FX市場は非常に読みづらい動き。今後しばらくは方向感を出せないのではないか
今週もよろしくお願いします。
この1週間で、FX市場は非常に読みづらい動きになってきました。
様々な見方が交錯するようになってきましたので、今後しばらくは方向感を出せないのではないかと、私も考えるようになってきました。
市場が混乱している一番の理由ですが、米国の金融引き締めが必ずしも米ドル高につながっていないということがあります。
これまで、日米金利差が長期的には米ドル/円に大きな影響を与えるという説明をしてきました。
【参考記事】
●米ドル/円は120円を目指し、さらには125円も視野に入ってくるか。2022年は、いよいよ本格的な米ドル高・円安の相場がやってくる!(1月6日、今井雅人)
●米ドル/円を中心に円売りをするのが、一番効果が高い取引か。金融緩和からの転換がもっとも遅れる日本の円は売られやすい!(2021年12月23日、今井雅人)
しかし、短期的、あるいはやや中期的には、この相関とまったく乖離してしまうことがこれまでもありました。
現時点での動きは、それに近いものになってきています。
米長期金利は堅調でも、米ドル高の動きとはならず、むしろやや米ドル安傾向
先日発表された雇用統計など、米国のさまざまな経済指標がインフレの加速を示唆していて、今年(2022年)の利上げの速度が加速する可能性が高いことを市場は意識してきました。
その結果、米長期金利(米10年債利回り)は堅調に推移し、一時1.9%付近にまで上昇してきています。
(出所:TradingView)
これは、英国、ユーロ圏、日本などの長期金利よりも大きく上昇していますので、米国とそれらの国との金利差は広がっています。
しかし、米ドル/円、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルのどれを見ても、米ドル高の動きとはなっておらず、むしろやや米ドル安傾向でした。これを説明するのがなかなか難しい。
【参考記事】
●米ドル/円の113円台は、押し目買いの良いチャンス。116円台からの下落は期待の反動、米ドルが売り込まれていく状況ではない(1月14日、今井雅人)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)
ポジション調整だけで相場が動いてしまっているのでは
米ドル/円に関していえば、米長期金利が上昇することへの懸念から、米国を中心に株価が下落していて、それに伴って金融市場全体にリスクオフの動きが出て来ている。
そのため、FX市場でもリスクオフからの円高の動きが出てきているので、米ドル/円も米ドル安・円高になっているという説明がつくかもしれません。
しかし、もしそうであれば、米ドル/円以外の通貨では米ドル高になってもおかしくないはずですが、実際はそうなっていません。
ユーロ/米ドルなどは、一時上に抜けてユーロ高・米ドル安となる局面もありました。
(出所:TradingView)
どうも、今の動きを見ていると、市場関係者が相場をどう読んでいいのか分からなくなってきているので、ポジション調整だけで相場が動いてしまっているのではないかと思われます。
こうなってくると、なかなか相場にトレンドは出てきません。
これまで、米ドル/円の118円に向けての上昇を予測してきましたが、それは、115円台半ばを上に抜けることが前提でした。
しかし、116円台で足踏みしてしまった後、一気に下に崩れてしまいましたので、前提が崩れてしまいました。元の木阿弥です。
これから米ドル/円が下方向に向かうことも考えづらい。当面は軽めの短期トレードに注力
一方で、これから米ドル/円が下方向に向かうことも考えづらいです。理由は2つです。
1月17日(月)、1月18日(火)には、日銀の金融政策決定会合が開催されました。
開催前に、「今回の会合で金融引き締めへの政策転換が議論される」との報道が一部メディアから出たことをきっかけに、一気に円高が加速し、米ドル/円は一時113円台半ばまで米ドル安・円高が進むという局面がありました。
【参考記事】
●豪ドル/円か米ドル/円の戻り売りが良いか。米国の3月の利上げ開始から米ドル/円はしばらく弱く、円安が進むのは秋以降か(1月17日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
しかし、終わってみれば、会合ではこれまでの金融緩和策が維持されたばかりでなく、「インフレに対しては上下どちらにもリスクがある」との見解が示されました。
当面、金融政策を変更するつもりはないということを示唆していると受け取れます。
こうしたことから、さらなる円高は考えづらい。これが1つ目。
もう1つは、各国の利上げからの株下落に伴う円高リスクです。
これも、確かに懸念材料ではありますが、これまでの経験上、実際の金利水準が低水準である時期は、株の下落も限られています。
ですから、現状は下降トレンドに入るという状況にはないと考えられます。
とはいえ、かなり難しい局面に入ってきましたので、市場の注目材料がはっきりしてくるまで、少し様子を見たほうがいいかもしれません。
当面、軽めの短期トレードに注力したいと思います。
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