■中国株大幅安につれ、日本株が下落した真の理由とは?
本日(7月6日)から、米国の対中関税制裁が実施された。米中貿易戦争がいよいよ「実戦」の段階に突入し、世界金融市場に引き続き打撃を与えている。
中国の大幅株安につれ、日経平均も昨日(7月5日)、一時2万1500円割れとなり、4月上旬以来の安値を更新した。
(出所:Bloomberg)
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米国株も芳しくないが、総じて日経平均の方がよりチャイナリスクに敏感で、また変動率が大きかったのも、仕方がないことかと思う。
というのは、日本の株式市場においては外国人の売買シェアが大きく、また、彼らは中国本土の株式市場にフルアクセスできないため、日経225などの先物取引を通じて、いわゆるチャイナリスクを日本株でヘッジするニーズがあるからだ。日本株の売りも当然の成り行きだと思われる。
一方で、こういった言い方はあくまで表面上の理由にすぎない。本質的には、市場は思惑で動くものなので、米中対立やチャイナリスクの懸念が市場のセンチメントを支配している以上、仕掛け的な売買で変動率を拡大させ、利益を計上するのが、ヘッジファンドなど投機筋の得意技といえる。
換言すれば、「上海株の暴落が日本の景気を押し下げる恐れがあるから日本株売り」といったまじめなロジックが正しいかどうかは別問題として、「上海株を材料として日本株を空売りして儲ける」といった発想に基づく取引が行われており、これが日本株下落の直接の原因に違いない。
■「2015年のチャイナショック再来」とはなっていない
しかし、日本株下落と円高の同時進行という、「セット」になる現象は、今回鮮明になっていない。場合によっては逆の現象に見える場合もあった。すなわち、上海株につられ日経平均も急落したが、円は逆にやや売られる程度で、リスクオフの円高という状況にはほど遠い、ということだ。
(出所:Bloomberg)
前回のコラムでも指摘したように、中国株のみでなく、中国人民元暴落の視点からみても同様である。今回の暴落は、実は、あの人民元ショックと言われる2015年よりも深刻な事態になっているが、2015年のように先進国の金融市場を巻き込んだ大混乱はみられていない。
【参考記事】
●人民元急落でも市場が落ち着いているのは米中貿易戦争が幕開けにすぎないから!?(2018年6月29日、陳満咲杜)
日本株の下落も、値幅がやや大きいが、ショックと言われるほどではなかろう。ここはやはり、大きなポイントだと思う。
よくある話だが、上海株や中国人民元の暴落で日本株が連れ安になったので、いずれ円も大きく買われるだろうといったロジックもある。しかし、このようなロジックは、どちらかというと素人の発想にすぎないから、あまり鵜呑みにすべきではない。
なにしろ、国際金融市場は同時進行なので、何らかの因果関係があって、事後的に反応することは、まずありえない。
仮にこれから実際、円高になっていくとしても、それはまた他の材料や思惑、または市場の内部構造に起因するもので、すでに大きく進行してきた他の市場の値動きに今さら反応、また追随してくることはありえない。
となると、米中対立や中国株安、中国人民元安に“つられた”日本株と…
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