(「「円高の1年」で1ドル=95円も?! 一方で、ユーロはなかなか下がらない?」からつづく)
前回に引き続き、日本銀行やバークレイズ銀行で活躍し、ファンダメンタルズ分析の第一人者として大人気のストラテジスト・山本雅文さんに2014年の為替相場について聞いた! 今回は、「今年最強の通貨」について。
■今年「最強」と目される意外な通貨って?
前回、米ドル、円、ユーロと主な通貨の動向を山本さんに解説してもらったが、正直、どの通貨も「ものすごく強い!」という感じがしない。なんだか決め手にかける1年になるのだろうか。
「主要通貨のなかで今年、もっとも強そうなのがポンドです。イギリスは好調な不動産市場に支えられ、非常に景気がいい。BOE(イングランド中央銀行)が利上げ開始のメドとしていた失業率7%はもうすぐにでも達成してしまいそうで、利上げ開始のターゲットを変更したほどです。来年には利上げが始まりそうですし、その時期はアメリカの利上げ開始より早いのでは」
■最強通貨と最弱通貨の通貨ペアは
じゃあ、ポンド/円の買いがオススメかというと、足を引っ張るのは米ドル/円の円高。ポンドが強気でも、米ドル/円で円高が進んでしまうと、ポンド/円は思ったよりも上がらない。むしろ、米ドル/円の影響のほうが強く、下落しそう。
「対米ドルでは1.72くらいまでの上昇を見込んでいますし、馴染みは薄いかもしれませんが、ユーロとポンドとの通貨ペアもコントラストが鮮明でやりやすそうです。これから利下げ、金融緩和を打ち出すだろう弱い通貨ユーロと、利上げを始める強い通貨ポンドの組み合わせとなるからです」
■みんな大好きな豪ドルの行方は
最後に聞いておきたいのが、取引する人も多い豪ドル。昨年からは豪ドル安が続いているが――。
「豪ドルの行方に非常に影響力が大きいのは中国ですが、中国経済は景気減速が懸念されていました。ただ、3月の全人代(全国人民代表大会)では前年並の7.5%と意外に強気な姿勢を見せました。とはいえ、少なくとも中国経済が加速するわけではありませんから、豪ドル高の材料にはならないでしょう」
頼みの綱の中国が横ばいとなると、オーストラリアの自助努力が必要になる。
「この数か月、貿易収支が急激に改善しているのが好材料ではありますが、失業率は上昇しており、RBA(オーストラリア中央銀行)も通貨高を望んでいません。政策金利は年内据え置きでしょう。となると金融緩和の規模を縮小している米ドルと比べると豪ドルのジリ安となるでしょうし、米ドル/円も円高。そうなると豪ドル/円は年末80円へ向けて下落すると見ています」
以上、2回にわたって2014年の主要通貨の行方を見てきたが、去年までの円安の記憶に引っ張られないよう気をつけたほうがよさそう。去年までの猛烈な円安トレンドで外貨を買えなかった人は、今年後半に訪れるであろう買い場に注目を!
(取材・文/高城泰)
【2014年3月25日】
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