■米ドル/円は115円のオプションが壁になった
先週のコラムでは、「どうやら、米ドル/円の115.00円に大量のオプションがあって、短期筋が買い仕掛けをしたのをブロックしてしまい、買い手が投げさせられてしまったということのようです。2月17日(金)には、このオプションもかなり行使期限が来るようですので、その後、米ドルが上昇する可能性は高いのかなと考えています」と見通しをお伝えしました
【参考記事】
●利上げ期待高まって上昇した米ドル/円。けれど、115円手前で失速した理由とは?(2月16日、今井雅人)
しかし、オプションの行使期限が到来した17日(金)には、米国の3連休を控えたNY勢から、ロングポジションの調整売りが断続的に持ち込まれ、結局、米ドル/円は112.619円まで値を下げる結果となってしまいました。

(出所:Bloomberg)
米ドル/円は15日(水)に115.00円をトライしましたが、最近では最大級ともいえるドルコールオプションの存在が、いくら強い米指標が出ようとも、いくら米長期金利が上昇しようとも、そして、いくら米ドル/円を買おうとも、まだまだリスク嗜好が高まっていない現状の為替市場において、開けることができない頑丈な蓋となってしまったわけです。

(出所:Bloomberg)
■FOMCメンバーは3月利上げの可能性を示唆
この目先のロングポジションによって、週末の17日(金)までポジション調整を余儀なくされることになりました。
そんな状況のなか、今週(2月20日~)、米国の3連休明けの21日(火)、東京市場では注目される動きがみられました。
朝方から米ドル/円に「本邦実需勢」の「腰を据えた買い」が断続的に観測されるなか、ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁の「3月利上げは排除しない」との発言が飛び込んでくると、連休明けの短期投機筋も買い出動。
下押しらしい下押しもないまま、米長期金利の上昇とともに、日経平均と米ドル/円の買いが続くことになりました。

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
ハーカー総裁といえば、今年のFOMC(米連邦公開市場委員会)投票メンバーのなかでも「タカ派」で知られていますが、市場では「具体的な時期に言及したことはサプライズ」との声も聞かれています。
■近い将来の利上げは確かだが、目先はレンジ相場か
しかしながら、市場の3月FOMCでのFF金利引き上げ確率は一向に上がってきていません。実は翌22日(水)にも、FOMC議事要旨(1月31日~2月1日分)が公表されましたが、「多くのメンバーがかなり早期(fairly soon)の利上げを予想している」ことが判明しています。
さらに、FOMC議事要旨公表前にはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)理事が講演で「3月利上げの可能性はある」との見解を表明しました。
FRB理事というのは、通常ではこういった具体的な発言は意識して避けているものですが、あえて「3月利上げ」に言及したということは、FOMCの執行部が、いまだに織り込まれていない利上げのコンセンサスを、市場にとらせようとしている可能性もあります。
いずれにしても、近い将来に「利上げ」を行おうとしていることは確かです。いつ引き上げるかは、今後の経済データ次第であることも明らかですが、22日(水)現在で34%程度である3月利上げ予想確率の推移や米長期金利の動向をにらみながら、米ドル/円は神経質な動きを続けざるをえないのではないでしょうか。

今週(2月20日~)の米ドル/円は、これまで112.781円から113.779円と約1円のレンジを、22日(水)のNY市場のような乱高下を繰返しながら推移しています。もうしばらく、方向性をつかめるようになるまで、目先はレンジ相場と割り切って見守っていきたいと思っています。

(出所:Bloomberg)
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