■市場は「インフレ」に対して敏感になっている
インフレによって企業業績が押し下げられる。最近、聞いたことのない説明で米国株が下落しました。確かに商品市況は高騰し、賃金を上げないと人を雇えないという話も聞こえてきます。市場は長い間無視してきた「インフレ」に対して敏感になっているようです。
(出所:TradingView)
ダラス連銀総裁であるカプラン氏は、このところ連日のように「テーパリング(※)の議論を始めるべきだ」とマスコミに語っています。彼は元ゴールドマン・サックスなので、市場の空気に敏感です。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)の公式な見解は、インフレは一時的なものであり、早晩収まるというものです。
本日(5月12日)発表となる、米CPI(消費者物価指数)の数字は注目されます。昨年(2020年)の4月から6月ぐらいまで、米CPIは新型コロナウイルスの影響で極端に低い数字が続きました。
よって、ベースエフェクトにより、向こう数カ月の米CPIは年率だと非常に高い数字が続くことになります。ちなみに、本日(5月12日)の市場予想も年率3.6%と高めです。
高い数字が数カ月続くことはわかっています。しかし、何回も3~4%程度の数字を見続けると、市場参加者の意識も変わるかもしれない……そういう思惑が働いています。
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■FRBの目線は、成長減速を見込む2022年以降にシフト
では、パウエル議長はじめ、FRB理事たちは何を見ているのか。
(※筆者作成)
FRBは、米国経済の見通しについて、2021年は6.5%という高成長を予想していますが、2022年以降は3.3%、2.2%、そして長期的には1.8%と、次第に成長は減速していきます。
つまり、目線はすでに来年(2022年)以降になっており、成長が鈍化していくので、かんたんに金融引き締めには踏み出さないわけです。
また、昨年(2020年)のジャクソンホールでは、以下のことを決定しました。
(1)FRBは成長と雇用、2つのマンデート(法的使命)を課されていましたが、今後より雇用の方を重視する。
(2)平均インフレ目標を打ち出し、一時的に高いインフレ率も許容する。
あの時決めたことが、じわじわと今になって効いています。つまりFRBは、よりインフレを容認するようになっています。インフレ容認は米ドル安容認ということです。
写真はFRBのパウエル議長。FRBはよりインフレを容認するようになっていて、「インフレ容認=米ドル安容認」というのが志摩さんの見解だ (C)Bloomberg/Getty Images News
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■時間の問題で、米ドルは下降トレンド再開へ
我々は日本人なので、米ドル/円レートを中心に見ています。この数カ月起こったことは、米金利上昇による米ドル上昇です。
しかし、ドルインデックスに注目すると、1月以降の米金利上昇に伴う米ドル上昇は、実は大したことはありません。時間の問題で、米ドルは下降トレンドを再開しそうです。
(出所:TradingView)
テーパリングが始まったカナダドルは、一気に上昇しました。市場は次のカナダドルを探しています。それは、おそらく英ポンドやユーロになりそうです。
【参考記事】
●米国がテーパリングするなら、いつ頃? バイデン増税が始まれば、利上げは先か…(4月28日、志摩力男)
●テーパリング開始決定で、カナダドル急騰! 米FRBも、早ければ夏ごろに示唆する可能性(4月22日、志摩力男)
ワクチン接種で先行した英国は、まもなく経済が正常化します。ワクチン接種が遅れていた欧州も、まもなく追いつき、早晩、経済正常化するでしょう。
英ポンドやユーロに対して、米ドルが売られる可能性は高いと思います。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
一方、日本に関しては、新型コロナウイルス克服が遅れていることと、実際の被害以上に経済的なダメージが大きいことから、米ドル/円は大きくは動かないのではないかと思います。
(出所:TradingView)
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