■ドル/円の下落はシナリオ変更するほどの値動きではない
FOMC(米連邦公開市場委員会)に日銀会合、その後、米中貿易合意に関するウワサなど材料が多く、昨日(10月31日)の為替マーケットはまた波乱となった。とはいえ、基本的には想定の範囲内、あるいは許容範囲内の値動きなので、メインシナリオは変わらない。
メインシナリオは今まで繰り返し指摘してきたとおり、「米ドル全体(ドルインデックス)は反落する一方、米ドル/円は堅調、そして主要外貨の対米ドルでの切り返しが続くから、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)はブル(上昇)トレンドへ復帰」といったところだ。
昨日(10月31日)、米ドル/円は大きく反落してきたが、メインシナリオを否定するほどの値動きではないことを、まず記しておきたい。

(出所:Bloomberg)
FOMCの利下げや日銀政策据え置きはほぼ予想どおりだったので、大げさに解釈する必要はないかと思う。声明文やらFRB(米連邦準備制度理事会)議長や日銀総裁の発言をいちいち取り上げ、言葉のニュアンスの分析をもって政策見通しに充てる一部市場関係者の見方も、違和感が大きい。
つまるところ、過度な解読や解釈は不要で、マーケットのメイントレンドをしっかりフォローしていけば、ベストな判断につながるはずだと思う。
■米国株はすでにバブル? それとも続伸?
たびたび指摘してきたように、2009年底値から米国株は一貫してブルトレンドを保ち、また、昨年(2018年)からたびたび高値波乱を繰り返し、特に昨年(2018年)夏から年末までの反落が大きかったから、米国株の頭打ち、またベア(下落)トレンドへの転換を予想する声は多かった。
しかし、昨日(10月31日)、S&P500が再度史上最高値を更新し、再び悲観論者らの見方を否定したようにみえる。

(出所:Bloomberg)
ここまでくると、ベア派集団内部でも分裂が始まった模様だ。一部は従来の見方を改め、一転して「米国株バブル」論に転向、残った者の多くは一層論調を強めた。
言い換えれば、米国株の高値更新があればあるほど、ベア派の方々は「より危険なレベルに達している、だから歴史的な大暴落は必至」といった自らの判断に、逆に自信を深めているようだ。
相場の本質は不確実性にあり、また将来に関する断定は誰もできないが、少なくともベア派の多くはここ数年同じ論調を繰り返し、それによって「受難」してきたのが事実である。
その上、トレンドフォローの視点では、米国株は頭打ちよりも続伸していく確率が高いことも確かなので、米国株がベアトレンドへ転換するサインを待ってから、弱気に転換しても遅くないかと思う。
より本質的には、マーケットにおいてベア派の視点を持つ市場関係者が多く、また、米国株の続伸に疑心暗鬼の方が多数存在しているからこそ、米国株には続伸の余地があり、ブルトレンドを伸ばしていけるかと思う。
昨年(2018年)からウォール街大手のレポートを読み漁ってきたが、90%以上が「米国株バブル、大逆転必至」の論調だったことに照らして考えると、目先ブルトレンドはまだ続く公算が高いと思う。
■S&P500はどちらに動くか微妙な位置にある
ただし、一番強いS&P500でさえ、テクニカルのみの視点でも、今の位置は非常に微妙であることも併記しておきたい。
S&P500の週足をみればわかるように、高値更新したとはいえ、2018年1月高値から引かれたレジスタンスラインをなおブレイクできず、また2018年年末安値から引かれたサポートラインと合わせてみると、大型上昇ウェッジを形成した可能性もある。

(出所:Bloomberg)
上昇ウェッジというフォーメーションは、往々にして反落を暗示するケースが多いから、上値突破に失敗した場合は大きな波乱となってくるリスクが暗示されている。
【ウェッジに関する参考記事:FX初心者のための基礎知識入門】
●保ち合いはトレンド継続中の休息期!? トレンド相場の再開に乗り遅れるな!
当然のように、レジスタンスラインを突破できた場合は、前述のフォーメーションの可能性を否定し、逆に一段と大きく上昇余地を拡大できるので、米国株は本当のバブル期を迎えるかと思われる。
いずれにせよ、米国株は重要なポイントに到達しており、ここから上放れするかどうかを見極めるべきだが、ブルトレンドが否定されていない限り、先張りで頭でっかちな先入観はいらない。
米中貿易戦争や英EU離脱、そして、米長短金利の逆転など悪材料が満ちた環境でも米国株はブルトレンドを保ってきたことを考えると、このトレンドはさらに伸びていく可能性が大きいのではないかと思う。この意味では、今は米国株のバブル期ではなく、本格的なバブルはこれからだと言える。
【参考記事】
●10月暴落説が喧伝されたが日米株は暴騰も! 米ドル/円は上昇前のスピード調整(2019年10月25日、陳満咲杜)
そもそも、米国株の史上最高値更新でもFRBが利下げを敢行したから、バブルを発生させる最大条件ができている。FOMC声明文やFRB議長の言葉のニュアンスまで分析、米利下げ封印云々の分析も多いが、今まであまり当てられなかっただけに、今回も信用できないと思う。
米株高でも利下げ継続の余地がなおあり、やはり本格的なバブルはこれからの公算が高い。
■米ドル/円の反落はスピード調整にすぎない
米国株の話がまた長くなったが、要するにリスクオンかリスクオフのどちらか、という話だ。
英ポンドの大反転にみられるように、リスクオフ・オンの反転は実は極めて急速に行われがちで、少なくとも目先はリスクオフのムードではないから、昨日(10月31日)、米中合意挫折のウワサがもたらした米ドル/円の急落も、拡大解釈は不要だと思う。
シンプルに言えば、米ドル/円の反落は8月高値109.33円や200日移動平均線の突破にいったん失敗したから、スピード調整を行っている最中であるということだ。

(出所:Bloomberg)
しかし、スピード調整だからこそ、再度サポートゾーンを確認してからまた上昇波に復帰、8月高値のブレイクを果たし、一段と上値余地を拡大する公算が高い。なにしろ、日足における「逆三尊(※)」は維持されているし、またスピード調整があった方が、これからより健全な上昇波の形成につながるからだ。
(※編集部注:「逆三尊」はチャートのパターンの1つで、底を示す典型的な形とされている。天井を示す「三尊型」(仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)を逆さにした形であるため、「逆三尊」と呼ばれる)
■米ドル/円は基本押し目買いのスタンスで
執筆中の現時点で、米ドル/円は下のチャートが示すように、サポートポイントに達している可能性がある。

(出所:Bloomberg)
このあたりの検証はまた次回に譲るが、今晩(11月1日)の米雇用統計次第ではなく、雇用統計の結果がどうであれ、基本は押し目買いのスタンスで臨みたいことを記しておきたい。市況はいかに。
(13:30執筆)
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