■英ポンドが急速に買い戻されているワケとは?
たしかに、英ポンド/米ドルは先週(1月14日~)まで5週連続上昇。
昨年(2018年)後半から、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])を筆頭に、「合意なきEU離脱」についてのレポートが大量に報道されたため、マーケットには、ヘッジ目的の英ポンドのショートポジションがかなり残存している模様。
しかし、今月(1月)中旬に「合意なきEU離脱」懸念は大きく後退。
基本的に、英ポンドに対して極めて弱気なスタンスを崩さないロンドンの金融機関の友人も、現時点での「合意なきEU離脱」の可能性は10%ぐらいまで後退しているとの意見。
マーケットにはこうした見方が増えてきているため、オーバーヘッジになっている英ポンドのショートポジションをある程度買い戻す必要が生じており、それが英ポンドの急速な買い戻しにつながっているようです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 週足)
結果、1月3日(木)に131.70円まで急落した英ポンド/円は、本稿執筆時点で、143.54円まで急回復。わずか3週間で12円弱反発しています。
12月13日のコラムでも触れましたが、英ポンドは「合意なきEU離脱」の可能性がある限り下値余地も大きいのですが、そのリスクが後退した場合の大きな上振れリスクがあります。
【参考記事】
●保守党の不信任投票を乗り切ったメイ首相。再び問題山積みのBrexit交渉最前線へ…(12月13日、西原宏一)
本稿執筆時点での、英ポンド/米ドルの高値は1.3094ドル。200日移動平均線が1.3069ドルに位置しており、いったんレジスタンスとなっています。
(出所:Bloomberg)
ただ、ここを終値ベースで上抜けると、英ポンド/米ドルの上値余地はさらに拡大します。
■英ポンド/円が米ドル/円の方向性に大きな影響
もっとも、デマーク(※)インディケーターは、昨年(2018年)末から英ポンド/米ドルの反発を示唆しており、ファンダメンタルズがインディケーターのサイン追いついてきた展開。
(※編集部注:「デマーク」とはTDシーケンシャルなどのテクニカル指標を開発したトーマス・R・デマーク氏のこと)
この英ポンドの上昇、特に対円である英ポンド/円の動向は、米ドル/円の方向性に大きな影響を及ぼすので要注意です。
たとえば、2015年から2016年の英ポンド/円は約75円もの暴落を演じています。
その局面での米ドル/円は、英ポンド/円に追随する形で25円急落しています。
【参考記事】
●Brexitの影響により1年で約67円暴落したポンド/円が反発! 米ドル/円への影響は?(2016年9月8日、西原宏一)
仮に、「合意なきEU離脱」懸念がさらに薄れ、英ポンド/円の買い戻しが一段と加速すると、米ドル/円はいったん高値圏でのもみ合いになる可能性が高まるため、今後の英ポンド/円の動向には要注目です。
■ブレグジットが絶好の買い場となる時…
ゴールドマン・サックスのみならず、ウォール・ストリート・ジャーナルの市場担当シニアコラムニストも、昨年(2018年)12月に「ブレグジットが絶好の買い場となる時」というコラムを寄稿しています。
ブレグジットが絶好の買い場となる時
英国については、政治的な不確実性と変動の大きさを背景に投資不適格との警告が多く出されている。
しかし、筆者の考えでは、ハードブレグジットの可能性は極めて小さい。もしハードブレグジットが起きれば、英ポンドは急落し、ロンドン株式市場の国内関連株は、経済の破綻を恐れる投資家の売りで暴落するだろう。しかし、もし何らかの「ソフト」なブレグジットでの妥協や、ブレグジットの全面的放棄が実現すれば、懸念解消とともにポンド相場は上昇し、国内株は反発するだろう。
出所:WSJ
「合意なきEU離脱」の可能性が後退したことにより、英ポンド/米ドルの上値余地は大きく拡大。
ただ、可能性は極めて低下したとはいえ「合意なきEU離脱」というテールリスクがあることは変わりませんので、英ポンドのトレードは慎重に行いたいところ。
米ドル/円に代わって主役に躍り出た英ポンドの動向に注目です。
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