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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米ドル全体の本格的な下落はこれから! ただし目先の
目標達成感は強く、いったんは一服する可能性も。
米ドル/円は今後も緩やかに下落と見込んで売り方針で!

2025年03月14日(金)17:46公開 (2025年03月14日(金)17:46更新)
陳満咲杜

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ドルインデックスは昨年11月安値割れで、もう誰も「米ドル高」と言わなくなってきた

 筆者の予想どおり、米ドル全体は急落してきた。ドルインデックスは先週(3月3日~)大幅に続落し、今週(3月10日~)も軟調に推移するに留まり、いったん103の節目手前まで迫った。数字としてはいったん昨年(2024年)11月安値の103.28割れがあったので、もう誰も「米ドル高」と言わなくなってきた。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(出所:TradingView

 冒頭にて「筆者の予想どおり」と書き、ひんしゅくを買っているかもしれないが、強調したいのは筆者の一貫した立場だ。

 昨年(2024年)9月安値を起点とした米ドルの大暴騰、すなわち「トランプ・トレード」がもたらした過剰な米ドル高の市況があったが、筆者は本コラムを含め、一貫して米ドル高が長く続かないことを指摘してきた。

 今だからこそ、こういうスタンスを守ってきたのが正しいとたやすく言えるが、つい1月末~2月初頭まで、ウォール街のコンセンサスが米ドル高だったこと、またユーロ/米ドルのパリティがささやかれたことから考えると、風見鶏にならずにいられるのはとっても難しいことだ、と記しておきたい。

米ドル全体の状況で言うと、ここまではまだまだ序の口。本格的な暴落は、むしろこれから!

 さて、問題児のトランプ氏が米大統領に就任してから、相場は荒れてきた。米国株は総計5兆ドルの時価総額を失い、これはトランプ氏が主張する諸外国への課税額の10年分に相当する、という計算もある。

 ウクライナの一件も道義上のリーダーシップを自ら放棄し、米ドルの価値を大きく棄損したことは、もはや火を見るよりも明らかだ。

 ゆえに、米国株は別の視点が必要かもしれないが、米ドル全体の状況で言うと、ここまではまだまだ序の口で、本格的な暴落はむしろこれからだと思う。

 なぜなら、「トランプ・トレード」の起点が昨年(2024年)9月だとすれば、ドルインデックスの9月安値が100の節目近辺であったことから考えて、100近辺までの下落が見られていないうちは「トランプ・トレード」がもたらした米ドルのプレミアが解消されていないと言える。よって、暴落云々と言うのは大袈裟な表現だと思う。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(出所:TradingView

 言ってみれば、ドルインデックスが早晩100の節目を割りこみ、そこからさらに大きく下落していって、それで初めて暴落と言える。米ドル安はもう終わったと思う方がいらっしゃるなら、天真爛漫な方だとしか言いようがない。

 一方で、市況は一直線に進まない。米ドル安は、目先いったん一服してくる可能性がある。ユーロ/米ドルの例を取り上げてみればわかるように、一気に1.09ドル半ばを打診したこと自体が、やや「スピード違反」の疑いがあり、米独長期金利差で測っても、目先の目標達成感は強い。

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView

 言い換えれば、ウォール街の方々がスタンスの転換(米ドル高から米ドル安へ)を声高く主張し始めた目下では、米ドルの安値を追うのではなく、米ドルのショート筋は利益確定しておく時期だと言える。

 前述のように、彼らはつい最近まで「トランプ・トレード」を謳歌し、そしてトランプ関税で米インフレ高騰の予測を根拠に2025年年内の米利下げなしと主張したばかりだったから、相場の方向ではなくタイミングを教えてくれたものとして重宝すべき存在だ(ちなみに、今彼らは「年内3回利下げ」と予測しているが、当てにならない)。

米ドル/円はこれからも緩やかな下落を保ち、調整があっても緩やかなはず。じっくり、のんびり、米ドル/円を売っていきたい

 厄介なのは、米ドル/円だ。CFTC(米商品先物取引委員会)における円のロングポジションが、統計以来の最大規模に膨らんだことは、すでにマスコミに大きく取り上げられて周知されたので、ここでは重複しないが、米ドル/円の下落スピードを抑えてきた分、米ドルのショート筋は目標達成感が得られないかもしれない。

 個人的には桜が満開になる頃までに141円台が「ほしい」ところだが、恐らく難しいかと思う。

 とはいえ、円買いポジションが積み上げられているから米ドル/円のトレンドが修正される、といった邪推には断固反対だ。なにしろ、円買い越しなんかは、たいしたものではないからだ。

 CFTCにおける統計にしても、店頭取引(FX)におけるポジションの推移にしても、円売り越しが「常態」であり、円買い越しは「異例」だ。先週(3月3日~)の統計までCFTCにおける円買い越しが、史上最大規模であったとしても、店頭取引の総計が大きな円買い越しにならない限り、トレンドを修正できるはずはない

 昨年(2024年)7月の「円売りバブル」は良い反対例だ。あの時「円売りバブル」が形成されたのは、CFTCの円売り越しと店頭取引の円売りポジションが揃って史上最高水準を記録したからだ。だからこそ、そのバブルの崩壊があって、米ドル/円は一気に20円も急落したわけだ。

 目下は違う。ヘッジファンドの面々が円買いを仕掛けてくるが、日本だけでも毎日2兆ドル超を誇る店頭取引の方向性を左右できるはずもない。

 いくらトランプ氏の「ご乱心」があっても、日米実質金利差もなお開いている状況である限り、日本の個人投資家は円買いの方向に大きなポジションを積み上げられない。だからこそ、米ドル/円は緩やかな下落に留まっており、これからもそのような状況を保つはずだ。

 その分、米ドル/円における調整も緩やかなはずだ。米ドル全体はいったんスピード調整があってもおかしくない市況の中、米ドル/円のみ「我が道をゆく」の様相を呈すると思う。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 ゆえに、じっくり、のんびり、米ドル/円を売っていきたい。市況はいかに。

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