■NZ中銀の声明を受け、ニュージーランドドルが急上昇
昨日5月26日(水)は、ニュージーランドドルが急上昇する局面がありましたので、今日はその話からしたいと思います。
急上昇の背景となったのは、昨日開催されたRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])の政策決定会合での声明文でした。
声明文の中に、前回の声明文には入っていた「必要なら金利を引き下げる準備がある」との文言が削除されたため、金融政策がやや引き締め方向に転換されたのではないか、との見方が広がったということで、ニュージーランドドルは上昇しました。
その国の金利が上昇すると、それに反応して、通貨も上昇するという典型的な例でした。
(出所:TradingView)
■ニュージーランドドルは上昇期に入らないと考えるワケは?
さて、そこでニュージーランドドルは、これから上昇期に入るかということですが、私はそうはならないと考えています。
そう考える理由をこれから説明します。声明文を全部読んでみました。
(出所:RBNZ)
そこに書いてあることをかいつまんでご紹介しますと、まず、新型コロナウイルスの影響については、国によってばらつきがあるものの、世界的にワクチン接種が進んでいることを明るい材料ととらえています。
一方で、国によっては新型コロナウイルス感染拡大を受けて、再び行動制限をかけていることが不安材料だと言っています。
しかし、全体的には新型コロナウイルスの感染が収束に向かっていく中で、景気は回復していくであろうとの見通しをたてています。
その上で、政策金利は中期的には上昇していくであろうと予想しているものの、かなりの時間を要するとしています。
また、ニュージーランドでは足元で消費者物価が上昇していますが、これは輸送コストなどが高くなっているせいであり、今だけの一時的なものであるとの評価をしています。
つまり、一時的には上昇していても、それよりもう少し長い、「短期的なスパン」では物価が上昇していくわけではないと言っているわけです。
まとめてみると、ワクチン接種の普及などによって、景気がさらに落ち込むリスクは徐々に減ってきているため、さらなる利下げをする必要性は弱まってはいるものの、金利を引き上げていくのは、かなり先になるということを言っているわけです。
おそらく、市場も声明文をよく読み込んでいくと、さらにニュージーランドドルを買い上げていくほどの内容ではないな、と冷静に判断するのではないかと私は考えています。
■米ドル相場は混とん。トレンドが出るには時間がかかりそう
その他のマーケットですが、混とんとした状態が続いています。
米国では、少なくとも1回のワクチン接種を終えた人が約5割に達しています。ワクチン接種は順調に進んでいるということです。
(出所:Our World in Data)
しかし、米長期金利は伸び悩み、米ドル相場は混とんとした状態のままです。
現在はマーケットを取り巻く環境とマーケットがうまくシンクロしない状況となっていますので、まだ、トレンドが出てくるには時間がかかりそうです。
【参考記事】
●正常な市場の反応は長続きしなさそう。米ドル/円の押し目買いが一番安全か(5月20日、今井雅人)
●米国の強さを改めて痛感。それでも、米ドル高がどんどん進行しない理由は?(5月6日、今井雅人)
●米長期金利が比較的堅調なのに米ドル全体の動きがさえず、円安が進んでいるのはなぜ?(4月30日、今井雅人)
米ドル/円を見ると、108円台になると内外投資家からの米ドル買いがみられるようになってきましたので、それをバックに押し目買いをするのが、今のところ一番確実ではないかと考えています。
ただし、110円を上に抜けるような展開は当面期待できないと思っています。
(出所:TradingView)
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