■市場のリスクオフ懸念が和らいできた?
リスクオフにおびえてきた市場の、緊張感がすこし和らいできた。その証拠として、金(ゴールド)と米ドル全体(ドルインデックス)の反落、そして円の軟調が挙げられる。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
米中協議や英EU離脱問題などのリスク要素は、なお決着がついていないが、少しでも緩和の兆しがあれば、マーケットは一斉にリスクオンのムードに傾く。実質的な材料は何もないのに、英・アイルランド首脳会談だけで昨日(10月10日)、英ポンドが急伸したことは、象徴的な出来事であろう。
もっとも、たびたび指摘してきたように、市場センチメントは最悪で逆イールドになるなど金利低下も著しかったが、肝心の米国株は昨年(2018年)から高値圏においてかなり波乱の展開となってきたものの、ベア(下落)トレンドへ転換はしていない。
(出所:Bloomberg)
だから、相場全体の状況をよく吟味すればわかるように、リスクオフにおびえながら、相場自体は決して本格的なリスクオフになっていない。ゆえに、たとえ実質的な材料が出なくても、少し兆しがあれば、マーケットは激しくそれに反応し、「リスクオフに警戒」というセンチメントに食傷気味だったことが浮き彫りになる。
■「希望」や「確信」がないから「失望」や「サプライズ」もない
筆者は米ドル全体(ドルインデックス)の高値波乱や反落のリスクをずっと指摘してきただけに、目先の市況は想定の範囲。もちろん、米中協議も英EU離脱も、諸リスク要素はなくなっていないから、これから何らかの報道で再度米ドル全体が急伸する場面があってもおかしくない。
しかし、その場合でもドルインデックスがガンガン高値をつけていくとは思わない。なにしろ前述のように、そもそも市場関係者の大半は「リスク警戒感」に「疲れ」ており、その上、米中協議にしても、英EU離脱問題にしても、目先、確かに期待している向きもあるが、どれぐらい期待しているかと聞かれると、ほとんどの市場関係者は苦笑することだろう。
要するに、そもそも期待があっても、「希望」や「確信」なんかは誰も持っていないから、仮にリスク要素の再浮上があっても、「失望」とか「サプライズ」とかのセンチメントには至らないはずだ。だから、激しい値動きにはなりにくく、リスクオフの継続があっても「底割れ」の状況を回避できると思う。
言いたいことも、実に繰り返し指摘してきているが、シンプルに言えば、「今はリスクオフの時期ではない」ということに尽きる。
それはより大きな視点、また、より高い位置から市場の内部構造を俯瞰しないとなかなか説明しきれないから、今回はそのテーマを深追いしないが、値動き、すなわちプライスアクションのポイントを、前回の続きでフォローしておきたい。
【参考記事】
●米雇用統計の結果にかかわらず株高になる!? 米ドル/円は保ち合い継続か(2019年10月4日、陳満咲杜)
昨日(10月10日)の反落で、かねてから指摘して…
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