■「ロビンフッダー対ヘッジファンド」
みなさん、こんにちは。
今週(1月25日~)、マーケットのみならず、一般の報道でもかなり話題になっていたのが「ロビンフッダー対ヘッジファンド」(※)。
(※編集部注:ロビンフッダー(Robinhooder)とは、米国のロビンフッド証券が提供するスマホの株式取引アプリ「ロビンフッド」で売買を行う個人投資家のこと。1人あたりの投資額は少額ながら、新型コロナウイルスの影響で在宅を余儀なくされた若者を中心に爆発的な増加を見せており、株価を動かす要因とされている)
要約すると、ヘッジファンドがショートにしていた個別銘柄を、SNSのチャットサイト上でデイトレーダーが団結して、ショートスクイーズさせたというもの。
具体的にいえば、SNSのチャットというのは、「米国版5ちゃんねる」とも言われている「reddit」の「WallStreetBets」というスレッド。
今回標的になった個別銘柄というのが、ゲームストップ(GME)。ゲームストップは、コンピュータゲームやパソコンの娯楽ソフトウエアの販売店を運営する会社です。
近年、オンラインでのゲーム購入が普及したこともあって、この会社は過去2年間は純利益がマイナスになるほど業績が低迷していました。
そして、今回のゲームストップ株の急騰のきっかけとなったのが、シトロン・リサーチがゲームストップ株の空売りを推奨した事。
これに反応したのが、前述の米国版5ちゃんねる「reddit」のスレッド「WallStreetBets」。
このスレッドでの「ゲームストップ株を買うように!」との呼びかけに、多くのトレーダーが賛同。そして、彼らの参入により、ゲームストップ株は上昇開始!
その話題の「WallStreetBets」をのぞいてみると、「WallStreetBetsはゲームストップ株を1000ドルまでガチホする」と投稿されていました。急騰したとはいえ、ゲームストップ株の株価は1月27日(水)の段階で147ドル…。それを、1000ドルまでガチホするとのコメントには、個人的には「はぁ?」という印象を持っただけでした。
ただ、驚いたのは、筆者が本日(28日)早朝、ゲームストップ株のプライスをチェックした時。「WallStreetBets」が煽る1000ドルとは言いませんが、一時157%高の380ドルを付けたようです。
(出所:IG証券)
先月(12月)まで、20ドルレベルで低迷していた株が、WallStreetBets族の買い煽り(?)により、いきなり380ドルへ急騰したわけです。
これでは、ヘッジファンドはショートポジションをカットするしかありません。
空売りを手掛けていた、大手ヘッジファンドのメルビン・キャピタルは、ポートフォリオを調整した後、ゲームストップ株のショートポジションを解消したと発表しました。
同じく、ヘッジファンドのシトロン・キャピタルのアンドルー・レフト氏も27日(水)、YouTubeで、ゲームストップ株のショートポジションの大部分を「100%の損失」で買い戻したと明らかにしています。
■金融市場でロビンフッダーの勢いが拡大…
このゲームストップ株の急騰劇には、多くのメディアが「ロビンフッダー対ヘッジファンド」と一斉に報道。結果は、ヘッジファンド勢が一斉にショートポジションをカットし、ロビンフッダー軍団が勝利したということに…。
ただ個人的には、ゲームストップ株の380ドルへの急騰劇は、ヘッジファンドのショートポジションの買い戻しがメインなのでしょうが、ロビンフッダーのロングの参入もあったと思われ、そうした高値で買い進めていったロビンフッダー勢はいったいどうなるのかという懸念も残りました。
このように、金融市場ではロビンフッダーの勢力が拡大しています。
このコラムでも、ロビンフッダーについては何度か触れていますが、下記は昨年(2020年)の夏にDIAMOND onlineで取り上げられた記事の一部を抜粋したものです。
米国で大躍進する素人「ロビンフッダー」に対し苦戦する著名投資家…コロナ禍と株式ポピュリズムで金融はどう変わるのか?
米国ではスマホ用株式売買アプリ「ロビンフッド」を駆使する“ロビンフッダー”と呼ばれる素人投資家が大躍進を見せる一方で、燦然たる実績を誇ってきた著名投資家の中には苦戦するものが目立つ。それだけ過去のパターンとは異なる相場付きということだろう。
昨年(2020年)初頭より、ロビンフッダーは著名投資家を苦しめていたことがわかります。
■米国株は静かに反落開始
ともあれ、ヘッジファンドの敗北宣言が報道される中、米国株は静かに反落開始。
(出所:IG証券)
その要因ですが、パウエル議長がFOMC(米連邦公開市場委員会)で特にネガティブなコメントをしたわけではありません。
ただ、高値圏でこうした暴力的な乱高下があると、株は高値を形成することもあるので、そうした点については要注意です。
そして筆者が使用しているデマーク(※)インディケーターでは、今週(1月25日~)S&P500指数がトップアウトする可能性を示唆。
(※編集部注:「デマーク」とはTDシーケンシャルなどのテクニカル指標を開発したトーマス・R・デマーク氏のこと)
2月に向けて、米国株は調整局面入りする公算が高まっています。
(出所:IG証券)
■ECB高官の発言で、ユーロは下値余地拡大
米国株の下落により、為替市場でもリスクオフ相場になり、リスクアセットの豪ドルは反落。
(出所:IG証券)
豪ドルに関しては、前回のコラム同様、2月の株の調整で押し目を形成してくれることを期待しており、そこで再びロングにする好機を模索中です。
【参考記事】
●LNG高騰など中期での豪ドルの強さは不変。下落中のユーロ/豪ドルの動向に注目!(1月21日、西原宏一)
そして、もうひとつ注目したい通貨がユーロ。
株安であれば、短期ではリスクアセットの豪ドルを売ればいいのですが、ユーロを選択する要因のひとつが、ECB(欧州中央銀行)のコメント。
1月26日(火)の欧州市場では、欧州株の軟調さがユーロの上値を抑えていたところに、ECB高官の下記のコメントにより、ユーロは反落。
ECBにはユーロ高に対処する手段、利下げも可能-クノット氏
(ECB)政策委員会メンバーのクノット・オランダ中銀総裁は27日、インフレを抑制する一段のユーロ高に対処する手段がECBにはあるとし、追加利下げも可能との認識を示した。
出所:Bloomberg
昨年(2020年)後半から、進行するユーロ高に対して、ECBによる通貨高牽制コメントが目立つようになってきました。
それに対し、多くのマーケット参加者は、ECB当局のコメントを単なるスムージングオペレーションと捉え、ユーロを買い進めてきました。
しかし、ECB当局からの通貨高牽制コメントも、前述のように徐々に厳しいものに変わってきているため、今回はマーケットの警戒感が高まっています。
その意味において、ユーロ/米ドルの下値余地は、さらに拡大していると考えています。
(出所:IG証券)
ヘッジファンドの敗北宣言が報道される中、2月に向けて米国株は静かに反落開始。
そして、「一段のユーロ高に対処する手段がECBにはある」とのECB高官によるコメントにより、下値余地が拡大しているユーロ/米ドルの動向に注目です。
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