■英ポンドの一段高もテクニカル的には当然の結果
先週(1月18日)のコラムで、英ポンド高のワケを市場自体のサインをもって解釈したが、今週(1月21日~)の英ポンドの一段高も想定内で、ロジック的には当然の結果とみる。
前回(1月18日)のコラムでも指摘したように、プライスアクションの視点では、先週(1月14日~)のチャートは2018年~2019年の年末年始の週足と同様、強気「アウトサイド」または「リバーサル」のサインを点灯していたから、今週(1月21日~)の続伸がもたらされたと解釈できる。
【参考記事】
●EU離脱案が歴史的大差で否決されたのになぜ、英ポンドは上昇しているのか?(2019年1月18日、陳満咲杜)

(出所:FXブロードネット)
この意味では、強調してきたように、2018年年末~2019年年始のサインを重視すれば、英議会によるメイ英首相のEU(欧州連合)離脱案の否決で、逆に英ポンドが買われたことに大したサプライズを受けずに、流れに乗れただろう。要するに、相場のことは相場に聞くべきである。
■想定外の英ポンド高は「リスクオフムードの行きすぎ」を示唆
テクニカルの意味合いはここまでだが、巷の「常識」、また、市場の「コンセンサス」に反した今回の英ポンド高は、より大きな示唆を与えてくれていると思う。
それはほかならぬ、「市場におけるリスクオフのムードが行きすぎであった」ということだ。今回の英ポンド高はこれを暗示していたと読みとれるのではないかと思う。
昨年(2018年)10月以降の株式市場の総崩れは、米中貿易戦争など多くのリスク要素がもたらした結果と解釈されるが、その正誤はともかく、すでに浮上したリスク要素やこれから浮上し得るリスク要素を株価はもう十分織り込んでいたのではないかと思われる。
過度な弱気は強気の始まりとも言えるから、多くの市場関係者にとって「想定外」の英ポンド高は、こういった市場センチメントの転換の始まりを示唆しているのではないかと思う。
つまるところ、確かにこれからの市況は、英EU離脱や米中貿易戦争の行方によってまた大きく左右される可能性が大きいが、マーケットはすでに最悪の結果を想定して値段を形成していたから、その織り込みで値動き自体は「行きすぎ」だった可能性が大きい。ゆえに、株安・円高のピークは、すでに過ぎたのではないかとみる。
そもそも、為替市場における2019年年初早々のフラッシュ・クラッシュは、投機筋による仕掛け的な側面が大きかったから、その値動きのすべてをリスクオフの流れとして解釈するのも限界がある。
日経平均の値動きでおわかりいただけるように、フラッシュ・クラッシュで形成された一時の「超円高」は、日経平均を押し下げたものの、それはかなり限定的なものだった。目先みられる米ドル/円と株価の修正(リバウンド)は、過度な弱気心理自体の修正と言える上に、日経平均の下げが限定的だったことは為替市場の値動き自体があくまで一時の行きすぎだったことを証左していると思う。
■2019年年始の「スパイクロー」が円高のクライマックス
このロジックで考えると、米ドル/円とクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の多くで、2019年年始に形成された「スパイクロー」(下ひげ風のローソク足)が円高のクライマックスと考えられ、目先まで続く反騰はむしろ当然の成り行きと受け止める。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
この意味では、リバウンド自体が一気に進み、円安トレンドへ早期回復するとは思わないものの、行きすぎた円高への修正という視点では、目先続く米ドル/円のリバウンド自体は「正当化」できる値動きだと思う。
■英ポンド/円はサインどおりに上昇
当然のように、主要クロス円の中では、英ポンド/円のパフォーマンスが一番目立つ。英ポンド/米ドルと同様、英ポンド/円のリバウンドも事後的なファンダメンタルズの解読より、プライスアクションのサインから想定しやすかったので、1月17日(木)のレポートをもって説明したい。以下は本文。
ポンド/円は切り返しの余地を拓いているかと思う。昨日の高値、昨年11月高値を起点とした全下落幅の38.2%反騰位置(約140.65)を打診、またGMMAにおける抵抗ゾーン(長期線グループ)に一旦トライ、目先の軟調のように、切り返しを完成させた疑いもあるが、昨日安値を下回らない限り、幾分上値余地を更に拓けるかとみる。
もっとも、3日のクラッシュ以降、ほぼ切り返しを継続してきたが、15日英議会離脱案審議や否定で作った足型がもっとも大きなサインを点灯していた。同サインの点灯に鑑み、目先の上値打診がまだまだ初歩段階に過ぎず、目先の抵抗ゾーンを一旦ブレイクがあってもおかしくないと推測される。
15日の安値、7日以来の安値をすべて一旦下回ったにもかかわらず、終値が高く、また当日高値が2日高値を一旦超えていたから、強気「リバーサル」や「アウトサイド」のみでは、事実上の「フェイクセットアップ」のサインとして読み取れる。同サインに対する理解が正しければ、これから年初来高値更新を図り、昨年11月高値を起点とした全下落幅の半分戻し(約142.75)に照準できるかとみる。もちろん、打診があっても紆余曲折が想定され、一直線なトライも容易ではなかろう。この意味では、目先の反落を同シナリオの一環と見なす。
その後の値動きは、下のチャートで示したとおり。「フェイクセットアップ」のサインが効いた上に、その後、「インサイド」のサインを形成し、上放れを果たして目先の高値打診につながったわけであり、英ポンド高の可能性は高かった。
(出所:FXブロードネット)
■米ドル/円の頭打ちは後ズレする公算大
クロス円の英ポンド/円は、英ポンドの切り返しのみでなく、米ドル/円のリバウンドにも依存することは言うまでもないが、現時点の米ドル/円は、1月17日(木)の英ポンド/円に似ているところが多い。
結論から言えば、米ドル/円の頭打ち、また、反落を予想する声が多いが、筆者は一段高の可能性が大きいのではないかとみる。
換言すれば、米ドル/円の頭打ちは早晩みられるとみるものの、それは今ではなく、後ズレする公算が高い。この辺の検証はまた次回、市況はいかに。
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