジ範囲から、以下のように、新たに描かれたトライアングルの範囲に留まるではないかと思う。
(出所:米国FXCM)
円サイドでは、消費税、法人税といった政府の判断に関して、日銀の量的緩和継続の思惑と「第三の矢」の失速に関する思惑の綱引き状態にある。
その上、米ドル全面安局面が仮に終焉した場合、円よりもユーロのほうが受け皿を果たす可能性が大きいから、ユーロ/円などクロス円経由の円高圧力が存在する以上、米ドル/円の保ち合い相場、しばらく続くと思われる。
まとめてみると、前週(8月5日~)と同様、ドルインデックスの下げ局面はすでに最終段階に来ているといった判断は堅持できる。また、米ドル/円の保ち合い相場を想定しつつ、ユーロ/円の反落は従来の想定よりやや緩やかなスピードに留まる可能性がある。
そして、通貨ごとのパフォーマンスにシフトしていく相場において、引き続き売られすぎていた豪ドルの相対的優位性に注目しておきたい。
夏休み中につき、今回のコラムは短文にて失礼する。みなさん、よいバカンスを。
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