■「ユニコーン」の失速が米株反落の引き金を引く?
先週(9月30日~)は米国の経済指標で動きました。
ISM製造業景況指数は2か月連続の50ポイント割れとなる10年ぶりの低水準。ISM非製造業景況指数も3年ぶりの低水準でした。
10月30日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ確率は一時90%台まで上昇しています。
(出所:Bloomberg)
米経済の減速が顕著になってきましたが、米株は利下げ期待から上昇しています。
懸念材料となっているのが「ユニコーン」と呼ばれる有力新興企業の失速。
巨額赤字からIPO(新規株式公開)を撤回したWeWorkを筆頭に、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)との違いが鮮明になりつつあります。
個人的にもWeWorkへの入居を考えたことがあったのすが、ためらってしまいますね。
【参考記事】
●米ドル/円は104円台を下抜けると101円へ。今年も10月から米国株のセンチメント悪化(10月3日、西原宏一)
●新元号は「令和」! ご祝儀相場に期待!? ブレグジット注意だがドル/円は押し目買い(4月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
WeWorkに出資していたソフトバンクへの影響も懸念されていますね。「ソフトバンク・ショック」の到来を指摘する声もあります。
ユニコーン企業の失速が米株反落のきっかけになる可能性もあり、要注意ですね。
■米株の宴は終わっていない? 香港デモは悪化&長期化
ただ、FRB(米連邦準備制度理事会)に緩和余地が残されているため、米株市場ではリスクオフ要因や経済指標で下がっても利下げ期待で戻される、という展開が続いていますね。
景気の先行指標であるSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)も高値更新をうかがう水準にあります。「宴は終わっていない」と見る向きも根強い。
宴の続行を期待する人がいないと市場は下がらないので、むしろそうした声は高まってほしいくらいです。
経済指標が示すように、いずれ米株は下落傾向を強めていくとの見方は変わりません。
もうひとつ、リスクオフ要因として注視している香港デモも、情勢は悪化の一途です。
香港政府は緊急条例を適用して、議会を通さずにマスクの着用を禁止する「覆面禁止法」を制定。
対抗した市民はあえてマスクを着用してデモに参加するなど、メチャクチャになってきましたね。
香港情勢は確実に悪化しているのですが、同時に長期化もしており、市場への影響を測りににくくなっています。リスクオフ材料であることは間違いないのですが。
■米中協議再開。対EUでは史上最大の報復関税
今週10月8日(火)から中国が連休明け。10月10日(木)には米中貿易協議が再開されます。
【参考記事】
●トランプ米大統領の天敵「AOC」とは…!? ユーロ/円、英ポンド/円は戻り売りか(9月30日、西原宏一&大橋ひろこ)
交渉の行方を占うのは難しいですが、これまでの経緯を考えると部分合意も難しく、決裂する可能性のほうが高そうには感じますね。
気になるニュースも出ています。トランプ政権が発表していた対EU(欧州連合)報復関税をWTO(世界貿易機関)が承認しました。
WTO史上最大の報復関税となるそうで、貿易戦争が米欧へ波及する可能性もありそう。
また、いよいよ大詰めのブレグジットでは、これまで離脱延期申請をかたくなに否定していたジョンソン英首相が延期要請で同意したとの報道が出ています。
混沌とした情勢が続きそうですね。
【参考記事】
●混迷のブレグジット…。短期再開となった英議会でボリス首相が喫した6連敗とは?(9月12日、松崎美子)
●英ポンドは買いか? 売りか? 「合意なき離脱」の可能性は本当にない!?(9月13日、松崎美子)
■暴落劇の多い10月相場
英ポンドは手を出しづらいですが、株安とノーディール・ブレグジット(合意なき離脱)が同時にくるようだとボラティリティが高まる。
10月相場に入ると思い出すのが、ブラックマンデーやリーマン・ショックなどの暴落です。
【参考記事】
●リーマン・ショックにアベノミクス相場! プレイバック、平成30年間の米ドル/円相場
●リーマン・ブラザーズ破綻で為替はこれからどう動く?(1)~ドル/円は95円を割れる!~
●リーマン・ブラザーズ破綻で為替はこれからどう動く?(2)~クロス円の下落で大騒ぎになる!~
●ブラックマンデー再来に注意! 米利上げが世界的金融恐慌を起こしてもおかしくない!(2015年7月31日、陳満咲杜)
統計的に見ると、10月のNYダウは1990年以降、19勝10敗。
統計上は上昇した年のほうが多いのですが、1929年の世界恐慌のきっかけとなった「暗黒の木曜日」は10月24日(木)。
1987年10月19日(月)のブラックマンデーでは、NYダウが1日で22.6%も下落しました。
リーマンブラザーズが破たんしたのは2008年9月でしたが、日経平均が6000円台へと急落したのは10月28日(火)でした。
暴落が多いのも10月なんですよね。昨年(2018年)も10月以降、世界同時株安が進みました。
【参考記事】
●世界的に株価脆弱で、ドル/円は戻り売り! 米国は中国を為替操作国に認定するのか!?(2018年10月15日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
昨年(2018年)は日経平均が10月2日(火)に年初来高値を、NYダウは10月3日(水)に史上最高値を更新してから反落し、日経平均は3か月で5500円の暴落。
米ドル/円も同期間に2019年年初のフラッシュ・クラッシュを含めると10円幅の下落でしたね。
現在の米ドル/円は、年初来高値・安値の50%と月足の一目均衡表転換線が重なる108.40円水準でトップアウトした可能性が濃厚。
108.50円を超えない限り、戻り売り方針でいいのでしょう。昨年(2018年)10月の再来となればボラティリティも高まるはずです。
【参考記事】
●米ドル/円は104円台を下抜けると101円へ。今年も10月から米国株のセンチメント悪化(10月3日、西原宏一)
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?
(出所:Bloomberg)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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