続いては、市場心理面からで、先週のコラムでも申し上げたように、「2月16日(木)の1.3000ドル割れはユーロ続落のサインではなく、ユーロ調整一服を示唆するシグナルだった」と筆者は見ていた。だから、足元におけるユーロの高値更新は当然の結果だと受け止めている(「19カ月サイクルがユーロの切り返しを示唆。性急なユーロ売りは避けたほうがいい」を参照)。
ただ、2月9日(木)高値からの一時調整は「好材料出尽くし」に伴う反落であった。そのため、「学習機能」を発揮した投機筋も多かったように思っている。
■風が吹いても、桶屋は儲け続けることはできない
だからこそ、ユーロはさらに上昇したのだが、このあたりを詳しくご説明しよう。
前回の教訓もあったため、「紆余曲折を経てギリシャ救援策がやっと合意に至ったのだから、今度こそ『ウワサの買い、事実の売り』になるのでは」と期待したショート筋は多かったように思う。
また、実際に「事実」になったため、彼らはこの局面を「売り好機」ととらえていたように見える。
しかし、「風が吹けば桶屋が儲かる」とは言うものの、儲け続けているうちに、しだいに儲からなくなるものである。それどころか、損する確率が高まってくる。
そのようなロジックのほうが相場の理、相場の常であるから、ユーロの「踏み上げ」が続いているのである。
実際のところ、従来からのユーロ・ショート筋だけでなく、ギリシャ問題の「一件落着」で新規参入してくるショート筋も多かったと推測できる。その数に比例し、ユーロ上昇のモメンタムも強かったわけだ。
皮肉にも、「学習機能」を発揮した投資家の思惑とは逆方向に相場が動くこととなったのだが、マーケットで経験を積んでいれば、このような心理面の変化とそれによる「ワナ」は事前に察知し、回避することができる。それだけでなく、逆に「取引の好機」として利用できた。
このような推測もあり、筆者は、一貫してユーロ続伸を予測できたのである。
■豪ドル/円は90円超えも射程に入った!
続いて、豪ドルについてご説明したい。筆者は、昨年の高値で豪ドルの長期上昇トレンドはいったん終えんしたと見ていたが、最近の相場環境を考慮し、メインシナリオを修正せざるを得なくなった。
(出所:米国FXCM)
上に示したのは、豪ドル/米ドルとダウ指数の相関図だが、両者の相関性が高いことがおわかりいただけるだろう。
ご覧のように、ダウ指数は「トライアングル」を上放れて高値を更新しているが、これに追随し、豪ドルの高値更新も必至だと思っている。つまり、豪ドルは出遅れている。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
また、英ポンドに関しても、米ドル安の流れに乗るかたちで、上値余地を開拓できるだろう。
先々週のコラムで「英ポンド/米ドルは200日移動平均線を超えられるか?」といった問題を提示したが、答えはYESである(「『米ドル安はまだ続く』と結論できたシンプルで皮肉なある方法とは?」参照)。
それならば、クロス円はどうなるか? もう、おわかりかもしれないが、筆者の見方が正しければ、ユーロ/円、英ポンド/円、豪ドル/円はそろって上値トライを続ける可能性が高いということになる。足元の高値更新は途上の段階であろう。
なお、トレンド系指標から考えると、その中では豪ドル/円がいちばん強いと思われる。昨年高値の90円も射程圏に入っており、それを超えるような値動きも見込める。
ちなみに、久しぶりの円安トレンドであるだけに、値動きはオーバーしやすく、スピードを持つものと覚悟すべきだ。
■「流動性の宴」で、決して酔いつぶれてはならない!
最後に、足元の相場の大きな背景として、これまでの歴史上でもマレな「世界的流動性相場」が続いていることを指摘しておきたい。
ECB(欧州中央銀行)の長期流動性供給、FRB(米連邦準備制度理事会)のインフレターゲット提示と実質ゼロ金利の時間軸延長、BOE(イングランド銀行)の国債買い入れ枠の拡大、日銀の量的緩和拡大、中国人民銀行の預金準備率引き下げ…
マーケットにたっぷり流動性が注入され、リスクオンの流れはしばらく続くと見られる。
ただし、このような流動性は明らかに過剰である。それだけに、その反動も大きいと予測され、「流動性の宴」はせいぜい、今年前半まで続けばよいほうだとみている
そうは言っても、せっかくの「宴」である。たっぷり享受しないともったいないのだが、決して酔いつぶれず、他の者より早めに席を立つことが、最後の勝負を決める。
相場に限らず、成功した者は例外なく、いさぎよく退ぐタイミングを知っている。
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