■武田薬品、シャイアー買収額提案を7兆円に引き上げ
ただ、この論議の前に、今回の米ドル/円の上昇には、某日本企業による巨額買収に関するマーケットの思惑が影響しているとの見方もあります。
それは、武田薬品の大型買収。
今週(4月23日~)の金融業界は、下記の武田薬品の大型買収案に揺れています。
アイルランドの製薬大手シャイアーは24日、武田薬品工業の買収提案を受け入れるよう株主に推奨する意向を明らかにした。武田は同日、シャイアーに対する5度目の買収提案で、提示額を460億ポンド(640億ドル)に引き上げていた。
英規制当局の規定により、武田はシャイアーに対し25日午後5時(日本時間26日午前1時)までに正式に買収意思を表明する必要があった。
シャイアーの発表によると、同社はこの期限を5月8日まで延長することに同意した。これにより、武田はさらなる資産評価(デュー・デリジェンス)を重ね、買収提案を補強することが可能になる。
シャイアーはまた、必要に応じて期限を再度延長することも可能だとした。
同社は、買収合意にはまだ解消すべき課題がいくつかあるとし、それにはシャイアーによる武田の資産評価手続きの完了も含まれると明らかにした。
出所:ロイター
シャイアーは、希少疾患の治療薬に強いと言われています。
売上高は、武田とほぼ同規模である一方、時価総額では武田を大きく上回ります。
買収が実現すれば、武田は日本企業として初めて、世界の製薬企業の売上高トップ10に入る模様。
1株あたりの買収価格は、4月21日(土)の47ポンドから2ポンド上乗せされ、49.01ポンド。詳細は、以下のとおりです。
シャイアーも同社の取締役会が株主に対して修正提案を受け入れるよう求める方針であることを武田薬に伝えたと発表した。両社の発表資料によると、直近の提案内容は、株式による支払いが27.26ポンド(56%)、現金21.75ポンド(44%)となる。武田薬が買収の検討を公表する前日(3月27日)の同社株の終値に60%の上乗せとなる。
買収が実現すれば、日本企業による外国企業買収としては過去最大規模になる。武田薬は先週、金額を引き上げ、現金支払いの割合を増やす提案を出していた。
(出所:Bloomberg)
まだ暫定合意なので、資金調達に関してはもちろん不透明。ただマーケットのウワサでは、英ポンド/円の買いが2~3兆円出るのではないかといわれています。
本件に関して、今後の注目点をまとめると、以下のとおりです。
(1) 武田薬品の株主の動向
(2) 武田薬品・シャイアーの資産査定
(3) 株式交換の価値に関する問題
(4) 対抗的な買収の動きが出るかどうか
(出所:Bloomberg)
まだ暫定合意ですが、買収が成立すれば、マーケットにインパクトを与えるには充分な金額です。
現在のマーケットの話題は、米10年債利回りが3.00%を超えても米国株が堅調さを維持できるのか、つまり、ゴルディロックス(※)相場が継続できるのかどうか、ということが中心。
(※編集部注:ゴルディロックスとは、過熱もしすぎず、低迷もしていない状態のこと)
しかし、上述のとおり、今回の買収劇の金額は巨大であり、その資金調達が為替マーケットに少なからず影響を与える可能性が高まっています。来月(5月)にかけて、武田とシャイアーの大型買収の報道、そして、英ポンド/円の行方に注目です。
※【お知らせ】来週5月3日(木)の「ヘッジファンドの思惑」は、休載させていただきます。何卒ご了承ください。
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