米ドル全体は弱含みの推移に留まっている。ドルインデックスは4月安値90.39から反発してきたものの、モメンタムの低下も鮮明、当面保ち合い程度に留まるかと推測される。
(出所:TradingView)
■テーパリングと商品相場上昇でカナダドルの強さ目立つ
諸外貨のうち、カナダドルの上昇がもっとも目立つ。なにしろ、カナダドルは先月(4月)、主要外貨の中で真っ先にテーパリングを実施した。商品相場の上昇と相まって、買われる展開になったのも当然な成り行きだと思われる。
【参考記事】
●テーパリング開始決定で、カナダドル急騰! 米FRBも、早ければ夏ごろに示唆する可能性(2021年4月22日、志摩力男)
●テーパリングに着手したカナダ。カナダドルは全面高! 次は、米国やオセアニア?(2021年4月22日、西原宏一)
テクニカルの視点では、米ドル/カナダドルの月足における「ダブル・トップ」の構造がはっきりしており、2017年安値をトライ、またブレイクしていく勢いを示している。
相応するように、カナダドル/円の高値更新も自然な成り行きと見られる。
(出所:TradingView)
なにしろ、筆者が繰り返し指摘してきたとおり、円は主要外貨のうち、一番弱い存在である。それは、目先の米ドル全体の弱含みで、むしろ一段と鮮明になってきた。
【参考記事】
●米ドル/円は2021年前半に112円達成も!GMMAに鰯(イワシ)喰いのサイン完成か!?(2021年4月30日、陳満咲杜)
●米ドル/円は、109.86円の打診を有力視!FOMC後の値動きが米ドルの底堅さを証明(2021年3月19日、陳満咲杜)
カナダドル/円の高値更新は円の弱さを再度証明しており、また、これはそのほかの主要クロス円の堅調な推移やこれからの値動きを示唆する存在だとみる。
■カナダドル/円は91.57円をめざす公算が高い
カナダドル/円のチャートは示唆に富む。下の日足チャートを見ればわかるように、4月21日(水)から大きく上昇し、GMMAチャートにおける長期線グループのサポートをみごとに証左した上、高値更新をもって、それ以前の値動きの「ダマシ」を証明、これが直近までの強気変動をもたらしている。
その「ダマシ」的な値動きとは、3月高値(1)に対して4月初頭に高値更新(2)をいったん果たしたものの、さらなる上昇には失敗し、その後、3月23日安値(3)を一時、割り込んでしまったことだ。これにより、「ダブル・トップ」のフォーメーションが示唆されていたから、本来なら反落波の拡大につながってもおかしくなかった。
しかし、その後、一気に上昇して高値を再更新し、「ダブル・トップ」の成立を否定。かえって直近までの強気変動を強化しているというわけだ。
カナダドル/円はすでに2018年10月高値の89.20円を更新しており、このまま2018年の年初高値91.57円を打診する公算が大きい。
■ユーロ/円は133.12円への「全値戻し」を果たす公算大
直近の高値更新を果たしているユーロ/円も然り。2018年9月高値133.12円への「全値戻し」を果たす公算で、直近まで堅調な強気変動を維持している。
上のチャートへ示したように、1月、3月や4月の調整(1~3)はすべてGMMAチャートにおける長期線グループにサポートされ、高値を更新してきた。4月20日(火)に大きな「ダマシ」のサイン(A)を点灯していたが、「ダマシ」であった同サインはその後の高値更新によってまた「ダマシ」となった。
4月20日(火)は、いったん高値更新を果たしたものの、一転して大幅反落して大引け、日足では「スパイクハイ」の足型をもって、「フォールス・ブレイクアウト」のサイン(すなわち、3月高値に対する更新がダマシであった可能性)をいったん点灯していた。
「フォールス・ブレイクアウト」のサインが「ホンモノ」なら、反落波の拡大が想定されるところだが、その後の続伸や高値再更新をもって一転して、「ダマシ」と証明され、かえって足元までの強気変動が「ホンモノ」であることを証明しているわけだ。
■英ポンド/円も豪ドル/円も高値更新が見込まれる
このような目線でほかの主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)をフォローしていくなら、当然のように、英ポンド/円の高値再更新も覚悟したい。
なにしろ、日足におけるGMMAチャートが示すサポートゾーンが健在であることに加え、4月20日(火)高値(A)の再更新をもって、日足における「三尊天井」形成の可能性も後退している。
目先を含め、「三尊天井」形成の可能性自体が一種の「ダマシ」であることを警戒しておきたい。
同じ理屈で豪ドル/円の高値更新も規定路線であろう。
GMMAチャートが示すサポートゾーン然り、日足における「三尊天井」の疑いも、4月20日(火)高値(A)の更新でその可能性は否定され、かえって、さらなる高値更新の可能性が高まっている。
ちなみに、豪ドル/円の4月20日(火)の足型は、典型的な「弱気リバーサル&アウトサイド」であった。だからこそ、その後の高値再更新の方がより大きな意味合いを持つ。豪ドル/円の上昇トレンドはしばらく維持される公算が大きいと思われる。
いずれにせよ、目先は円安トレンドが一段と加速する可能性が大きい。理論値で円の「売られすぎ」と論じる方も多いが、相場のことを相場に聞くなら、逆張りの円買いは避けた方がよさそうだ。市況はいかに。
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