新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
■米ドル高基調に「異変」、スピード調整が続く公算大
2017年の新年早々、米ドル高基調に「異変」が生じてきた。
昨日(1月5日)の米ドル全体の反落は、少なくとも「トランプ・ラリー」の一服を示唆するサインとして受け取られ、目先、米ドル高基調が維持されても、スピード調整が続く公算が高い。
ドルインデックスでは昨年(2016年)、トランプ氏が米大統領に選出された11月9日(水)安値を起点とした「上昇ウェッジ」の下放れが確認され、また、「トリプル・トップ」を形成してから反転したわけだから、このサインが妥当なものである可能性は高いと思う。
この見方が正しければ、行きすぎたいわゆる「トランプ・ラリー」に対する修正も、それなりのインパクトを持つかと思われる。
(出所:Bloomberg)
2016年年末の本コラムで指摘したように、今年(2017年)は相場における不確実性が高く、また、いわゆる「ブラック・スワン」的な事件が頻発する可能性が大きいから、先入観をもって相場に臨むのはもってのほかである。
【参考記事】
●2017年のドル/円は122円まで上昇後、105円へ反落。ブラックスワンで100円割れも(2016年12月27日、陳満咲杜)
そもそも「トランプ・ラリー」自体が、未知数の「トランプノミクス」が仮に実現される場合の、その成果の大部分を織り込んでいるというか、先走りしてきたものだ。だから、たとえ「ブラック・スワン」が出現しなくても、安心できる状態ではなく、米ドル高一辺倒の見通しとは、やはり距離を置いたほうが賢明だと言える。
■中国人民元の異変は「ブラック・スワン」的性質を持つ
実際、昨日(1月5日)の米ドルの急落は、中国人民元の異変とリンクして発生していたと思われるが、中国人民元相場の異変は「ブラック・スワン」とまで呼ばれなくても、そのような性質をもつ出来事だと思う。
(出所:Bloomberg)
同じく中国発の材料である、2016年年初の上海株の急落が、相場に大きなインパクトをもたらした前例に照らして考えると、軽くパスできる問題でもなさそうだ。
1月4日(水)に、中国人民元安の勢いを止めるべく、中国人民銀行(中央銀行)と見られる介入筋がオフショア中国人民元マーケットにて猛烈な中国人民元買いを仕掛け、また流動性をなくすように中国人民元の貸出をコントロールしたと言われる。
このような仕掛けを、相場は昨年(2016年)、何度も経験したが、今回の勢いがもっとも大きかった。この中国人民元の急上昇は、リスクオフの材料となり、昨日(1月5日)朝からの米ドル売り・円買いの値動きを加速、米ドル全体の反転をもたらしたわけだ。
世界経済が中国景気動向に左右されるといっても過言ではない昨今において、不安定な中国人民元相場が為替市場のリスク要素として意識されてもおかしくない。
それどころか、前提として、2016年8月の人民元切り下げ騒動で見られたように、管理相場である中国人民元相場の動向が、米ドル/円などの自由取引市場に直接大きな影響を及ぼすことが、相場逆転のきっかけになることが十分あり得るので、これからも人民元相場の動向からは目が離せない。
■きっかけは中国人民元だが、本質は相場全体の問題
一方、相場の出来事を単独でとらえる場合、往々にして大局観が失われがちだ。中国人民元相場における変動が米ドル全体の頭打ちにつながったとすれば、それは中国人民元や中国経済云々ではなく、相場全体の問題ととらえるべきだ。
要するに、「トランプ・ラリー」が行きすぎた分、市場はすでに疑心暗鬼の段階にきているのではないだろうか。トランプ氏のホワイトハウス入りが近づけば近づくほど、市場関係者はポビュリズムから目覚め、だんだん不安になってくるわけだ。
「我々はトランプ氏に賭けすぎていないか」と自問する市場関係者が多くなるにつれ、ポジションの戻しが生じやすい。何らかの大きな変動があれば、皆が一斉に手持ちのポジションを手仕舞い、リスクを削ろうとするわけだから、米国債が買われ、米ドルが売られ、そして、金が買われたわけだ。
中国人民元相場における中国人民銀行の介入(正式的には否定されているが)のタイミングであっただけに、中国人民元の急騰が相場全体のポジション調整のきっかけになったわけだ。
米ドル/円に関しては、目先、「ダブル・トップ」の構造が…
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)