■コインチェックが「単なる違法業者」って説はホント?
580億円相当の仮想通貨・NEM(ネム)不正流出騒動を起こしたコインチェック(Coincheck)。同社は2018年2月13日から日本円での出金を再開すると先に発表、それが無事行われるかに注目が集まっている。
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そのコインチェックは2月13日現在、仮想通貨交換業者として金融庁に登録されていない。なのに同社は仮想通貨交換業の営業をしていた。これを指して、ある著名人が自身のツイッターで、コインチェックは「単なる違法業者」と断定していたことがあった。
しかし、コインチェックは大騒動を起こしてしまったものの、違法業者ではない。コインチェックは金融庁登録の仮想通貨交換業者ではなかったが、“みなし仮想通貨交換業者”ではあったからだ。
では、みなし仮想通貨交換業者とはどのような存在なのか? 本記事では仮想通貨交換業者、そして、みなし仮想通貨交換業者について取り上げてみたい。
■改正資金決済法施行から金融庁登録第1弾までの流れ
改正資金決済法(通称:仮想通貨法)は2017年4月1日に施行された。これにより、金融庁登録がなくては仮想通貨交換業者は営業できないことになった。
といっても、同法に基づいて金融庁へ申請したら即日登録されるわけではない。登録には時間がかかる。そうなると、改正資金決済法施行と同時に従来から仮想通貨交換業を行っていた業者はいきなり違法状態になってしまう。それでは困るので、このルールには6カ月の猶予期間が設けられていた。
すると、猶予期間の期限は法律施行6カ月後の2017年9月30日ということになる。筆者はそれまでに少しずつ登録業者が出てくるのかと思っていたのだが、それが一向に出てくる気配がなかった。ところが、期限ギリギリの2017年9月29日になって仮想通貨交換業者11社がいっせいに金融庁登録を果たしたのだった。
これが仮想通貨交換業者の金融庁登録第1弾だ。
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■経過措置により、みなし仮想通貨交換業者として営業は可能
そして、コインチェックは仮想通貨業界大手でありながら、この第1回登録11社の中に入っていなかったのだった。同社は金融庁登録ができないまま、6カ月の猶予期間が過ぎてしまったのだ。
そうなると、営業できなくなるのかと思いきや、そうではなかった。猶予期間後も「経過措置」というものがあったのだ。
2017年4月1日の改正資金決済法施行前から仮想通貨交換業を行っていた業者は、2017年9月30日までに登録申請を行っていれば、仮想通貨交換業を依然として行っていてOKなのである。これが“みなし仮想通貨交換業者”だ。
当該業者は金融庁へ登録されるか、登録を拒否されるまではみなし仮想通貨交換業者として営業できるのである。
では、みなし仮想通貨交換業者として営業できる期間はどれぐらいなのか?
コインチェックは2017年9月13日に発表した「仮想通貨交換業者登録に係る申請書提出のお知らせ」というリリースに、9月以降も2カ月間はみなし仮想通貨交換業者として営業できる旨を9月29日になって追記していた。
ただ、その後、2017年11月13日や12月1日に同社が出したリリースでは、「『仮想通貨交換業者に関する内閣府令』第36条に記載の通り、申請より2ヶ月の経過後に関しましても、通常通りサービスをご提供させていただくことが可能」と記載し、2カ月経ったあとでも営業可能としていたのだった。
コインチェックのリリースにある内閣布令第36条を見てみると、金融庁が登録を決定するまでの期間は確かに2カ月間とされているのだが、申請を補正する期間などはその期間から除外するといったことが書かれており、この規定があることから、コインチェックはみなし仮想通貨交換業者としての営業を2カ月間を過ぎたあとも長期間続けていたものと思われる。
そして、2017年12月にはさらに金融庁登録を果たした仮想通貨交換業者が5社増えたのだが、この中にもコインチェックは入っていなかった。
■コインチェックはなぜ、金融庁に登録できていないのか?
業界大手であり、著名タレントの出川哲朗が出演するCMをガンガン流しているような状況であっても、金融庁はコインチェックの登録を認めようとしなかった。そんな中で起こったコインチェック事件だったから、金融庁はある意味、面目を果たしたと言えるだろうか。

金融庁は、コインチェックのセキュリティ面や資金管理面がずさんだと見抜いていて、登録をなかなか認めなかったのだろうか? であれば、「金融庁さん、さすが~」という話になるが、登録をなかなか認めなかった理由を金融庁は公式には発表していない。
登録がなかなか認められなかったことについて、コインチェック側は何と言っていたのだろうか?
コインチェックの和田晃一良社長は2017年9月29日の金融庁登録第1弾があった日にコインチェックが登録されなかったことを受け、「通貨の種類が多いため少し遅れていますがご安心していただければと思います!」と自身のツイッターでツイートしていた。

通貨の種類が多いことを金融庁登録に手間取っている理由としていたのだ。
ただ、コインチェックが金融庁に登録できない理由は単に通貨の種類が多いからだけではなく、匿名性が特に高く、マネーロンダリングなどに使われやすいと考えられる3つの仮想通貨、Monero(モネロ)、DASH(ダッシュ)、Zcash(ジーキャッシュ)を取り扱っているからではないか、という説がネット上ではかなり流れていた。
今回の騒動を起こしたため、コインチェックの金融庁登録はより険しい道になったと推測されるが、それを乗り越えて、金融庁登録に至ったとしても、そのときは匿名性の高い3つの仮想通貨の取扱いを止めることと引き替えで…といったことになるかもしれない。この点にはちょっと注意しておいた方がいいだろう。
■金融庁登録業者であれば100%安全なのか?
なぜ、金融庁がコインチェックの登録をなかなか認めようとしなかったのか、その真の理由はわからないが、もしも仮想通貨の取引をするなら、やはり、金融庁に登録している会社の方がいい──今回のコインチェック事件を受けて、そう思った人は多いのではないだろうか。
ザイFX!では広告を掲載したり、仮想通貨取引所/販売所比較コンテンツで紹介するのは、金融庁に登録された会社であることを最低条件とする自主ルールを決めていた。だから、幸いなことにコインチェックは業界大手でありながら、ザイFX!では広告などを掲載してはいなかった。
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では、金融庁登録業者であれば100%安全なのだろうか? そこまではなかなか言い切れないところだ。
まず、一般論として、金融庁が免許を与えたり、登録を認めた会社であったとしても、銀行、証券会社、FX会社などで破綻した会社は長い歴史の中ではいくらでもある。仮想通貨交換業者にも同様の可能性はあると言った方が自然だ。
ただ、そんな一般論以上に仮想通貨交換業者については、金融庁登録=まずは安心と言って良いのか、疑問があるように思えるのだ。
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