■コインチェックが「単なる違法業者」って説はホント?
580億円相当の仮想通貨・NEM(ネム)不正流出騒動を起こしたコインチェック(Coincheck)。同社は2018年2月13日から日本円での出金を再開すると先に発表、それが無事行われるかに注目が集まっている。
【参考記事】
●コインチェック事件は全額返金で一転解決!?消えた580億円分の仮想通貨NEMどうなる?
●コインチェックから流出したNEMはその後、どうなった? 犯人は日本人の可能性も!?
そのコインチェックは2月13日現在、仮想通貨交換業者として金融庁に登録されていない。なのに同社は仮想通貨交換業の営業をしていた。これを指して、ある著名人が自身のツイッターで、コインチェックは「単なる違法業者」と断定していたことがあった。
しかし、コインチェックは大騒動を起こしてしまったものの、違法業者ではない。コインチェックは金融庁登録の仮想通貨交換業者ではなかったが、“みなし仮想通貨交換業者”ではあったからだ。
では、みなし仮想通貨交換業者とはどのような存在なのか? 本記事では仮想通貨交換業者、そして、みなし仮想通貨交換業者について取り上げてみたい。
■改正資金決済法施行から金融庁登録第1弾までの流れ
改正資金決済法(通称:仮想通貨法)は2017年4月1日に施行された。これにより、金融庁登録がなくては仮想通貨交換業者は営業できないことになった。
といっても、同法に基づいて金融庁へ申請したら即日登録されるわけではない。登録には時間がかかる。そうなると、改正資金決済法施行と同時に従来から仮想通貨交換業を行っていた業者はいきなり違法状態になってしまう。それでは困るので、このルールには6カ月の猶予期間が設けられていた。
すると、猶予期間の期限は法律施行6カ月後の2017年9月30日ということになる。筆者はそれまでに少しずつ登録業者が出てくるのかと思っていたのだが、それが一向に出てくる気配がなかった。ところが、期限ギリギリの2017年9月29日になって仮想通貨交換業者11社がいっせいに金融庁登録を果たしたのだった。
これが仮想通貨交換業者の金融庁登録第1弾だ。
【参考記事】
●仮想通貨交換業者11社が金融庁登録!(1) “記者会見合戦”が行われた歴史的瞬間
■経過措置により、みなし仮想通貨交換業者として営業は可能
そして、コインチェックは仮想通貨業界大手でありながら、この第1回登録11社の中に入っていなかったのだった。同社は金融庁登録ができないまま、6カ月の猶予期間が過ぎてしまったのだ。
そうなると、営業できなくなるのかと思いきや、そうではなかった。猶予期間後も「経過措置」というものがあったのだ。
2017年4月1日の改正資金決済法施行前から仮想通貨交換業を行っていた業者は、2017年9月30日までに登録申請を行っていれば、仮想通貨交換業を依然として行っていてOKなのである。これが“みなし仮想通貨交換業者”だ。
当該業者は金融庁へ登録されるか、登録を拒否されるまではみなし仮想通貨交換業者として営業できるのである。
では、みなし仮想通貨交換業者として営業できる期間はどれぐらいなのか?
コインチェックは2017年9月13日に発表した「仮想通貨交換業者登録に係る申請書提出のお知らせ」というリリースに、9月以降も2カ月間はみなし仮想通貨交換業者として営業できる旨を9月29日になって追記していた。
ただ、その後、2017年11月13日や12月1日に同社が出したリリースでは、「『仮想通貨交換業者に関する内閣府令』第36条に記載の通り、申請より2ヶ月の経過後に関しましても、通常通りサービスをご提供させていただくことが可能」と記載し、2カ月経ったあとでも営業可能としていたのだった。
コインチェックのリリースにある内閣布令第36条を見てみると、金融庁が登録を決定するまでの期間は確かに2カ月間とされているのだが、申請を補正する期間などはその期間から除外するといったことが書かれており、この規定があることから、コインチェックはみなし仮想通貨交換業者としての営業を2カ月間を過ぎたあとも長期間続けていたものと思われる。
そして、2017年12月にはさらに金融庁登録を果たした仮想通貨交換業者が5社増えたのだが、この中にもコインチェックは入っていなかった。
■コインチェックはなぜ、金融庁に登録できていないのか?
業界大手であり、著名タレントの出川哲朗が出演するCMをガンガン流しているような状況であっても、金融庁はコインチェックの登録を認めようとしなかった。そんな中で起こったコインチェック事件だったから、金融庁はある意味、面目を果たしたと言えるだろうか。
金融庁は、コインチェックのセキュリティ面や資金管理面がずさんだと見抜いていて、登録をなかなか認めなかったのだろうか? であれば、「金融庁さん、さすが~」という話になるが、登録をなかなか認めなかった理由を金融庁は公式には発表していない。
登録がなかなか認められなかったことについて、コインチェック側は何と言っていたのだろうか?
コインチェックの和田晃一良社長は2017年9月29日の金融庁登録第1弾があった日にコインチェックが登録されなかったことを受け、「通貨の種類が多いため少し遅れていますがご安心していただければと思います!」と自身のツイッターでツイートしていた。
通貨の種類が多いことを金融庁登録に手間取っている理由としていたのだ。
ただ、コインチェックが金融庁に登録できない理由は単に通貨の種類が多いからだけではなく、匿名性が特に高く、マネーロンダリングなどに使われやすいと考えられる3つの仮想通貨、Monero(モネロ)、DASH(ダッシュ)、Zcash(ジーキャッシュ)を取り扱っているからではないか、という説がネット上ではかなり流れていた。
今回の騒動を起こしたため、コインチェックの金融庁登録はより険しい道になったと推測されるが、それを乗り越えて、金融庁登録に至ったとしても、そのときは匿名性の高い3つの仮想通貨の取扱いを止めることと引き替えで…といったことになるかもしれない。この点にはちょっと注意しておいた方がいいだろう。
■金融庁登録業者であれば100%安全なのか?
なぜ、金融庁がコインチェックの登録をなかなか認めようとしなかったのか、その真の理由はわからないが、もしも仮想通貨の取引をするなら、やはり、金融庁に登録している会社の方がいい──今回のコインチェック事件を受けて、そう思った人は多いのではないだろうか。
ザイFX!では広告を掲載したり、仮想通貨取引所/販売所比較コンテンツで紹介するのは、金融庁に登録された会社であることを最低条件とする自主ルールを決めていた。だから、幸いなことにコインチェックは業界大手でありながら、ザイFX!では広告などを掲載してはいなかった。
【参考記事】
●コインチェック事件は全額返金で一転解決!? 消えた580億円分の仮想通貨NEMどうなる?
では、金融庁登録業者であれば100%安全なのだろうか? そこまではなかなか言い切れないところだ。
まず、一般論として、金融庁が免許を与えたり、登録を認めた会社であったとしても、銀行、証券会社、FX会社などで破綻した会社は長い歴史の中ではいくらでもある。仮想通貨交換業者にも同様の可能性はあると言った方が自然だ。
ただ、そんな一般論以上に仮想通貨交換業者については、金融庁登録=まずは安心と言って良いのか、疑問があるように思えるのだ。
■金融庁への第1弾登録業者はまずまず「知った顔」
そのことを考えていく上で、まず、登録日ごとに仮想通貨交換業者をざっと見ていきたい。最初は2017年9月29日に登録された第1弾の11社だ。以下の一覧表には登録番号、社名以外に資本金の項目も設けてみた。
仮想通貨交換業者一覧 (2017年9月29日登録) |
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登録番号 | 仮想通貨 交換業者名 |
資本金 |
関東財務局長 第00001号 |
株式会社 マネーパートナーズ |
31億円 |
関東財務局長 第00002号 |
QUOINE 株式会社 |
約20億円 |
関東財務局長 第00003号 |
株式会社 bitFlyer |
41億238万円 |
関東財務局長 第00004号 |
ビットバンク 株式会社 |
11億3100万円 |
関東財務局長 第00005号 |
SBIバーチャル・ カレンシーズ株式会社 |
9億8000万円 |
関東財務局長 第00006号 |
GMOコイン株式会社 | 17億5800万円 |
関東財務局長 第00007号 |
ビットトレード 株式会社 |
1億100万円 |
関東財務局長 第00008号 |
BTCボックス 株式会社 |
1億6516万円 |
関東財務局長 第00009号 |
株式会社ビット ポイントジャパン |
44億3000万円 |
近畿財務局長 第00001号 |
株式会社フィスコ 仮想通貨取引所 |
3億8706万円 |
近畿財務局長 第00002号 |
テックビューロ 株式会社 (取引所の名称は 「Zaif(ザイフ)」) |
8億3013万円 |
※資本金は各社公式サイトなどをザイFX!編集部が調査してまとめた
※資本準備金を含む場合もあります
資本金はその会社の現在の財務状況を表しているわけではない。株主に出資してもらって資本金を用意し、会社を設立して、創業後のビジネスで利益を上げていけば、それは利益剰余金として積み上がり、会社の純資産は資本金より多くなっていく。
逆に創業後のビジネスで赤字を積み重ねれば、利益剰余金はマイナスとなり、純資産は減っていき、財務状況は悪くなっていく。
ただ、資本金が多ければ、今に至るまでにその会社の株主がその分、たくさん出資しているということなので、株主の力の入れ具合がわかるという面はあると思える。
これらの第1弾登録業者についての、ざっとした紹介は以下の過去記事で行っている。
【参考記事】
●仮想通貨交換業者11社が金融庁登録!(1) “記者会見合戦”が行われた歴史的瞬間
●仮想通貨交換業者11社が金融庁登録!(2) ビットフライヤーは仮想通貨出来高世界一!
●仮想通貨交換業者11社が金融庁登録!(3) 徹底比較! 資本金の多い会社はどこ?
第1弾登録組の中で、最大手と言われるbitFlyerは非常に有名な存在だし、マネーパートナーズのようにFX会社そのものであったり、あるいはGMOコイン、SBIバーチャル・カレンシーズ、ビットトレードのようにFX会社と同一グループの会社はFXファンにとっては比較的身近に感じられるのではないかと思われる。
【参考記事】
●bitFlyer(ビットフライヤー)を徹底調査! 手数料無料で安心してはいけない真の理由
●仮想通貨で億り人になったひろぴーが語る米ドル/円よりビットコインが儲けやすいワケ
また、それ以外の会社もビットバンク、QUOINE、Zaifなど、筆者も名前を聞いたことのある会社が第1弾登録組ではほとんどだった。筆者の主観では、この中で一番マイナーな存在と感じられたのは、BTCボックスだったが、同社も日本で一番古く仮想通貨交換業の営業を開始した会社とのことであり、由緒ある会社ではあるようだ。
■資本金が業界トップになっていたビットポイントジャパン
金融庁登録の仮想通貨交換業者に資本金を記載した一覧表は、仮想通貨交換業者の第1弾登録が行われた少しあとに、当コーナーへ掲載したことがあった。
【参考記事】
●仮想通貨交換業者11社が金融庁登録!(3) 徹底比較! 資本金の多い会社はどこ?
そのときと比べ、今回掲載した表は資本金の額をアップデートしているのだが、大きく資本金が増えていたことに驚かされたのがビットポイントジャパンだ。上の記事に掲載した時点では4億3000万円だったのだが、これが44億3000万円と約10倍に増えていたのだ。
仮想通貨交換業者一覧(再掲載) (2017年9月29日登録) |
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登録番号 | 仮想通貨 交換業者名 |
資本金 |
関東財務局長 第00001号 |
株式会社 マネーパートナーズ |
31億円 |
関東財務局長 第00002号 |
QUOINE 株式会社 |
約20億円 |
関東財務局長 第00003号 |
株式会社 bitFlyer |
41億238万円 |
関東財務局長 第00004号 |
ビットバンク 株式会社 |
11億3100万円 |
関東財務局長 第00005号 |
SBIバーチャル・ カレンシーズ株式会社 |
9億8000万円 |
関東財務局長 第00006号 |
GMOコイン株式会社 | 17億5800万円 |
関東財務局長 第00007号 |
ビットトレード 株式会社 |
1億100万円 |
関東財務局長 第00008号 |
BTCボックス 株式会社 |
1億6516万円 |
関東財務局長 第00009号 |
株式会社ビット ポイントジャパン |
44億3000万円 |
近畿財務局長 第00001号 |
株式会社フィスコ 仮想通貨取引所 |
3億8706万円 |
近畿財務局長 第00002号 |
テックビューロ 株式会社 (取引所の名称は 「Zaif(ザイフ)」) |
8億3013万円 |
※資本金は各社公式サイトなどをザイFX!編集部が調査してまとめた
※資本準備金を含む場合もあります
上表を見ればわかるとおり、この資本金の額は金融庁に登録された仮想通貨交換業者の中では最大手と言われるbitFlyerを抜いて第1位となるものだ。
先ほども述べたとおり、資本金の額はその会社の現在の財務状況を示すものではないが、株主の力の入れ具合は感じさせてくれるもの。ビットポイントジャパンはこれからさらに仮想通貨事業を本格展開させていこうとしているのだろうか。同社の本気度が感じられる動きだ。
ちなみにビットポイントジャパンは、FXトレーダーにはおなじみの高機能ツール、メタトレーダー4(MT4)でビットコインが取引できることを大きな売りとしている会社だ。
【参考記事】
●ビットコインをMT4で取引できる!!! 超便利なMT4スマホアプリを紹介!(ひろぴー)
■MT4で為替とともに仮想通貨のチャートも見られる!
ここでメタトレーダー4(MT4)絡みでちょっと余談を1つ。
FX会社のFXトレード・フィナンシャルでは最近、ビットコイン/円、リップル/円、モナコイン/円、ビットコインキャッシュ/円という4つの仮想通貨のチャートをメタトレーダー4(MT4)で見ることができるようになった。以下のチャートがそれ。
これはFXトレーダーがちょっと仮想通貨のチャートも見てみたいというときになかなか便利だ。
これは同社系列の仮想通貨交換業者、ビットトレードからレート提供を受けたものとのこと。ただし、FXトレード・フィナンシャル自体は仮想通貨交換業者ではないから、仮想通貨の取引はできない。
【参考記事】
●メタトレーダー4(MT4)でリップルやビットコインチャートを見る方法とは?
資本金のことに話を戻すと、コインチェックは仮想通貨交換業者にまだ登録されていないから上表には入っていないが、同社の資本金はわずか9200万円しかない。あれだけ大規模にテレビCMを打ち、業界大手と言われる存在にしては少なすぎる資本金には筆者も以前から違和感を感じていた。
ただ、コインチェックが多額の利益剰余金を上げていた可能性はあり、断定はできないものの、純資産がもっとずっと多い可能性はありそうだ。
コインチェックはユーザーに対して、不正流出したNEMの補償をすると先に発表しているが、それはまだ実際に実行されたわけではない。コインチェックでNEMを保有していたユーザーにとっては、コインチェックがどれだけの純資産を持っているのか、気になるところだろう。
■第2弾ではDMM系のDMM Bitcoinが金融庁へ登録
さて次に、金融庁への仮想通貨交換業者登録第2弾だが、これが発表されたのは2017年12月1日のことだった。このときは下表のとおり、4社が新たに登録された。
仮想通貨交換業者一覧 (2017年12月1日登録) |
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登録番号 | 仮想通貨 交換業者名 |
資本金 |
関東財務局長 第00010号 |
株式会社 DMM Bitcon |
12億9000万円 |
関東財務局長 第00011号 |
株式会社ビット アルゴ取引所東京 |
1000万円 |
関東財務局長 第00012号 |
エフ・ティ・ティ 株式会社 |
1000万円 |
近畿財務局長 第00003号 |
株式会社Xtheta | 6000万円 |
※資本金は各社公式サイトなどをザイFX!編集部が調査してまとめた
※資本準備金を含む場合もあります
さらに、2017年12月26日にはもう1社が登録された。これが第3弾ということになる。
仮想通貨交換業者一覧 (2017年12月26日登録) |
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登録番号 | 仮想通貨 交換業者名 |
資本金 |
関東財務局長 第00013号 |
株式会社BIT OCEAN |
1000万円 |
※資本金は各社公式サイトなどをザイFX!編集部が調査してまとめた
※資本準備金を含む場合もあります
この第2弾、第3弾の会社のうち、DMM Bitcoinは登録時には東京ビットコイン取引所という社名だったものが、その後、変更されたもの。DMM BitcoinはDMM.com証券と同じDMM.comグループが運営する仮想通貨交換業者であり、資本金も12億9000万円と10億円を超えている。
【参考記事】
●DMM Bitcoinを徹底調査! アルトコインが豊富なFX(レバレッジ取引)のスプレッドは?
そのイメージキャラクターはDMM.com証券と同じくローラだ。DMM Bitcoinの公式サイトではローラが金ピカに輝いて存在感を示しており、メジャーな仮想通貨交換業者がまた新たに登場したという感がある。
■資本金がわずか1000万円という会社が3社
だが、2017年12月に金融庁登録を果たした会社のうち、DMM Bitcoin以外の4社はどうだろうか。
これら4社は資本金がいずれも1億円に満たない。さらに、わずか1000万円という会社が3社もある。
改正資金決済法(通称:仮想通貨法)では金融庁登録にあたって、資本金は1000万円以上あればよいことになっており、1000万円でも適法ではあるのだが、多額の顧客資産を預かる可能性がある仮想通貨交換業者としてはこの資本金の額では心許ないのではないだろうか。
なお、2017年2月12日現在、この4社のうち、ビットアルゴ取引所東京とXthetaは営業を休止している模様だ。また、エフ・ティ・ティは仮想通貨販売所を運営する以外に、FXの情報商材を販売している会社のようだ。そして、BIT OCEANは公式サイトと思われるところへ行ってみると、ほとんどの内容が英語で書かれている。
これらのことを読者のみなさんはどう思われるだろうか?
個々の会社の内情というものは、そう簡単にはわからない。金融庁はどのような方針で登録を認めているのか、細かいところもわからない。
ただ、金融庁に登録していればまあまあ安全と言えるかも…と筆者としては考えたかったのだが、今はそうとも言い切れず、やはり「金融庁登録は最低条件」ぐらいに考えるしかないということを改めて感じている。
■みなし仮想通貨交換業者がどこなのか公表されていなかった
最後にコインチェックと同様のみなし仮想通貨交換業者について触れておこう。
おさらいしておくと、みなし仮想通貨交換業者とは改正資金決済法施行以前から、仮想通貨交換業を行っていた業者であり、同法施行から6カ月以内に登録を申請したが、まだ登録が完了しておらず、といって登録を拒否もされていない状況にある業者のことだ。
そのような状況であるならば、金融庁登録が完了していなくても、今のところは仮想通貨交換業の営業をしていてOKということなのだ。
といっても、金融庁は最近になるまでどの会社がみなし仮想通貨交換業者に該当するのかということを公表していなかった(※)。ということは、金融庁登録をしていない会社が仮想通貨交換業の営業をしていた場合、ユーザーとしてはそれが違法営業なのか、合法営業なのか、判断することが実質できない状態にあったということになる。
(※コインチェックのように、現在はみなし仮想通貨交換業者として営業している、ということを自分で発表している会社はあった。ただ、金融庁サイドからの公式な発表はこれまでなかった)
この微妙な状況はコインチェック事件が勃発して、しばらく経ってから解消された。それは2018年2月2日に金融庁から発表された「コインチェック株式会社に対する立入検査の着手及び仮想通貨交換業者に対する報告徴求命令の発出について」というリリースによってだった。
これはコインチェックへ立入検査することなどを知らせるリリースだったのだが、それ以外に報告徴求命令を仮想通貨交換業者に対して行ったことも書かれており、そこにみなし仮想通貨交換業者の社名が列挙されていたのだ。
このような変則的な発表の仕方により、みなし仮想通貨交換業者がどこなのかが、金融庁から公式に明らかになったのだった。
■家入一真氏率いるCAMPFIREもみなし仮想通貨交換業者
現在、みなし仮想通貨交換業者は全16社あり、その一覧は下表のとおりだ。
<みなし仮想通貨交換業者> | |
仮想通貨 交換業者名 |
資本金 |
コインチェック 株式会社 |
9200万円 |
みんなのビットコイン 株式会社 |
3000万円 |
Payward Japan株式会社 | 3000万円 |
バイクリメンツ株式会社 | 3000万円 |
株式会社CAMPFIRE | 11億6000万円 |
東京ゲートウェイ 株式会社 |
不明 (ウェブサイトに記載なし) |
株式会社LastRoots |
6000万円 (クラウドファンディングで6.3億円調達) |
株式会社deBit | 2000万円 |
株式会社エターナルリンク | 7500万円 |
FSHO 株式会社 | 3000万円 |
株式会社来夢 | 1000万円 |
ビットステーション 株式会社 |
不明 (ウェブサイトに記載なし) |
ブルードリームジャパン 株式会社 |
1500万円 |
株式会社 ミスターエクスチェンジ |
1000万円 |
株式会社BMEX | 1000万円 |
株式会社bitExpress | 4000万円 |
※資本金は各社公式サイトなどをザイFX!編集部が調査してまとめた
※資本準備金を含む場合もあります
全16社のうち、資本金が1億円以上あることがハッキリしているのはCAMPFIREのみ。残りの15社はコインチェックを含め、資本金が1億円未満か不明の会社ばかりだ。
CAMPFIREはpaperboy&co.(現GMOペパボ)の創業者である家入一真(いえいりかずま)氏が代表を務めるクラウドファンディングの会社であり、テックビューロが提供するCOMSAを利用したICOを実施するという話が一時、流れていたが、それはのちに否定された。
また、CAMPFIREは「FIREX」という仮想通貨取引所を運営していたが、それは現在、休止中となっている。
【参考記事】
●「ICO」とは? 「IPO」と何がどう違うの?テックビューロ発、「COMSA」のしくみは?
これ以外にみんなのビットコインは、みんなのFXでおなじみのトレイダーズ証券の系列会社だ。
また、Payward Japanは米国の大手仮想通貨取引所・krakenを運営する会社の日本法人。krakenはCMEのビットコイン先物が参考基準レートを算出するために使っている4つの仮想通貨取引所の1つであり、欧米ではメジャーな存在だ。ザイFX!に掲載しているビットコインのチャートはこのkrakenが提供しているレートから生成している。
【参考記事】
●ビットコイン/円がついに200万円突破!! CMEビットコイン先物は日本で取引できる!?
■「ナゾ」と感じられるみなし仮想通貨交換業者が多い
このようにみなし仮想通貨交換業者の中には筆者も「知っている顔」が含まれてはいるものの、「ナゾ」と感じられる会社が多いのも事実(あくまで個人の感想にすぎないが…)。
みなし仮想通貨交換業者には三重県、愛知県、岐阜県、福岡県、沖縄県など首都圏以外に位置する会社が結構あるのも目を引いた(別に仮想通貨交換業者が首都圏に位置しなければならないという法律があるわけではないが…)。
独自の仮想通貨を発行しているとする会社が散見されるのも気になる話だった。
そんな中から1つだけご紹介しよう。先ほどの一覧表にある来夢という会社は資本金1000万円。公式サイトを見ると、「株式会社来夢は三重県鈴鹿市の輸入商社です」と書かれており、豊かな自然を感じさせる写真が画面いっぱいに拡がる。
みなし仮想通貨交換業者の1つ、株式会社来夢の公式サイト。どこが仮想通貨に関係あるのだろう?と感じてしまう画面だが…。
来夢は「ワンタッチテント、書画カメラ、LEDライト等ユニークな商品」を扱っているという。
仮想通貨とは何の関係もない会社に見えるが、仮想通貨に関する事業もやっており、それは「フィジカル・ビットコインのOEM、製造、販売からビジネス応用に関するコンサルティング」とのことだ。
フィジカル・ビットコインとは、ビットコインを現実に手に触れることができるコインにしたもののようだ。コールドウォレットの一種と言っても良さそうなのだが、ここでは詳細は差し控える。
このような会社がみなし仮想通貨交換業者の1つということであり、現時点では、仮想通貨交換業の営業を行っていれば、それは合法ということになるのだ。
■金融庁が“ずるずる営業”をもう続けさせないとの方針に…
なお、金融庁登録の本来の期限とされていた2017年9月30日からもう4カ月以上が経過している。なのに、みなし仮想通貨交換業者はまだたくさんあり、ずるずると営業可能な状態に置かれたままだ。みなし営業が可能な期間に今のところ制限は実質ないようだ。そんな中で、今回のコインチェック事件は起きた。
金融庁としても、このまま“無期限みなし営業”をずるずる続けさせていいのか、疑問を感じたのか、2月10日には金融庁が「『みなし業者』が営業できる期間を限定する方向で検討している」との報道が共同通信から流れた。その報道によると、「一定期間を経ても安全管理体制が不十分で基準を満たさない場合は登録を拒否する方針」とのことだ。
また、同じく2月10日には、金融庁が無登録のまま仮想通貨交換業を続けている業者へ対し警告を出す方針、ということを日経新聞の電子版が伝えている。今回警告を出す予定なのはマカオに本社があるブロックチェーンラボラトリーという会社だという。同社は金融庁無登録のまま、日本で営業活動を行っているとのことだ。
ちょっと緩い感じで進んできたのでは?と思われる金融庁の仮想通貨交換業者対応も、コインチェック事件を受けて、厳しさを増しつつあるということが感じられる昨今だ。
以上、仮想通貨交換業者およびみなし仮想通貨交換業者についてお伝えしてきた。
ザイFX!としては、金融庁へ正式に登録された仮想通貨交換業者でない業者で仮想通貨の取引をすることはおすすめできない。
さらにいえば、金融庁に登録されていれば100%安心というわけでもないと考える。それぞれの会社が信用できるかどうかは、総合的にさまざまな情報を元にして個々に頭を悩ませて考えるしかないのだ。
(ザイFX!編集長・井口稔 編集協力/ザイFX!編集部・庄司正高)
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