■パリで起きたテロに金融市場が冷静に反応
パリのテロでリスクオフの動きは広がらなかったが、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公開された後、逆に米ドル/円は反落した。相場は、「理外の理」と言われるから、今さら驚くものではなかろう。
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もっとも、「フランス版9.11」と言われる今回のパリのテロに、金融市場が学習機能を働かせて、冷静に反応していること自体、納得できるところが多い。
まず、たしかに犠牲者の人数は多かったが、9.11に匹敵するほど金融、経済にたちまち大きなダメージを与えたかというと、そうではないといった判断ができる。
次に、もしも、テロにより景気が悪化する兆しがあれば、すでにQE拡大や、さらなる利下げの余地を表明したECB(欧州中央銀行)が早期に行動するといった可能性も浮上する。これがユーロ安に作用する上、株式市場の支えになる。
結局、リスクオフかどうかは株式市場次第だが、こういった思惑があったのか、テロ以降、フランス株式市場をはじめ、EU(欧州連合)の株式市場は総じて堅調に推移してきた。
(出所:CQG)
従って、リスクオフの円買いにつながらなかったことも自然の成り行きで、ユーロ安にのみ反応したこともよく納得できる。基軸通貨ではないユーロが、ECBの政策以外で、自身の悲劇から「恩恵」を受けるとは考えにくいからだ。
■ユーロ安が続く公算が大きい理由は?
こういった話は、9.11後の米ドルのパフォーマンスと比較しないとわからない。2001年の9.11当日、ドルインデックスは1.6%安を記録したが、その後反発し、2002年1月まで上昇した。
言ってみれば、少なくとも3~4カ月間、米ドルは、真のリスク回避先とみなされ、テロを受けたにも関わらず、こういったパフォーマンスを発揮できたのだ。これは、米ドルが、他ならぬ基軸通貨だからこそ持つ力の表れだ。
当然のように、ユーロは基軸通貨ではないから、こういった力を持たない。テロ事件やこれからのリスクを考えると、ユーロは安全資産どころか、リスク資産に転落したと言えるだろう。
ゆえに、ユーロ安が続く公算が大きいとみる。
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■ユーロ/米ドルのリバウンド余地は大きくなさそうだ
一方、FOMC議事録が発表されたあと、ユーロ/米ドルの切り返しが見られたように、目先、米ドル高のスピード調整は見られる。
そもそも、FOMC議事録がタカ派だったのに、なぜこのような値動きになったのか? その見方は十人十色だ。
テクニカル的なスピード調整といった見方がもっとも多い。
米ドル高トレンドがはっきりしている場合、統計上の確率として、ユーロ/米ドルのリバウンドは2~3日の取引日しか続かず、また、値幅も150pips程度に留まることが多い。
今回もそれが当てはまるのであれば、目先、ユーロ/米ドルのリバウンド余地は、そう大きくなかろう。ドルインデックスが100の心理的な大台に接近する中、スピード調整自体が、より大きなモメンタムにつながるといった思惑もある。
(出所:CQG)
もう1つの見方は、市場焦点が…
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