■1年を振り返ると「行って来い」の展開だった
2015年も残すところ、わずかとなりました。みなさんにとって良い1年でしたでしょうか?
1年を振り返ってみると、日本の株式市場も、年初来で見て多少上昇してはいますが、それほど勢いがあるわけではなく、行って来いの展開となりました。

(出所:株マップ.com)
為替市場も年間を通して見ると、あまり大きく動いていないという結果となっています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
■「わっしょい相場」は、もう期待できない
いろいろと原因があるとは思いますが、まず、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの公的資金による株買い・円売りが2015年の秋口で、ほぼ終わってしまったことが大きかったと思います。
【参考記事】
●9月米利上げの可能性は、まだ五分五分!この先、イケイケ相場にならない理由とは?(9月3日、今井雅人)
●FOMC後の相場の動きをシミュレーション!利上げは10月か12月へ持越しの可能性大(9月17日、今井雅人)
それまでの「わっしょい相場」は、ある意味、政府による官製相場であったので、これからは、もう、そういう期待ができないということを頭に入れておいた方が良いと思います。
【参考記事】
●日経平均2万円達成で官製相場も終盤に!?調整済みのドル/円よりユーロ/ドルに注意(5月7日、今井雅人)
■証券会社の相場予想は話半分で読んでおく理由
さて、今回は2015年最後のコラムとなりますので、2016年の相場展開について考えてみたいと思います。
年末になると、各金融機関やエコノミストなどが来年の予想を出してきます。それを見る時に、1つ気をつけておいてほしいことがあります。
金融機関、特に証券会社の予想に関しては、話半分で読んでおくということです。
証券会社は、株が売れないと業績が上がりませんし、外貨の商品を売るときも円安になってもらわないと、なかなか売れません。そのため、どうしても「株が上がる、円が弱くなる」という予想をする傾向があるからです。
私もかつて、銀行で円安になると有利になる金融商品を売るために、顧客向けに円安になるという話をお願いされたことがよくありました。へそ曲がりの私は、そのたびに「それはできません」と言って、銀行をよく困らせていましたが(笑)。
■あえて「2016年は、株安・米ドル安に向かう」と考えたい
その上で各専門家の予想を見ていると、「2016年は、さらに株が上昇する、さらに米ドル高が進む」という予想が大半を占めています。
米ドル高の一番の根拠は、2016年も米国が利上げを継続していくというものです。また、日銀がさらなる追加緩和をするので、円安が進むという見方もあります。
私は、みんなが同じことを言えば言うほど疑ってしまいます。相場の世界に長く生きてきて、みんなが同じことを言うと、逆のことが起きやすいということを肌で感じてきたからです。
そこで、あえて「2016年は、株安・米ドル安に向かう」と考えておきたいと思います。
■中国経済は2016年も低迷。原油価格も低迷。さらに…
1つ目の理由は、中国です。
ひと言で言えば、中国の経済は良くありません。先日講演をするために中国の経済指標をチェックし直しましたが、どれも不安だらけです。
特に電力使用量、鉄道貨物輸送量が減少していることが、とても気に掛かります。中国経済は2016年も低迷必至です。
そうなると、原油価格も低迷します。インフレ圧力が弱まり、米国の利上げペースは鈍くなるでしょう。

(出所:CQG)
■ハイイールド債はサブプライム全盛期の残高超え!
また、米国にはもう1つの問題があります。
それは、信用力の低いハイイールド債(※)の存在です。
(※編集部注:「ハイイールド債」とは、格付けのランクが低く、元本割れリスクが高い代わりに高利回りの債券のこと。ジャンク債などと、ほぼ同じ意味で使われる)
米国では低金利が続いていたため、高い金利を求めて信用力の低い債券に人気が集中しています。現在、その残高はサブプライムローン全盛の時のハイリスク債券の残高を超えています。
FOMC(米連邦公開市場委員会)が政策金利を上げていくと、これが暴落する可能性があります。すでに2015年12月にFOMCが利上げをした時、その兆候が現れました。
米国も、そう簡単には利上げをしていけないかもしれません。
【参考記事】
●ドル/円120円~121円台はなぜ買いなの?安易な新興国通貨への投資は止めよう!(12月17日、今井雅人)
■日経平均1万5000円、米ドル/円は110円もあり得る!?
日本もGPIFによる株高・円安マジックが剥げてしまった今、これからその流れを作る手段が見つからなくなっています。
もともと、株高・円安で無理やり景気を上げてきたわけですから、それがなくなると好循環も続かなくなります。中国経済低迷の影響も受けます。輸出は、それほど伸びなくなってくる可能性が高いと思います。
参議院選挙を控えていますので、2016年3、4月ぐらいには日銀がもう一度、追加緩和をするかもしれないので、前半は、株高・円安になるかもしれませんが、それ以降は流れが変わる公算が高いとみています。
日経平均も1万5000円、米ドル/円も110円…そこまでいくかはわかりませんが、あり得なくはないのではないでしょうか?

(出所:株マップ.com)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足)
年間の予想をするのは、なかなか難しいのですが、今のところはこう考えています。2016年になったら、流れを見ながら、この見方が正しいのかチェックし、必要があれば、修正をしていきたいと思います。
ただ、これだけは言っておきます。
「みんなが同じことを言い出している時こそ、気をつけなければいけない」
みなさん、良いお年を!!
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