
■米ドル/円の最狭スプレッドは0.1銭原則固定に
このところFX業界が騒がしい。2019年10月中旬、突如として米ドル/円のスプレッド競争が勃発したからだ。
激しい競争が繰り広げられた結果、2019年10月30日(水)現在、米ドル/円スプレッドの最狭水準は0.1銭原則固定まで狭まっている。
この水準を採用しているのは、ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF]とトレイダーズ証券[みんなのFX]、[LIGHT FX]の2社3サービス。ただし、トレイダーズ証券[みんなのFX]、[LIGHT FX]の通常スプレッドは0.2銭原則固定で、0.1銭原則固定は期間限定のキャンペーンスプレッド(2019年11月29日まで)だ。
通常スプレッドとして恒常的に0.1銭原則固定を実現しているのは、ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF]のみということになる。

【参考記事】
●10月15日の異変!? ドル/円0.2銭原則固定へ!「連鎖的スプレッド縮小騒動」の衝撃
●「連鎖的スプレッド縮小騒動」続報。米ドル/円はついに0.1銭原則固定へ!
直近のスプレッド競争の動向についてはあとで取り上げるとして、改めて各社の米ドル/円スプレッドの現状を確認すると、ゴールデンウェイ・ジャパン[FXTF]とトレイダーズ証券[みんなのFX]、[LIGHT FX]の0.1銭原則固定を筆頭に、ざっと見ただけで0.2銭原則固定に10社12サービス、0.3銭~0.4銭原則固定に5社6サービスがひしめき合っていることがわかる。
ちなみに、0.3銭原則固定は今回のスプレッド競争が勃発するまで、取引量によってスプレッドが変わるSBI FXトレードを除けば業界最狭だった水準だ。
FX会社 [サービス名] |
米ドル/円 スプレッド |
ゴールデンウェイ・ジャパン [FXTF] |
0.1銭 原則固定 |
トレイダーズ証券 [みんなのFX] |
0.1銭 原則固定 (11/29までのキャンペーン) |
トレイダーズ証券 [LIGHT FX] |
0.1銭 原則固定 (11/29までのキャンペーン) |
GMOクリック証券 [FXネオ] |
0.2銭 原則固定 |
YJFX! [外貨ex] |
0.2銭 原則固定 |
セントラル短資FX [FXダイレクトプラス] |
0.2銭 原則固定 |
IG証券 [標準] |
0.2銭 原則固定 |
DMM.com証券 [DMM FX] |
0.2銭 原則固定 |
外為ジャパンFX | 0.2銭 原則固定 |
FXブロードネット [ブロードライトコース] |
0.2銭 原則固定 |
FXブロードネット [ブロードコース] |
0.2銭 原則固定 |
マネックス証券 [FX PLUS] |
0.2銭 原則固定 |
楽天証券 [楽天FX] |
0.2銭 原則固定 (11/23までのキャンペーン) |
外為どっとコム [外貨ネクストネオ] |
0.2銭 原則固定 (11/23までのキャンペーン) |
SBI FXトレード | 0.2銭 原則固定 (1~1,000通貨まで) |
ヒロセ通商 [LION FX] |
0.3銭 原則固定 |
JFX [MATRIX TRADER] |
0.3銭 原則固定 |
マネーパートナーズ [パートナーズFX] |
0.3銭 原則固定 |
インヴァスト証券 [トライオートFX] |
0.3銭 原則固定 |
マネーパートナーズ [パートナーズFX nano] |
0.4銭 原則固定 |
岡三オンライン証券 [岡三アクティブFX] |
0.4銭 原則固定 |
※スプレッドが原則固定制の店頭FXは、24時間、上表のスプレッドが適用される国内FX会社と、日本時間の8時~28時など主要な時間帯のみ上表のスプレッドが適用される国内FX会社がある。スプレッドはすべて例外あり
※外為ジャパンFXはDMM.com証券の別ブランド
【参考コンテンツ】
●FX会社徹底比較!:取引コストで比べる[米ドル/円スプレッドの狭い順]
1銭を切る低スプレッド環境下で、わずか0.1銭のスプレッドを挟み各社がひしめき合うこうした状況は、他の主要通貨ペアでもある程度見られるものの、米ドル/円については特にその傾向が強い。
とはいえ、昔からずーっとこうだったワケではく、今回のような凄まじいスプレッド競争を繰り返すうちに、こういう状況ができあがっていったのだ。
さらに言えば、今現在、米ドル/円スプレッドの業界最狭水準である0.1銭原則固定やそれに次ぐ0.2銭原則固定は、別に今回がFX史上初登場というワケではない。実は、過去にも一定の条件下でなら登場したことがあった。
米ドル/円スプレッドをめぐってFX業界が色めき立っているこのタイミングで、少し昔のことを振り返ってみよう。
■約10年前は米ドル/円1銭程度で業界トップ水準
今からおよそ10年前(2008年~2009年頃)の米ドル/円スプレッドは0銭~(変動制)を標榜するFX会社などもあるにはあったが、原則固定で考えると1銭かそれを少し割り込むくらいが業界最狭水準だった。
たしか、はじめに1銭原則固定を発表した主要なFX会社は外為オンラインだったのではないだろうか。2008年の中盤に差し掛かる頃だったと記憶している。今でこそ原則固定スプレッドは当たり前のように採用されているが、初登場の当時はスプレッドが固定されるということ自体、かなり衝撃的だった。
【参考記事】
●スプレッド0.8銭固定のFX会社登場!FX会社のスプレッド競争が再燃か?
●「0銭~」や「0.8銭固定」など、スプレッド競争がさらに激しく!
この頃のFX業界は、一部で残っていた電話から主流のオンラインへと、ユーザーの取引形態を完全移行しつつあった時期に当たる。その少し前までは、米ドル/円であれば3~5銭程度のスプレッドが当たり前、なおかつ別途取引手数料もかかるという会社も少なくなかったのだが、この頃からオンラインへの完全移行の流れとともに、徐々に取引手数料無料化やスプレッド縮小化へ向かって業界全体が動き始めたのだった。
時間軸で見れば、2008年秋のリーマンショックによって為替相場が大変動に見舞われた時期と近いのだが、相場の動きとは裏腹に、この頃のスプレッドをめぐるFX業界の動きは、まだ牧歌的だったと言える。

(出所:Bloomberg)
■FX史上もっとも過酷なスプレッド競争の時代へ
2011年になると、DMM.com証券[DMM FX]を筆頭に当時ネオ系と呼ばれたいくつかのFX会社で、期間限定のスプレッド縮小キャンペーンが頻繁に開催されるようになった。
期間限定とはいえ、2011年の段階でDMM.com証券[DMM FX]などでは、一時的なものながら、米ドル/円0.4銭原則固定というスプレッドが提供されていたというのだから驚きではないだろうか?

そして、このあたりから一気にスプレッド競争は加速していくことになる。おそらく、FX史上もっとも長く、過酷なスプレッド競争の時代への突入だ。
1つ大きな契機となったのは、2011年12月下旬に行われたGMOクリック証券[FXネオ]の通常スプレッド縮小だろう。ここでGMOクリック証券[FXネオ]は米ドル/円スプレッドを0.8銭原則固定から0.5銭原則固定に縮小した。期間限定ではなく、恒久的な縮小である。
しばらくすると、DMM.com証券[DMM FX]が、期間限定キャンペーンで提供していた米ドル/円スプレッド0.5銭原則固定の恒久化を発表するなど、GMOクリック証券[FXネオ]の動きを追随するFX会社も出てきた。
さらに、この動きを受けて、原則固定という表記ではなかったものの、サイバーエージェントFX(現YJFX![外貨ex])が米ドル/円スプレッドを標準0.4銭に縮小する期間限定キャンペーンをスタートさせ、スプレッド競争を一歩リードしたかと思いきや、その直後にGMOクリック証券[FXネオ]が、米ドル/円の通常スプレッドを0.5銭原則固定から0.4銭原則固定に縮小。
そして、GMOクリック証券[FXネオ]を追いかけるようにDMM.com証券[DMM FX]も米ドル/円スプレッドを0.4銭原則固定で提供するキャンペーンを開始した。
GMOクリック証券[FXネオ]とDMM.com証券[DMM FX]を筆頭に急ピッチで競争が進んだ結果、気がつけば、米ドル/円の業界最狭スプレッドは0.4銭原則固定に(変動制で0.3銭~も存在したが、原則固定としては0.4銭が最狭だった)。これが2011年末から2012年2月頃に起こったことの概要だ。
時期 | スプレッド競争に関連する おもなできごと |
2008~2009年頃 | ・米ドル/円スプレッドの業界最狭水準は1銭原則固定かそれより少し狭いくらいで推移 |
2011年2月 | ・DMM.com証券[DMM FX]が米ドル/円0.4銭原則固定キャンペーンを実施 |
2011年12月 | ・GMOクリック証券[FXネオ]が米ドル/円通常スプレッドを0.8銭原則固定→0.5銭原則固定へ縮小 |
2012年2月 | ・DMM.com証券[DMM FX]が米ドル/円通常スプレッドを0.8銭原則固定→0.5銭原則固定へ縮小 |
・サイバーエージェントFX(現YJFX![外貨ex])が米ドル/円標準0.4銭キャンペーンを実施 | |
・GMOクリック証券[FXネオ]が米ドル/円通常スプレッドを0.5銭原則固定→0.4銭原則固定へ縮小 | |
・DMM.com証券[DMM FX]が米ドル/円スプレッド0.4銭原則固定キャンペーンを実施(2012年6月に恒久化) |
※ザイFX!編集部作成
■火に油を注いだ新規参入会社
2012年5月末には、激化するスプレッド競争に追い打ちをかける1社が彗星のごとく業界に新規参入した。
金融大手SBIグループが運営するFX専業会社、SBI FXトレードである。
当時、すでに激しいスプレッド競争の渦中にあったFX業界に後発組として参入したSBI FXトレードは、「1通貨から取引できる」「スプレッド4ケタ表示」「米ドル/円スプレッド0.19銭原則固定(1万通貨まで)」という3つの大きな特徴を掲げていた。

いずれも業界初を含む珍しいサービスということでインパクトは大きかったのだが、特に度肝を抜かれたのは1万通貨までの取引限定とはいえ、米ドル/円0.19銭原則固定というスプレッドだ。
上述のとおり、当時の米ドル/円スプレッドの業界最狭水準は0.4銭原則固定。つまり、SBI FXトレードは、1万通貨までの取引については、その半分以下のスプレッドを引っ提げて新規参入してきたワケだ。
しかも新規参入直後から米ドル/円のみならず、複数の通貨ペアでスプレッド縮小を繰り返し、すでに火が付いていたFX業界のスプレッド競争に油を注ぎ続けたのだから凄まじい。
こうした動きに感化されてSBI FXトレードの登場以降、各社でもさまざまな通貨ペアのスプレッド縮小が数多く実施されたのだが、ここで特に記しておきたいのは、2012年8月末、DMM.com証券[DMM FX]とGMOクリック証券[FXネオ]が揃って米ドル/円の通常スプレッドを0.4銭原則固定から0.3銭原則固定に縮小したことである。
これで1万通貨までの取引限定で0.19銭原則固定が適用されるSBI FXトレードを除けば、0.3銭原則固定が米ドル/円スプレッドの業界最狭水準となった。
この0.3銭原則固定という水準は、冒頭で触れた直近のスプレッド競争がはじまる前まで米ドル/円スプレッドの最狭水準だった値だが(※)、当時のスプレッド競争も、ここでは終わっていなかった。
(※1~1,000通貨までの取引限定で、米ドル/円スプレッド0.2銭原則固定が採用されているSBI FXトレードを除く)
つまり、2019年10月30日(水)現在の業界最狭スプレッドである0.1銭原則固定やそれに次ぐ0.2銭原則固定も当時、顔をのぞかせていたのである。
DMM.com証券[DMM FX]とGMOクリック証券[FXネオ]が揃って米ドル/円スプレッドを0.3銭原則固定に縮小した翌日、SBI FXトレードは1万通貨までの取引について米ドル/円のスプレッドを0.15銭原則固定へ、5万1通貨~30万通貨までのスプレッドを0.29銭原則固定へと縮小(1万1通貨~5万通貨まではすでに0.29銭原則固定だった)。
その直後、2012年9月頭には、米ドル/円スプレッドを0.2銭原則固定で提供するFX会社が現れた。外為ジャパンFXだ。あくまで期間限定のキャンペーンだったが、それでもSBI FXトレードのような取引量による制限のない0.2銭原則固定というスプレッドは驚異的だったと言える。
火に油を注ぎ続けるSBI FXトレードは、このあともスプレッド縮小を繰り返し、2012年11月の1カ月だけでも複数の通貨ペアで9回に渡るスプレッド縮小を実施。
その中で1万通貨までの米ドル/円スプレッドは、0.15銭原則固定→0.12銭原則固定→0.11銭原則固定とじわじわ縮小され、最終的に2013年2月の段階で0.1銭原則固定まで縮小された。
時期 | スプレッド競争に関連する おもなできごと |
2012年5月 | ・SBI FXトレード新規参入。米ドル/円通常スプレッドは0.19銭原則固定(1万通貨まで) |
8月 | ・GMOクリック証券とDMM.com証券が揃って米ドル/円通常スプレッドを0.3銭原則固定へ縮小 |
8月 | ・SBI FXトレードが米ドル/円通常スプレッドを0.19銭原則固定→0.15銭原則固定(1万通貨まで)へ縮小 |
9月 | ・外為ジャパンFXが米ドル/円0.2銭原則固定キャンペーンを実施 |
11月 | ・SBI FXトレードが複数の通貨ペアについて、1カ月で計9回の通常スプレッド縮小を実施。米ドル/円通常スプレッドは0.11銭原則固定(1万通貨まで)に |
2013年2月 | ・SBI FXトレードが米ドル/円通常スプレッドを0.11銭原則固定→0.1銭原則固定(1万通貨まで)へ縮小 |
※ザイFX!編集部作成
(次ページでは、FX業界スプレッド競争において、5年あまりの膠着状態に変化をもたらす1社がついに登場!)
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