この1週間は予想外の米ドル安の展開に
今週もよろしくお願いします。
この1週間の動きは、正直に言って私にとっては、予想外の展開となりました。
【参考記事】
●米ドル/円は120円を目指し、さらには125円も視野に入ってくるか。2022年は、いよいよ本格的な米ドル高・円安の相場がやってくる!(1月6日、今井雅人)
まずパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言があったのですが、この中で彼が発言したことは、従来とまったく変わっていませんでした。
元々、FOMC(米連邦公開市場委員会)のメンバーみんなで話し合って決めたことがあるのですから、それ以上のことを言うわけがないのは、常識的に考えても明らかです。
しかし、その発言を受けて、FX市場では若干ではありますが、米ドルが下落しました。
その後、米国の消費者物価指数(CPI)が発表されたのですが、これも前年比で7.0%と市場予想と同じでした。
FRBのCPIの目標値は2%ですから、遥かに上回る結果となっているのは間違いないのですが、ここでも市場は失望感から米ドル売りをしてきました。
【参考記事】
●米ドル高の材料だった高いインフレ率は、今後は米ドル安の材料になる可能性。パウエル議長は、インフレと闘う気がない(1月13日、志摩力男)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 1時間足)
一体、何に対して失望したのでしょうか? そのことを考えてみたいと思います。
米ドルのさらなる上昇を期待した市場参加者が「がっかりしてしまった」
先週(1月3日~)までの米ドル/円相場ですが、米長期金利(米10年債利回り)の上昇を期待して、投資家が米ドル/円中心に米ドル買いを進めました。
その結果、米ドル/円はそれまでの心理的な高値、つまり、壁になっていた115円台半ばを上に抜けて、一気に116円台に達しました。
(出所:TradingView)
その動きを見て、私自身も含めて多くの市場参加者が、これはさらなる上昇の始まりだと期待をしました。
それで、かなりの短期トレーダーが米ドルをロングにして、さらなる上昇を待っていたのだと思います。
その人たちにとって、さらなる上昇を誘発するようなネタがでてくるのを期待するのは当たり前のことです。
そういう状況の中で、パウエルFRB議長がこれまでどおりの発言をしたことや、CPIが予想どおりの結果となったことに対して、「がっかりしてしまった」というのが実態なのだと思います。
(出所:TradingView)
米長期金利が上昇しているにもかかわらず、米ドル/円は約1か月前の水準に下落してしまっている
こうした、特に米ドル売りになるような材料もないのに、米ドル安・円高になってしまっている状況に対して、これは少し冷静に見る必要があると思っています。
足もとの相場を見ると、本日1月14日(金)時点で、米ドル/円は113円台に突入しています。
113円台はいつ以来なのかと見てみると、昨年(2021年)の12月20日(月)前後です。
そのころの米長期金利は1.4%台でした。現在の利回りは1.7%台です。
それだけ米長期金利の水準が上がっているにもかかわらず、米ドル/円は約1か月前の水準にまで下落してしまっているということです。
(出所:TradingView)
これは、常識的にはあまり考えづらいことが起きているわけです。
どうしてこういうことになっているかと言えば、やはり上に抜けたという期待感が強かった反動が起きて、ややいびつな動きを短期的にしてしまっていると考えるのが妥当ではないかと思います。
パニック気味の相場はいずれ落ち着く。米ドル/円の113円台はいい押し目買いのチャンスでは
市場は、往々にして理屈に合わない動きをするときがあります。
しかし、それも相場です。
ただ、パニック気味になっている相場が落ち着くと、また、人は冷静な判断に戻っていきます。
そう考えていくと、この113円台というのは、いい押し目買いのチャンスなのではないかと思います。
上に抜ける挑戦に一度失敗してしまったので、また反転して上昇していくのには時間がかかるとは思いますが、米ドルがどんどん売り込まれていくような状況にはないことが、押し目買いの支えになりそうです。
(出所:TradingView)
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