■米ドル下げ一服、トランプ氏発言の影響は限定的
米ドル全体は下げ一服の様子を見せている。ドルインデックスが1月17日(火)安値100.26から切り返していることを重視すれば、米ドル高基調がなお維持され、場合によってはまた高値更新される可能性があるとみる。
(出所:Bloomberg)
というのは、1月17日(火)安値が重要な意味合いを持つからだ。
なにしろ、この日はトランプ氏が「米ドルは強すぎる」と発言し、これが米ドル全面安をもたらした。言い換えれば、米大統領が米ドル高を牽制することは一大事であるため、米ドルの急落も当然の成り行きだと思われる。
米ドル高を牽制する発言をしたトランプ氏だが、牽制するのが遅すぎたぐらいなのかも…? (C)Spencer Platt/Getty Images
ここでまず言っておきたいのは、トランプ氏が米ドル高を牽制するのは至って自然な出来事で、むしろ牽制してこない方がおかしいということだ。
いわゆる「トランプ・ラリー」がかなり米ドル高を推し進めてきたことから、「トランプ氏が安倍政権と密約、米ドル高を牽制してこない」といった怪しすぎる観測が日本の一部市場関係者に語られたことは、笑止千万と言うほかあるまい。
保護主義を全面的に打ち出し、また、米製造業の復活を声高に主張するトランプ氏の政策からして、今まで米ドル高を牽制しなかったこと自体がおかしいほどだ。
要するに、米ドル自体が本当に高すぎるかどうかは問題ではなく、トランプ氏の立場からみると、強い米ドルよりも弱い米ドルの方が都合がよいわけだ。
しかし、米大統領のごく「自然」な発言があっても、それをもってマーケットにおけるトレンドを完全に修正できるかと聞かれると、答は明らかにノーだ。ないしろ、いわゆる「高官発言」のみで、マーケットの内部構造をチェンジできた前例はないからだ。
■トランプ氏の米ドル高牽制は米ドル反落のクライマックス!?
前回のコラムでも強調させていただいたように、米ドルの反落は今年(2017年)から始まったものではなく、実は昨年(2016年)12月15日(木)あたりからすでに展開されてきたわけだから、トランプ氏の発言をもって米ドル安の始まりと捉えるのではなく、むしろ、米ドル反落のクライマックスを示唆するサインとして受け止めるべきだと思う。
ドルインデックスの時間足で検証すると、1月17日(火)のトランプ氏の発言がもたらした下落幅は147pipsぐらいで、それ以前の223pipsや252pipsの下落幅に比べ、むしろ縮小していた。
【参考記事】
●ドルのスピード調整はもう完了したのか? 「風見鶏たちの変節」を観察せよ!(2016年1月12日、陳満咲杜)
(出所:Bloomberg)
だから、トランプ氏の米ドル高牽制で米ドル安が止まらない…
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