■ブレグジットは2020年1月末に延期
市場が注目している材料は、米中の通商交渉とブレグジット(英国のEU離脱)になりますが、先週(10月21日~)もまた、動きが出てきています。
まず、ブレグジット問題に関しては、10月31日(木)が離脱期限とされていましたが、EU(欧州連合)はこれを、2020年1月末まで延期することに合意しました。
【参考記事】
●採決先送り! 英EU離脱期限は2020年1月末まで延期へ? ポンドの下落余地は限定的に(10月21日、バカラ村)
●合意なきEU離脱と英ポンド暴落懸念は、ほぼ消滅か。ブレグジットは新局面へ…(10月24日、西原宏一)
●【英EU離脱】可決でも否決でもなく採決見送り!? ジョンソン首相に秘策はある?
そして昨日(10月28日)、ジョンソン首相は12月12日(木)に総選挙を実施する動議を提案しましたが、3分の2の賛成を得ることができず、否決されました。
EUは2020年1月末までの離脱延期で合意。ジョンソン首相は12月12日に総選挙を実施する動議を提案したが、議会で否決された (C)Justin Sullivan/Getty Images
ジョンソン首相は、12月総選挙実施の提案を改めて行うと表明していることもあって、英ポンドはまだ落ち着いた動きをしていますが、これからも紆余曲折あることが予想され、ヘッドラインで英ポンドは乱高下することになりそうです。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
■米株価は史上最高値。米ドル/円は109円台へ
10月24日(木)は、ペンス米副大統領の演説がありました。
去年(2018年)の演説では、中国に対して強硬姿勢を表していたこともあり、今回も同じような発言が出るのではないかと、市場参加者も身構えていました。
ただ、強硬姿勢は維持していましたが、目立った発言もなく、無風での通過となりました。
強硬派のペンス副大統領が、激しい発言を抑えたこともあって、市場には安心感が広がりました。さらに翌日(10月25日)には、米中閣僚級電話会議があり、「第1弾合意の成立が近づいている」との発言もあったことから、金融市場はリスク選好へ。
10月28日(月)には、トランプ大統領が、「中国と大きな合意に署名する見通し」、「予定は前倒し」と発言したこともあり、米中の通商交渉への懸念が緩和され、S&P500は史上最高値を更新してきました。
(出所:Bloomberg)
米ドル/円も、109.03円まで上昇しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
■トランプ大統領、対中関税を延期!?
トランプ大統領は、株価を気にしている大統領と言われており、来年(2020年)の大統領選で再選するために、株価の水準を維持してくる可能性が高いのではないかと思います。
12月15日(日)に中国への追加関税が予定されていますが、もしこれが発動されるようであれば、クリスマス商戦への影響が大きく出てしまうため、この関税も延期される、というのが市場の見方になってきています。
2020年の大統領選で再選するために、トランプ大統領は株価の水準を維持してくる可能性が高いとバカラ村氏は予想している (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
■FOMCは利下げへ。注目は12月の動向
今週(10月28日~)のイベントとしては、FOMC(米連邦公開市場委員会)や日銀金融政策決定会合、経済指標の発表(米GDP・米雇用統計・ISM製造業景気指数)などがあります。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FOMCとは? 米国の政策金利FFレートやイベントのスケジュールを徹底解説!
●GDPを見ればその国の景気がわかる! 実質・名目の違いは? 個人消費にも注目
●米雇用統計は、FXトレーダーなら知らない人はいない、月に一度のお祭り的イベント
●ISM製造業景気指数とは? 米国の景気を占う先行指標!? 非製造業部門にも注目!
株式市場は最高値も更新し、通常であれば、FOMCで利下げをする必要はなさそうな状況ですが、すでに市場が0.25%の利下げを織り込んでいることもあって、ここで利下げをしなければ株価が急落することになるので、今回も利下げはされるものと思います。
注目すべきは、12月のFOMCでも利下げをするのか、据え置きなのか、というところでしょう。
※フェデラル・ファンドレートの誘導目標レンジ上限を掲載
※FRBのデータをもとにザイFX!が作成
今の状況から考えると、据え置きになると思いますので、そうなると、株式市場にはよくありませんが、市場はすでに、そのことも織り込んでいると思います。
そのため、FOMCで乱高下はするものの、大きな方向性はつかないと思います。
【参考記事】
●利下げほぼ確実…米株はバブルの可能性!? 英ポンド/米ドルは1.40ドルがターゲット?(10月28日、西原宏一&大橋ひろこ)
もし、一時的に株価が下がり、すぐに買われるような動きとなれば、押し目買いを待っていた人が多いということでもあり、さらに、季節性から株価は上昇しやすいときでもあるので、そのような動きが出てくるようであれば、追いかけてもいいのではないかと考えています。
■今週もリスク選好の展開を想定
今週は、重要な経済指標の発表も多いですが、11月1日(金)の米雇用統計に関しては、米大手自動車メーカー、GM(ゼネラルモーターズ)のストライキの影響で悪い数字が出てくる可能性があります。
ただし、あくまでストライキの影響ですので、実際に悪い数字が出ても、その動きは継続しないと思います。
これまでリスク回避の材料は、ブレグジット問題・米中の対立・中東情勢などがありましたが、それらの懸念は後退しており、各国中銀が金融緩和をしていることもあって、リスク選好の動きとなっています。
株式市場も最高値を超えてきていますので、今週(10月28日~)も引き続き、リスク選好で考えています。
【参考記事】
●採決先送り! 英EU離脱期限は2020年1月末まで延期へ? ポンドの下落余地は限定的に(10月21日、バカラ村)
■クロス円の買い。利下げ観測のNZドルも上昇か
為替市場では、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の買いということになります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
NZドル/円の上昇は、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])の利下げ観測もあるため勢いがないものの、それも含めて、まだクロス円は上昇する可能性があると考えています。
【参考記事】
●英ポンドは1.30ドル? それとも1.15ドル? ここからはオセアニア通貨もおもしろそう(10月15日、バカラ村)
(出所:TradingView)
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