■日経平均1000円安、FRBのタカ派転換
本日(6月21日)前場の日経平均は983円安と急落しています。一時は下げ幅が1000円を超える場面もありました。
原因は先週(6月14日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)。当初は2024年とされていた利上げ開始時期が2023年に前倒しされるなど想定以上にタカ派だったことですね。
【参考記事】
●FOMC後、市況一変! 米ドル全面高でユーロ/米ドルは1.17ドルを割り込む展開へ!?(6月18日、陳満咲杜)
●FOMCは2023年末までに2回の利上げ示唆。ユーロ/米ドルは、1.1600ドルへの下落過程に(6月17日、西原宏一)
●FOMCで将来的な利上げの可能性示唆! 徐々に米長期金利や米ドル上昇の流れへ(6月17日、今井雅人)
(出所:TradingView)
それに加えて週末には、米セントルイス連銀総裁のブラードさんがインフレ次第では「2022年終盤に利上げを開始すべき」と発言したことも追い打ちをかけています。
先週のFOMCはサプライズがないだろうとの見通しが大勢でしたし、ここまで荒れるとは思いませんでした。
前回のコラムで西原さんは「米金利が再び上昇へ向かい、米ドル/円が買われることもありそう」と話していましたが、そのとおりになりましたね。
【参考記事】
●米長期金利低下でも米ドル/円下がらず。間違っているのは債券市場か? 為替市場か?(6月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
ただ、FOMC後の金利上昇は賞味期限が短く、翌日からは米国債買いが強まった結果、米10年債利回り(米長期金利)は1.4%を割り込んでいます。
(出所:TradingView)
■「市場との対話」に失敗したFRB
FOMCのタカ派スタンスを見た投資家が、株などのリスク資産から安全資産である米国債へマネーを逃している、ということですね。
株式市場を崩さないように、テーパリングへと舵を切りたかったFRB(米連邦準備制度理事会)ですが、結果を見ると、市場との対話に失敗したように見えますね。
株式市場が続落するかどうか、今夜のNY市場に注目です。
米10年債利回りは下落していますし、増税もこれからですから、本格的な下落トレンドへの転換は来年(2022年)以降でしょうが、当面は調整が続くのかもしれません。
今週6月22日(火)にはパウエルFRB議長の議会証言。
ハト派寄りにスタンスを修正してくれば、市場も少しは落ち着くのかもしれません。
またも対話に失敗するようだと、リスクオフが加速しそうですが……。
パウエルさんの就任当初は「パウエルがしゃべると株が下がる」というのが定着していました。
最近は上手になってきた印象だったんですけどね。
【参考記事】
●パウエル議長が話すと株下落の法則再び!? 5月に向けて、米ドル/円は焦らず戻り売り(2018年4月9日、西原宏一&大橋ひろこ)
●パウエル議長が話すと株下落の法則発動!? 株のチャート形状悪化! 米ドル/円は…?(2018年3月26日、西原宏一&大橋ひろこ)
■木材、ゴールド、銅、大豆…コモディティ価格が下落!
為替市場では米ドル高、円高と典型的なリスクオフの動き。クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も急落しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
株高には反応しない米ドル/円ですが、株安局面ではクロス円の下落に引っ張られやすくなります。
当面は109円から112円程度のレンジだろうと想定していますが、下げやすくなっているようです。
(出所:TradingView)
もうひとつ注目しているのがコモディティ。1700ドルへ達していた木材は800ドル台へ急落。
木材の主産地であるカナダのカナダドル/円も88円を割り込んできました。
【参考記事】
●次にテーパリングに動くのは米国なのか? 材木相場続伸で、カナダドル/円は95円目標(5月13日、西原宏一)
●木材相場が1カ月で2倍の急騰! その木材相場をCFDで取引できるって知ってた?
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
木材だけでなくゴールド、銅も下落していますし、大豆も暴落しています。
■イスラエルで成立した信じがたい連立政権
WTI原油はまだ高値圏にありますね。
イラン大統領選で対米強硬派の候補が優勢なこと、イスラエルでネタニヤフ首相が退陣し、8党派が首相を「2年輪番」で交代するという信じがたい連立与党が成立したことなど、中東情勢の不安定化が下支えしているようです。
それに加えて、米国ではドライブシーズン入りとともにコロナ禍からの脱却が進み、原油在庫が順調に減っていることも上昇要因です。
(出所:TradingView)
大谷翔平選手は今日もホームランを打ちましたが、スタジアムの様子を見るとマスクをしている観客がほとんどいない。米国の順調な回復ぶりを感じますね。
鉄鉱石もまだ高値圏にいるのですが、崩れてくると豪ドルはもう一段の下落があるのかもしれません。
【参考記事】
●豪州の輸出構成比24.7%の鉄鉱石と2.4%の原油。豪ドル/円と相関が高いのはどっち?
●木材や鉄鉱石の急騰で、資源国通貨買い! 豪ドル/円は直近高値上抜けで90円視野に(5月10日、西原宏一&大橋ひろこ)
■鉄鉱石が下落すれば豪ドル一段安へ
今週6月24日(木)はBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])の政策発表です。BOEは前回の5月会合で「隠れテーパリング」へと動き出しました。
今回、テーパリングを明言しても反応は薄いかもしれませんね。
今週の戦略はどう考えますか?
クロス円の戻り売りでいいのでは。
FOMC前には日経新聞などに「ユーロ/円は135円へ」「豪ドル/円は90円へ」といった強気なコメントが目立ちました。
こうしたコメントが目立つときは、逆に行きやすくもなる。
特に豪ドルは鉄鉱石が反落すれば、もう一段の下落もあるのではと想定しており、豪ドル/円の戻り売りを狙っていきたいと思います。
【参考記事】
●メディアが騒ぎ始めたら、なぜ相場は終わる? 戦後最悪の景気と株高の併存は気味が悪い
(出所:TradingView)
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