■FOMC後、米ドル全面高、円安トレンドは調整へ
FOMC(米連邦公開市場委員会)通過後、市況は大きく変わった。
米ドル安・円安の局面から米ドル全面高へ、潮変わりのサインが点灯し、円安のスピードも鈍くなり、場合によっては円安トレンドがもう一段調整することを覚悟しなければならないと思う。
FOMC声明文やFRB(米連邦準備制度理事会)議長の話に関する解釈はすでに溢れているから、ここでは繰り返さないが、重要なのはその内容ではなく、マーケットの反応だ。
利上げのタイミングを前倒しする可能性の示唆や、インフレが一時的かどうかに関する判断、テーパリングの議論を開始するかもしれないといったニュアンスは、筆者の個人的な感想で言えば、どれも想定の範囲内で、大した変化とは思わないが、市場の反応は違っていた。
ドルインデックスは2日連続で大幅続伸、92の節目ブレイクをもってブル(上昇)トレンドへの復帰を示唆している。
(出所:TradingView)
2021年の年初来安値ギリギリまで迫ったドルインデックスであったが、結局、安値更新をせずに反騰。1月安値を起点とした切り返しの流れに復帰すれば、上昇の余地は一段と拡大するだろう。
相場のことは相場に聞くなら、米ドル全面高の流れを無視できないのは当然の結論だと思う。
■ユーロ/米ドルは1.17ドルを割り込む展開になるだろう
米ドル高の流れにもっとも相応した値動きを示すユーロ/米ドルは、当然のように大きく反落。重要なサインを点灯している。
それはほかならぬ、5月5日(水)安値(2)を大きく割り込んでいることだ。これで2月末高値(1)と5月末高値(3)で形成された「ダブル・トップ」のフォーメーションを成立させることになり、早晩3月末安値、すなわち1.17ドルの節目割れの展開となるだろう。
もっとも、2日連続の大幅安で目先いったん切り返しがあることも想定されるが、戻りきれないと想定、しばらく戻り売りのスタンスで臨みたい。
ユーロ/米ドルにとって、今回の「ダブル・トップ」の形成は重要な意味合いを持つ。
言ってみれば、コロナショック後の安値を起点とした上昇波はすでに年初来高値(1月6日)をもって終焉しており、4月から5月末まで続いた切り返しは、あくまで年初来高値を起点とした下落波における調整子波と見なされるということだ。となれば、1.17ドルの節目割れがあれば、より息の長い下落トレンドの形成につながる。
この意味合いでは、米ドル全面高はまだ初動の段階。しばらく米ドル高が継続し、上値余地が拡大することを覚悟しておきたい。
■豪ドル/米ドルは頭打ちのサインが点灯
主要外貨のうち、豪ドル/米ドルのサインも鮮明になりつつある。
昨日(6月17日)の続落で4月1日(木)安値(2)の割り込みとなり、頭打ちのサインが点灯したと言える。
なにしろ、4月1日(木)の足型は、そもそも「強気リバーサル」と解釈されるものだった。このとき、2月安値をいったん割り込んだのが「ダマシ」だったことが明らかとなり、それが5月高値(3)への続伸をもたらしたのだ。
しかし結局、2月高値を更新できず、再度4月1日(木)安値の割り込みを果たしたのだから、これは弱気トレンドへの転換を示唆しているとみる。
この場合、豪ドル/米ドルは「三尊天井」に近い形での頭打ちのフォーメーションを形成、また、すでに下放れを果たした疑いがある。豪ドルのもう一段の反落を覚悟しておきたい。
■米ドル全面高でも米ドル/円が弱い理由とは
一方、昨日(6月17日)、米ドル/円は陽線でなく、陰線で大引けしたことも注意されるべきことだ。
(出所:TradingView)
米ドル全面高と言えば、米ドル/円も続伸するはずと思われがちだが、リアル相場においては実はそうならない「しくみ」がある。
このロジック、本コラムにて何回かを取り上げたと思うが、割と重要なコンセプトなので、もう1回説明しておきたい。
【参考記事】
●米ドル/円は、底割れ回避できても頭は重いはず。高値更新には時間がかかるか(2021年4月23日、陳満咲杜)
要するに、米ドル全面高の流れが強ければ強いほど、ユーロなど主要外貨が急落してくるから、ユーロ/円など主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における外貨安の流れも強まる。その分、クロス円における受動的な円高の圧力が生じやすく、それが米ドル/円に波及する形で米ドル/円の頭を抑える、といった市況は実によく見られてきたことなのだ。
言ってみれば、米ドル全面高の流れ自体、米ドル/円にとって上昇トレンドを支える要素であるが、米ドル全面高が緩やかなスピードに留まらない場合は、逆に米ドル/円の頭を抑える要因にも化すから、要注意である。
■ユーロ/円の高値更新はしばらく見られないだろう
足元のユーロ/円はそのような局面に差し掛かっているだろう。
昨日(6月17日)の続落で2020年10月安値を起点としたメインサポートラインを割り込み、目先はいったん切り返しとなる可能性はあるものの、再度頭打ちとなりやすいだろう。
RSIで測る場合、足元の位置が重要になってくる。
RSIは昨年(2020年)10月安値に対応するレベルを再打診し、これを下回っているから、いったんの切り返しの余地が示唆される一方、1月安値から観察されるRSIの強気変動レンジの下限もブレイクしており、これは弱気変動レンジへの転換を示唆している。
同サインが有効であれば、しばらくユーロ/円の高値更新は見られず、調整波の値幅が拡大していく可能性が大きいだろう。
とはいえ、長期スパンにおけるユーロ高・円安の流れが修正されたとは思わない。
米ドル高の流れは、目先、ユーロ/米ドルの下落がリード役を担っているが、米ドル全体の上昇トレンドが明白になればなるほど、1月~3月末のように、米ドル/円がリードする形の展開に復帰する可能性も大きい。
いずれにせよ、米ドル全体の底割れのリスクが、FOMC通過後、大きく後退している以上、しばらくは「外貨安」と「円安のスピード調整」が平行して見られやすいと思う。
市況はいかに。
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