■州知事選敗北がトランプ大統領の痛手に
みなさん、こんにちは。
今月(11月)に入り、米国と英国では新たな選挙の戦いが始まっています。
まず、米国での州選挙。
米国では、主要な州で11月5日(火)、知事選や議会選が行われました。
結果は、野党・民主党が相次いで勝利。
今回の地方選は、来年(2020年)の大統領選挙に向けて重要なものと位置づけられており、今回の結果は、トランプ大統領にとって痛手となったとの見方が増えています。
特に注目されたのが、ケンタッキー州知事選。
ケンタッキー州は保守色が強く、レッドステート(共和党の地盤)。
共和党現職のマット・ベビン知事はトランプ支持を鮮明にしており、トランプ大統領は投票前日の夜、ベビン氏の応援に駆けつけています。
そして、次のように主張。
「ベビン氏は再選しなければならない。そうでなければ、『トランプが史上最大の敗北』と評されることになる。私をそんな目に遭わせないでほしい」

共和党の現職、マット・べビン知事の応援に駆け付けたトランプ大統領だったが、結果は敗北。米3大メディアは「敗北」を大きく報じることに… (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
米3大メディアは、トランプ大統領の功績についての報道はあまりしませんが、失敗に関しては、大きく取り上げる傾向があると言われています。
そのため、トランプ大統領は、「史上最大の敗北と評される」とメディアを牽制したようです。
そして実際、多くのメディアは、ケンタッキー州での結果について、下記のように、「トランプ大統領の敗北」といったニュアンスで報道しています。
「今回の地方選は(中略)ドナルド・トランプ大統領(共和党)にとって、痛手となったとの見方が出ている」-BBC
「ベビン氏の強硬姿勢はトランプ氏と重なる部分が大きいだけに、同氏の勝敗は来年の大統領選の行方を占う指標になるとみられていた」-CNN
こうした報道は、少しディスカウントして捉える必要はありますが、ケンタッキー州の知事選では、トランプ大統領が応援演説も行っています。
トランプ氏の大統領選挙対策責任者、ブラッド・パースカル氏は、トランプ大統領の応援によってベビン氏の得票率が大きく上昇したと主張していますが、結果は敗北。
再選を目指すトランプ大統領にとって、プラスではないでしょう。
■NYダウは史上最高値更新だが、ドル/円の上値は重い
そして、米議会下院は現在、トランプ大統領の弾劾調査を行っています。
そうした不安定な政治情勢の中、NYダウは最高値を更新。

(出所:Bloomberg)
日経平均は、久しぶりに2万3000円台を回復しています。

(出所:Bloomberg)
米中貿易協議の部分合意に向け、一部関税の撤回を前向きに検討しているとの報道がリスクオンの相場環境を作り出しているのでしょうが、もともとトランプ大統領は、9月頃までは中国との「部分合意」を望まないとコメントしていました。
そのため、こうした部分合意という結論は、トランプ大統領がもともと望んでいるものでもなく、いつ決裂するか不透明な要素をはらんでいます。
そのため、現在、高値圏で推移している米国株も、その上昇スピードは緩慢。
【参考記事】
●NYダウ史上最高値に迫るもバブル懸念…。もしバーストすれば、ドル/円105円割れへ(11月4日、西原宏一&大橋ひろこ)
そして、注目すべきは、米ドル/円の上値が重いこと。
日経平均については2万3000円台を回復、米10年国債利回りも1.8%台まで上昇しています。

(出所:Bloomberg)
加えて、米中貿易協議を巡る部分合意の報道。
これらはすべて、米ドル/円にとってポジティブな材料なのですが、米ドル/円の高値は109.29円と上げ渋り。
米ドル/円にとってこれだけポジティブな要因が揃っているにも関わらず、上値が重い展開であるため、逆に米ドル/円にとってネガティブな報道が流れると、あっさり値を崩すのではないかと想定しています。

(出所:Trading View)
■12月総選挙に向けて、ブレグジット党が不安要素に
次は、英国。
12月12日(木)に総選挙が開かれる英国では、11月6日(水)未明、議会が解散され、5週間の選挙戦が始まりました。
ボリス・ジョンソン首相は、同日、バッキンガム宮殿を訪問し、エリザベス女王に選挙活動期間の開始を伝えています。
ジョンソン首相は、自分こそ「ブレグジットを実現できる」と主張し、ブレグジット協定について膠着状態に陥っている議会の刷新を目指しています。
こうした選挙戦の中、注目はブレグジット党の存在。
今回の総選挙は、ジョンソン首相が目論んでいた「合意に基づいた離脱」を実現してからの総選挙ではなく、総選挙が先に行われることになっため、ブレグジット党の存在が話題になっているわけです。
【参考記事】
●NYダウ史上最高値に迫るもバブル懸念…。もしバーストすれば、ドル/円105円割れへ(11月4日、西原宏一&大橋ひろこ)
ブレグジット党は、ジョンソン首相と同じく、早期のブレグジットを訴えていますが、ブレグジット党のファラージュ氏は英国の主権を守る立場から、より強硬な「合意なき離脱」を主張。
ジョンソン首相は、北アイルランドの関税手続きは当面、EU(欧州連合)ルールに従うとしましたが、この離脱協定案を「これは、離脱ではない」と非難しています。

写真はブレグジット党のファラージュ党首。ブレグジット党は英国の主権を守る立場から、より強硬な「合意なき離脱」を主張している (C)Leon Neal/Getty Images
■英ポンドは、目先1.30ドルレベルを高値に調整入りも
そして、下記が先週(10月28日~)末のブルームバーグの記事。
為替トレーダーの最大の不安「ブレグジット党」-労働党党首でない
英国で12月に行われる前倒し総選挙を注視するポンドの為替トレーダーらは、最大野党・労働党のコービン党首の社会主義的政策よりもナイジェル・ファラージ氏率いる「ブレグジット党」に不安を抱いている。
出所:Bloomberg
基本的には、合意に基づいた離脱に向けてジョンソン首相が邁進していると想定していることは変わりませんが、総選挙の実施が決まったことで、ブレグジット党の存在が不安定要素として浮上してきました。
よって、英ポンド/米ドルは、いったん1.3000ドルレベルをトップに、調整に入る可能性が浮上。

(出所:Trading View)
中期での英ポンド/米ドルの上昇トレンドは変わりませんので、総選挙に向けて、調整局面での英ポンド/米ドルの押し目をうまく拾いたいところ。
11月に入って、米国と英国での新たな選挙戦が始まる中、米ドル/円と英ポンド/米ドルの動向に注目です。
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