■ドルインデックスは下げ止まりの兆し
4月FOMC(米連邦公開市場委員会)は、景気認識を上方修正した。一方、インフレ率の上昇に関しては一過性と認定。景気刺激策の早期引き揚げを否定する立場を表明した。
それを受け、米ドル全体は一段と反落。「わかりやすい」値動きを示している。
(出所:TradingView)
とはいえ、4月に入ってから米ドル全体はすでに大幅な反落を果たしてきたから、FOMCの声明で続落したものの、下落幅は限定的であった。
昨日(4月29日)、ドルインデックスは90.39の安値をトライしてから、逆に陽線で大引け。下げ止まりの前兆として受け取れる。
■米ドル全体の反落が続く中、米ドル/円の底堅さが目立つ
米ドル全体の反落が続く中、米ドル/円の底型さが目立つ。4月23日(金)安値の107.47円から、昨日(4月29日)、いったん109.22円をトライして、反騰の勢いを示唆。
(出所:TradingView)
米ドル反落の受け皿は、主にユーロなどの外貨がその役割を果たした部分が大きかった。そして、ユーロ/円の高値更新が示すように、主要外貨のうち、円は一番弱い存在であるということが、もう1回確認された。
(出所:TradingView)
筆者が繰り返し指摘してきたのは、ほかでもない、「円安はホンモノ」だということだが、それが目下の市況によってもう一度証左され、また強化されていると思う。
【参考記事】
●米ドル/円の一段高を有力視。長いスパンで見れば本格的な円安は、むしろこれから(2021年3月12日、陳満咲杜)
●米ドル/円は、109.86円の打診を有力視! FOMC後の値動きが米ドルの底堅さを証明(2021年3月19日、陳満咲杜)
■米ドル全面安局面への逆戻りはないだろう
もっとも、ユーロ/円の高値再更新がみられたように、ここに来て、円安トレンドの強さが筆者のような円安派の予想さえ超えた展開となり、円の独歩安がより鮮明になってきた。
しかし、米ドルの反落がさらに進んできたからと言って、米ドル全面安の局面へ逆戻りするとは思わない。
FRB(米連邦準備制度理事会)のスタンスが維持されたということは、そもそも市場のコンセンサス。それが事実として今回のFOMCで確認されたからこそ、4月に入ってからの大幅反落はすでに最終段階に入り、ドルインデックスの続落が一段落した可能性が逆に強まったとみる。
その背景として、やはり、米長期金利の高値止まりが、米ドルを支える大きな要素として無視できない。
米長期金利(米10年物国債利回り)は、執筆中の現時点で1.645%前後に位置。4月安値でも1.528%をキープしており、ドルインデックスほどの反落はなかった。
(出所:TradingView)
米長期金利の高止まりは、ドルインデックスの反落自体が行きすぎであることを暗示し、また、これからさらなる上昇余地があることを示唆している。したがって、それは現在の米ドル全体が「売られすぎ」であることを露呈させる存在となる公算が大きい。
■高値トライ、ユーロ/ドルは難しいがユーロ/円は可能性大
ゆえに、ユーロ/米ドルは執筆中の現時点で1.21ドル台の打診を果たしているが、これがこのまま上昇を続け、2021年年初来高値へ逆戻りを果たせるとは思わない。
(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルは4月に入ってから急速な切り返しを推進してきた分、これからはむしろ一服しやすく、再度、頭が重くなりやすいタイミングに入るかと推測される。
反面、仮にユーロなど主要外貨の頭打ちが再度確認される場合でも、たちまち急速な反落を展開してくるとは限らない。なにしろ、4月に入ってからの米ドルの急落は主にユーロの上昇をもって実現されてきたから、修正するのも時間がかかる。
ゆえに、ユーロ/円については、目先「買われすぎ」の状態にあると思われるが、たちまち頭打ちして反落するよりも、一段と高値トライしていく可能性の方が大きいだろう。
目先のターゲットとして、2018年9月高値の133.12円の打診が現実的であり、また、これをいったんトライしなければ、上昇波の本格的な頭打ちはなかなかないかと思われる。
(出所:TradingView)
となると、英ポンド/円も豪ドル/円も高値圏での保ち合いを続け、また、ユーロ/円が一段と高値更新するのを追う形で再度高値をトライしていく可能性が高まりつつあるだろう。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
つまるところ、米ドル全体の切り返しが緩やかなスピードに留まる公算が大きいから、当面、クロス円の堅調さが継続される可能性がある。
■米ドル/円は2021年前半に112円を達成する可能性大
ユーロ/円以外の主要クロス円も再度高値更新を果たすなら、米ドル/円の一段反騰が欠かせない。
この意味合いにおいて、米ドル/円の調整はすでに完了し、これからブル(上昇)トレンドへ復帰していく公算も大きい。筆者が昨年(2020年)年末にて提示した112円のターゲットが、2021年前半にて実現される可能性が、なお大きいと思う。
【参考記事】
●2021年こそ「新たな円安時代」の幕開けか。米ドル/円をめぐる2つのシナリオとは?(2020年12月25日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
テクニカル上のポイントをまとめてみると、まず、2021年年初からの米ドル/円の上昇幅に対する調整は、終値ベースでは38.2%程度に留まった可能性が大きいことが注目される。
次に、2021年年初来安値から引かれるメインサポートライン(黄色)の役割を証左するように、4月23日(金)安値からの切り返しが、再度20日移動平均線(20日線)への回復を図り、メイン構造としての強気変動の継続を示唆している。
となると、これから4月安値を割り込まない限り、米ドル/円の続伸が有力視され、GMMAチャートにおける「鰯(イワシ)喰い」のサインを完成させる公算が大きい。
GMMAチャートでは6本の短期移動平均線(青色)と6本の長期移動平均線(ピンク色)をもって相場の流れを測っている。
短期線グループが上から長期戦グループに突っ込み、「デッドクロス」を図ったものの失敗した場合は、元のトレンドへ逆戻りする公算が高く、さらなるトレンド推進の可能性が高いと解釈される。
同サインは、「鰯喰い」と筆者が拙作(『基本にして最強 GMMA+RSI 二刀流FX』など)にて命名したものである。
サインの名前はともかく、目下、GMMAチャートにて調整完了の可能性が高いことが示唆されている以上、米ドル/円は元のトレンド、すなわち米ドル高・円安トレンドへの復帰が有力視される。
主要クロス円が堅調に推移し、高値の再打診があれば、米ドル/円の一段上昇が想定されやすいだけに、米ドル/円の押し目買いを行いたい。市況はいかに。
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