
(「みんなまだ知らない中国人民元の謎に迫る! 第1回 米中貿易戦争激化で大儲けする方法」からつづく)
前回に続き、ネコ井口こと、ザイFX!編集長の井口稔がトレイダーズ証券の為替ディーラー・井口喜雄さんに中国人民元のことを根掘り葉掘り聞く企画の第2回。
前回記事公開後の8月1日(日本時間の8月2日)、トランプ大統領が対中追加関税についてツイートし、金融市場は一気にリスクオフへ。中国人民元/円は大きく下落して、まさに井口喜雄さんが前回予想していた展開に!
今回も「ある指標で見ると中国人民元が5割も割安」とか、「中国共産党の一党支配がもし終了したらものすごい中国人民元高に!」とか、「中国人民元/円のスワップポイントは高い?」といった気になる話題が続々!

■購買力平価で見ると中国人民元は5割ぐらい安い!?
ここまでお聞きした話からは今の中国人民元/円は「売り」のチャンスがある通貨ペアなのかと感じていました。「買い」でも良いとはどういうことでしょうか? 何かほかに、おもしろいネタでもあるんでしょうか?
将来的な話をすると、米中貿易戦争が終わったあと、いずれ中国人民元の自由化という話が出てくると思うんです。
購買力平価で見ると、対米ドルで中国人民元は5割ぐらい安いと言われています。
えっ、そんなに安いんですか!?
実はそうなんですよ。

各通貨の持つ購買力が等しくなるように為替相場は決まるという考え方が購買力平価説。実際の為替相場は短期的には必ずしも購買力平価のとおりには動かないが、長期的には為替相場は購買力平価に収れんしていくとされる。そして、購買力平価の考え方でいくと、現在の中国人民元は米ドルに対して5割ほど安い水準にある
(出所:OECDとBloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
【購買力平価に関する参考記事】
●JPモルガン・佐々木融さんに聞く(1) なぜ、「弱い日本の強い円」なのか?
●東海東京証券・佐野一彦氏に聞く(1) マイナス金利政策はムダ。ドル/円90円台へ
●リーマン・ショックにアベノミクス相場! プレイバック、平成30年間の米ドル/円相場
今のところ、中国は米国から為替操作国には認定されていませんが、関税発動合戦の中、中国当局が中国人民元安方向に誘導している面が実際あると思います。そこに焦点が当たり、米国をはじめとして、世界中から中国はプレッシャーをかけられる局面がやってくるのではないでしょうか。
日本のプラザ合意の話をすると大げさになりますが、そこまでいかなくても、いずれ中国も中国人民元安から中国人民元高方向へ修正しないといけない局面がくると思います。
【プラザ合意と中国人民元に関する参考記事】
●松田哲さんの人民元相場大予想! 第2のプラザ合意で1ドル=2元割れが来る!?
現在、中国の政策金利は4.25%です。
世界的に低金利の状況にあって、世界第2位の経済大国である中国の金利は結構高いわけです。今後、中国人民元が十分安くなったところで今度は中国人民元/円を買って長期保有すれば、インカムゲインもキャピタルゲインも狙えると考えています。

今後、中国人民元が十分に安くなったところで中国人民元/円を買って長期保有すれば、インカムゲインもキャピタルゲインも狙うチャンスがあると話す井口氏。これは、狙い目かも…
あるいは余裕資金を使って、徐々に買い増していくような長期プランであれば、今すぐ中国人民元を少し買ってもいいのではないかとも思います。
なるほど、中国人民元は米中の政治経済の状況や自分の投資スタンスなどによって、売りでも買いでも自在に取引すればいいというわけですね。
はい。前回お話しした「中国人民元はツールとして使える」というのは、そういうことなんです。
【前回記事】
●みんなまだ知らない中国人民元の謎に迫る! 第1回 米中貿易戦争激化で大儲けする方法
■「中国経済は崩壊する」というシナリオは実現する?
ただ、仮に中国人民元に長期投資するとなると、ちょっと気になることもあります。「中国経済は崩壊する」といった話がずっと昔から言われているじゃないですか。そのような説についてはどうお考えですか?
「中国経済は崩壊する」ということはもう10年以上、言われているんじゃないでしょうか。でも、一向に崩壊する気配は見えませんね。不動産バブルが局地的に弾けたりしているところはあると思いますが、中国全体が崩壊するということはちょっと想像しにくいです。
中国経済は6%台の実質GDP成長率が徐々に下がっていって、ソフトランディングしていく可能性が高いと考えています。
「中国経済の減速」という言葉がよく聞かれますが、それでも実質GDP成長率は6%台。絶対的な数字はずいぶん高いですよね。近年の日本の実質GDP成長率は、すごくいいときで2%に届くかどうかというところですからね~。

(出所:Bloomberg)
■中国共産党の一党支配が終了したら大チャンス!?
そうなんですよね。逆に聞いてみたいんですが、中国経済が崩壊するというと、どんなシナリオが考えられると思います?
う~ん、どうでしょうね…………。中国経済の崩壊になるかはわかりませんが、中国が大混乱するということなら、中国共産党の一党支配が終了するということが究極的な可能性としては一応ありますかね~。今、香港で起こっているような騒動が中国全土に飛び火するといったような…。ただ、今すぐとか、近い将来にそれが起こるとまでは思いませんが…。
確かにそれは怖いシナリオかもしれませんが、逆におもしろいことになるかもしれませんよ。
おもしろいって、いったい、どういうことですか!?
そのときは中国人民元が完全な自由変動相場制になるかもしれないからです。
先ほども言ったとおり、今の中国人民元は購買力平価から見て、かなり割安と言われています。当局の支配がなくなり、自由変動相場制になれば、ものすごい中国人民元高になるんじゃないでしょうか。大チャンスです。

(出所:OECDとBloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
だから、中国人民元が取引できるFX口座を1つは持っておいた方がいいと思いますよ。

現在の中国人民元は購買力平価から見て、かなり割安だと話す井口氏。中国人民元が取引できるFX口座を1つは持っておいたほうがいいとアドバイスしている
(次ページでは、「中国人民元/円のスワップポイントはFX会社によって10倍もの差がある」といった話題が…)
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