2009年前半から騒ぎ出した「ギリシャ・ショック」に比べると、最近のほうが、欧州のソブリン危機の深刻度はかなり増している。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
だが、2010年6月に1.18ドル台まで下落したことと比べれば、現在のユーロはかなり高いレベルにある。このことが1つの証左となるかもしれない。
■なぜ、ユーロは1.3ドル割れまで売り込まれたのか?
また、ユーロが1.3000ドル割れとなったことは、最近の市場環境と深い関連性がある。
一般的に、12月に入るとマーケットの売買高が細くなる傾向にあると言われるが、今年の場合は特に顕著であったようだ。海外のディーラーによると、例年の約3分の1程度まで売買高が落ち込んでいるとのことだ。
要するに、流動性が極端に低下している状況下で、ユーロの下げ幅が拡大したのである。
これに対して、流動性が極端に低下しているからこそ、ユーロは暴落しやすく、1.2000ドルや1.1000ドルといった下値の大台を一気にトライするリスクが高まるといった見方もあるだろう。筆者はこのようなリスクシナリオも念頭に置きながら、やや違う側面でとらえてみたい。
1つ目は、流動性の低下は諸刃の剣であり、トレンドをさらに加速することにもなるが、逆に大きなリバウンドを招くこともある。
つまり、極端に売買高が少ないからこそ、仕掛け的な買いによってユーロショート(売り持ち)筋のストップ・ロス(損切り)がつきやすいということも想定しておきたい。
もう1つは、今年の相場の特性である。為替専門のヘッジファンドの多くが苦戦していると耳にする機会が多いが、損失を被ったところの多くがユーロ売りを仕掛けて失敗しただけに、同じ轍(てつ)を踏めるかどうかは微妙だ。
今年の為替相場の特徴や来年の展望については、また次回に譲ることにしよう。
■今回の年末年始相場は何があってもおかしくない
ここで、ちょっと気になっているのは、米ドル/円が動意薄であることだ。どちらかというと、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円高は、リスク回避型の円買いよりも、単純に外貨安による受身の円高にすぎないといった感触が強い。
円高傾向がなお続くという見方は堅持する。一方で、米ドル/円での円高のピークはすでに過ぎている可能性があり、このことを考慮すれば、クロス円における円高も来年前半あたりにピークとなる可能性がある。
また、円の受動的な役割は強まっており、ユーロ/米ドルと同じように、ユーロ/円などのクロス円における短期的な見通しも、基本的にはいったんリバウンドとみてよいだろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 週足)
年末年始相場で、かつ、例年よりも極端に流動性が低下している状況であるため、マーケットに何があってもおかしくないと思うべきである。
前述のように、筆者はユーロのリバウンドがあるとみているが、短期スパンでいえば、ユーロの1.2000ドル割れがあっても驚かないし、逆に1.4000ドルまで上昇してもサプライズではない。
したがって、このような「非常時」においては取引を見送るか、取引する場合はリスクコントロールを一層厳しくしないと痛い目にあう確率が高くなる。忘年会で酔った気分で相場に臨むべからず!
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