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【ブレグジット】12月12日に英総選挙。
2020年1月の離脱がメインシナリオに

2019年10月30日(水)16:30公開 (2019年10月30日(水)16:30更新)
ザイFX!編集部

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■英国、12月12日に総選挙へ

 2019年10月29日(火)、英下院はジョンソン首相が提出した12月に総選挙を実施する特例法案を賛成多数で可決。30日(水)の上院審議を通過し、エリザベス女王の裁可が得られれば、議会が解散、12月12日(木)に総選挙が実施されることになった。

 これまで数カ月以上に渡って、「10月31日(木)」という離脱期限が注目を集め、ジョンソン首相も10月31日(木)までのブレグジット(英国のEU離脱)を公約に掲げていたが、その可能性はなくなった。

そして、英国の要請を受けてEU側は最長で2020年1月末までの離脱期限延期を承認したが、その期限までに英国はEUを離脱する、というシナリオが現実味を帯びてきた。

 2016年6月の国民投票からすでに3年超。当初、2019年3月に設定された離脱の期限は3度も延期され、総選挙によって離脱の判断が再び、英国民に委ねられる格好だ。

 英国と英ポンドは、新たな局面を迎えることになりそうだ。

■四面楚歌だったジョンソン英首相

 直近のこれまでの経緯を簡単に振り返っておこう。

 10月17日(木)、英政府と欧州委員会が、新たな離脱条件を定めた協定案に合意。同日のEU首脳会議で、英国を除く27の加盟国が離脱協定案を承認したことから、ジョンソン首相は10月31日(木)に合意ある離脱を成し遂げる下地を整えた。

 10月19日(土)、英下院は協定案の内容を把握するためにはそれなりの時間が必要という理由で、10月31日(木)の離脱期限を最大3カ月延期することを目指す動議を可決。これによって協定案の採決は先送りされ、ジョンソン首相はEU側に離脱期限の延期を申請する書簡を送付。この時点で10月31日(木)の合意ある離脱はほぼ不可能となった。

 10月21日(月)、離脱延期を望んでいないジョンソン首相は、協定案の承認を得るための関連法案を提出したが、英下院は改めてこれを否決。

 10月28日(月)、英国の申請を受けたEUは、英議会が離脱期日までに離脱協定案の採決を可決すれば、その時点で離脱となる「フレクステンション(柔軟な延期)」を承認。離脱期限が最長で2020年1月末まで延期された。同日、ジョンソン首相は事態の打開に向けて早期の総選挙実施を求める動議を提出。賛成299・反対70と、賛成多数だったものの、大半の野党議員が棄権したため、法案の通過に必要な3分の2(434)の支持が得られず否決された。

 ジョンソン首相の総選挙実施を提案する動議は9月にも2度否決されているため、これで3度目の敗北となった。協定案の採決は見送られ、総選挙もできない。まさに四面楚歌の状況に立たされていたのだ。

【参考記事】
英国の合意あるEU離脱はあり得る? 週明けはフラッシュクラッシュ級の動きも!?
【英EU離脱】可決でも否決でもなく採決見送り!? ジョンソン首相に秘策はある?
ブレグジット期限は2020年1月末まで延期。リスク選好継続でクロス円買いが良さそう(10月29日、バカラ村)

■たった1日で可決に持ち込めたワケは?

 そんな事態が急転したのが昨日、10月29日(火)。冒頭でもお伝えしたとおり、12月12日(木)に総選挙実施を提案する動議が、英下院で可決されたのだ。ジョンソン首相は今回、上院の通過も必要となる代わりに、下院議席650の過半数(326)の賛同が得られれば可決されるよう、現行法を修正した特例法を用いて動議を提出したのだが、採決では賛成438・反対20と、再び多くの棄権はあったものの、3分の2以上(434)の支持を集める結果となった。

 ジョンソン首相率いる与党・保守党の議席は過半数に満たず、閣外協力を受けている北アイルランドのDUP(民主統一党)は、離脱協定案に反対の姿勢を示している。普通なら、否決された翌日に過半数を大きく上回る賛同を得られたというのは考えがたい。なぜ、可決に至ったのか?

 1つには、ジョンソン首相がこれまでこだわってきた総選挙前の離脱を諦め、総選挙で国民に信を問うたうえで離脱する方針を示したことが挙げられる。離脱前に総選挙が実施されることで、DUPや離脱反対派の少数政党を懐柔できたことが理由だろう。

ボリス・ジョンソン英首相の写真

ジョンソン首相が総選挙前の離脱を諦めたことで、協定案に反対しているDUPや離脱反対派の少数政党を懐柔でき、総選挙実施の道が開けた。しかし、最大の理由は野党・労働党の動きにありそうだ (C)Justin Sullivan/Getty Images

 しかし1番は、最大野党・労働党が総選挙実施に賛成した面が大きいと言えよう。労働党が賛成に回った理由は、2020年1月までの離脱期限延期が認められたことで、合意なき離脱の可能性がなくなったからというもの。

 もっとも、これは表向きで、ただでさえ支持率が低迷する中、総選挙に反対の立場なのが自分たちだけとなり、これまで何度もブレグジット問題の審議進行を停滞させてきたそしりを一身に受けることは避けたかったというのが本音だと思われる。

■保守党勝利で2020年1月の解散か

 世論調査の結果によると、現時点では総じて与党・保守党が優勢な状態にある。総選挙は、得票数のもっとも多い候補者1人が選出される小選挙区制が採用されるため、12月12日(木)に予定どおり総選挙が実施された場合、保守党が過半数を大幅に上回る議席を獲得して、盤石の布陣で離脱に向けた審議を進めていけるというシナリオが、まずは考えられる。そうなれば、離脱関連法案を超短期間で可決して、年内に離脱することもあり得るだろう。

政党別の支持率
政党別の支持率

※最新データ調査日は2019年10月24日~25日
(出所:YouGov)

 総選挙実施が自らの首を絞めることになりそうな野党・労働党は、この総選挙を「事実上の再国民投票」と位置づけ、離脱協定案の大幅な変更や離脱自体の取りやめも視野に、残留支持派や10月の離脱を公約に掲げていたジョンソン首相に失望した有権者からの支持を集めたいようだが、現状は苦しい立場にあると言えるだろう。

 市場参加者が「ようやくか?」と固唾を飲んで見守っていた10月31日(木)の離脱は消滅。12月12日(木)に総選挙が実施され、保守党が過半数の議席を獲得して英議会で離脱協定案を可決、最長で2020年1月末までに離脱が完了するというのが、現時点では実現の可能性がもっとも高い道筋となりそうだ。

■上昇しなかった英ポンド。今後はどうなる…?

 もっとも、総選挙の12月12日(木)までには、まだ6週間近くもある。英国民が大半の市場参加者の予想を裏切って離脱の道を選んだ経緯も考えれば、総選挙の結果も蓋を開けてみるまではわからないと身構えておく必要があるだろう。

 総選挙の実施が現実味を帯びた10月29日(火)。合意ある離脱の可能性が高まって、大幅に上昇することも考えられた英ポンド相場の動きは、これまでのボラティリティの高さを考えれば、お世辞にも派手とは言えなかった。

 労働党のコービン党首が総選挙実施を支持する意向を示したあたりで買いが強まったものの、英ポンド/米ドルは1.28ドル台前半から1.29ドル台前半まで、英ポンド/円は139円台半ばから140円台半ばまでと、それぞれ100pipsほどしか上昇せず、議会で12月12日(木)の総選挙実施が可決された時点では、その上げ幅を半分近く失う水準まで値を下げていた。

 もう少し手前から振り返ると、英ポンド/米ドルと英ポンド/円はいずれも英国とEUが離脱協定案で合意し、英下院の審判を仰ぐ前後で直近の高値をつけ、その後はもみ合いを続けているようにも見える。

英ポンド/米ドル 4時間足
英ポンド/米ドル 4時間足チャート

(出所:TradingView

英ポンド/円 4時間足
英ポンド/円 4時間足チャート

(出所:TradingView

 10月25日(金)に公開した、ザイFX!の連載コラム『どうする? どうなる? 日本経済、世界経済』の中で今井雅人さんは、離脱の延期がほぼ確定的になったこの時点で、もうこの材料での英ポンドの上昇は終わったと見るべきではないかと思います」と解説していた。

 今井さんはさらに、「(英ポンドは)いずれまた、ずるずると下落する局面が来る」とも予想しているが、足元は離脱期限の延期で合意なき離脱の可能性が排除されたため、市場参加者は総選挙や再国民投票の実施も織り込みつつ、様子見姿勢を強めていったとも考えられそうだ。

【参考記事】
ブレグジット絡みの英ポンド上昇は終了か。いずれ下落と見てショートポジション構築へ(10月25日、今井雅人)

10月25日に公開した今井雅人氏のコラムの一部
10月25日に公開した今井雅人氏のコラムの一部

『ブレグジット絡みの英ポンド上昇は終了か。いずれ下落と見てショートポジション構築へ』より

 2020年1月。3度目の正直となって、今度こそEUからの離脱を果たすのか、それとも総選挙が予想外の結果となって混乱が続くことになるのか。少なくとももうしばらく、目の離せない展開は続くことになりそうだ。

(ザイFX!編集部・堀之内智)

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