市場が米雇用統計をあまり好意的に捉えなかった理由は2つ
この1週間、またしてもすっきりしない相場展開に戻ってしまった感じがします。
期待していた米国の雇用統計6月分でしたが、非農業部門雇用者数は予想の70万人増加を上回る85万人の増加となりました。
【参考記事】
●米雇用統計は100万人増との見方も。今回は希望を持てるかも…と考えるワケは?(7月2日、今井雅人)
しかし、市場はあまり好意的に捉えませんでした。理由として考えられるのは2つあります。
1つは、同時に発表された失業率が5.9%と予想の5.7%より悪くなっていたことです。
せっかく、1つの結果は良かったのに、もう1つが悪かったことで相殺されてしまった可能性があるということです。
【参考記事】
●米利上げは時間の問題なのに、米雇用統計で米金利が低下したのはなぜ?(7月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
2つ目は過剰期待です。市場予想の中心値は70万人の増加でしたが、指標の発表直前には、一部で実は100万人増加ぐらいの数字が出るのではないかという噂が結構流れていました。
ところが、結果が85万人だったことで、逆にがっかりしてしまったという面があったのかもしれません。
米国の長期金利はまったく冴えない一方、株式市場はしっかりした動き
それからというもの、米国の長期金利がまったく冴えなくなってしまいました。
米10年物国債の利回り(米長期金利)の1週間の推移をみるとよくわかりますが、どちらかというと低下傾向に入っています。
(出所:TradingView)
景気に前向きな見方をしていれば、金利は上昇するはずですから、そう見ていないということになります。
一方、株式市場のほうはなかなか崩れません。米国の景気指標は決していいわけではないのですが、金利が上がらないことをむしろ好感して、しっかりした動きを続けています。
(出所:TradingView)
クロス円軟調の原因と言われている原油の急落
しかし、FX市場を見てみると、1週間単位ではどちらかというとクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が軟調に動いていて、株式市場とは必ずしも連動しているとは言えないような展開になっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
一応、その原因と言われているのが、原油市場の影響です。
原油市場は、ここずっと上昇傾向にあり、一時6年8ヵ月ぶりの高値をつけていました。
(出所:TradingView)
その原因は、金余り状態の金融市場から資金が流れ込んでいることと、世界経済に明るい兆しが見られ、原油の需要増につながることへの期待感です。
ところが、今週(7月5日~)、原油価格が急落する場面がありました。原因は以下のとおりです。
OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどで構成される「OPECプラス(※)」の協議が7月2日(金)に行われ、8月から12月に合計で日量200万バレルの減産規模縮小を行うことで合意しましたが、協調減産の期限を来年(2022年)4月から12月まで延長する案については合意に達することができませんでした。
それを受けて7月5日(月)にも再協議が行われましたが、結果的にはサウジアラビアがUAEを説得することができず、協議自体が決裂したということのようです。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPECにOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
【参考記事】
●米利上げは時間の問題なのに、米雇用統計で米金利が低下したのはなぜ?(7月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
このような動きを受けて、週明けには原油価格が急騰する場面もあったものの、ほどなく一転して急落するなど乱高下となりました。
(出所:TradingView)
そして、リスクオフの動きからクロス円が下落しているという流れです。
しかし、株式市場はそれほど大きく崩れていないので、やや違和感があります。
クロス円が下落した結果、米ドル/円ではやや米ドル安、一方でユーロ/米ドルなどでは逆にやや米ドル高になっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
ただ、この原油価格の下落も一時的なものに終わるのではないかと考えています。
やりにくい相場だが、米ドル/円の押し目買いがおもしろそう
以上、この1週間の出来事を振り返ってきましたが、正直言ってやりにくい相場です。
中長期的な展開では米ドル高を依然として予想していますが、もう少しの間、この今の梅雨時の天気のような相場展開に付き合わざるを得ないかなと思っています。
個人的にはユーロ/米ドルのショートを持ち続けていますが、米ドル/円の押し目買いもおもしろいと思います。
110円台半ばから前半は一度買ってみてもいいのではないでしょうか。
(出所:TradingView)
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